2020年。明けましたね
今年も試行錯誤しながらも、お客様と喜びをわかちあえたらいいなと思います。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
瞬間接着剤シミ抜き参考価格(令和2年 1月現在・税抜き)
小さな点状に付いた状態でも1か所 4000円~
1か所ずつのシミとなるため小さくてもシミの数×シミ抜き代金となります。
服の素材、ボンディングなど加工の有無により金額が変わります。
ドライクリーニング不可の商品、また素材によりお受けできないモノもあります。
ドライクリーニング不可のコーティング、ボンディング素材の場合、シミ抜きに使う薬剤で加工が溶け出したりします。
溶け出すと最初の状態より悪化する可能性もあるため、着られない状態の服なら試す価値はありますが弁償等保証ができない事をご了解いただけた場合のみお受けさせて頂きます。
おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。
ノースフェイスボンディング加工のブルゾンに瞬間接着剤のシミです。
ペンキとか接着剤はコーティング、ボンディング商品に付けてしまうととても難しいシミ抜きの一つになります。
というのは、コーティングとかボンディング加工は簡単に言うと接着剤が使われている加工です。
コーティングは表面に接着剤の被膜を作っている加工、ボンディングは生地の裏側に冷気を遮断して保温性を高めるために薄い生地を一枚貼り付けてある加工。
最近の暖かくても薄くて軽い素材のブルゾンやコートのほとんどに
どちらかの加工がされています。
ここまでの説明で最高難度のシミ抜きという理由が分かった方もいらっしゃるんじゃないかな?
この説明は続きを読む・・・から書いていきますね。
今回は妻の知り合いでもある
とっても綺麗な日本酒大好き 静岡のフリーアナウンサーの小川綾乃さんからのヘルプ!!
小川綾乃さんのオフィシャルブログは↓↓↓をクリック!
静岡のフリーアナウンサー小川綾乃のブログ
お正月に可愛い姪にプレゼントしたブルゾン。瞬間接着剤が付いてしまい、上と下が貼り付いてしまった状態。
可愛い姪が泣いていてどうにかしてあげたい・・・と、妻のメッセンジャーに相談を頂きました。
写真を交えてのやり取りで素材や洗い指定などを確認してからの電話相談・・・
「簡単じゃないな・・・
」
仕上がりはとても感動してくださり、
毎週水曜日にパーソナリティーを務める
FM Haro PLUS your Dayの中で喜びを語ってくれるという
嬉しい展開にYou友一同とても感謝しております。
この服の取り扱いは、ソフトな手洗いはできるけど、漂白もだめ、乾燥機もだめ、アイロンもかけちゃダメと・・・ようするにソフトに手洗いができるだけという表示が付けられています。
この服の表示に付けられている注意書きに大切なことが書かれているのです。
確認される方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、かなりたくさんの服にこの注意が該当しています。
今回はこの服が何年位愛用できるのか目安が書かれています。
シミ抜きの難度が高い理由、注意書きも画像に撮りましたので少し詳しく説明していきます。
この衣類に付けられていた品質表示タグ(※クリックで拡大します)
表示がそのまま読めるよう貼り付けてありますのでクリックして見てください。
絵マークは洗い指定になりますが、手洗いして(一番左のバケツに手)日陰干しができる(□に=が描かれ左上に/)、といった指定になります。漂白(△)も乾燥機(□の中に〇)もアイロン仕上げ(アイロンの形)もドライクリーニングも(〇の中にFかP今回は×)出来ません。
一番重要なのは下から4段目のポリウレタン使用から。
服の全体画像、身頃左右に見えている黒い生地部分について書かれていると思いますが、伸縮するストレッチ素材。
本来伸縮しないポリエステルとナイロンの混紡なのですが、ストレッチ(伸縮)するようポリウレタンというゴム芯に糸を巻いて伸縮性を持たせている素材なんです。
靴下のゴムとか水着、ストレッチジーンズなど伸縮する服のほとんどと言っても過言じゃないくらい使われています。
このポリウレタンというゴム芯、輪ゴムなど、伸縮する樹脂を総合してエラストマーと言います。
表記もエラストマー(elastomer)と書かれていたり PU と書かれていたりします。
3~5年で劣化と書かれていますが、次に説明するボンディング加工も含め、使っていてもいなくても劣化や分解が時間とともに進んでいくため、これらの商品を「経時劣化商品」と言います。
大切にしまって置いても時間とともに寿命がきて使えなくなってしまうというモノです。
劣化とはどうなるか・・・輪ゴムを思い出してください。
長い時間放置されている輪ゴムって触るとぺトペト溶け出していますよね(加水分解)
で、触ると弾力もなく引っ張るとブチって伸びずに切れます。
ここに書かれている劣化とはこの現象と同じことが起こるって事です。
こちらの説明は、服の素材には書かれていない、服の内側の見えない部分の説明がされています。
私たちクリーニング店は見れば意味が分かりますが、一般の方が見てもどこに使われているモノがどうなっていくのかなんてわからないですよね。
軽くて暖かい服のほとんどが冷たい冷気を遮断するよう表生地の内側に生地を貼り付けてあります。この生地の接着加工の事をボンディング加工と言います。
通風性を遮断する方法としてもう一つがコーティング加工があります。
分かりやすく言えばマニキュアのトップコートと同じようなモノです。
生地を貼り付ける接着剤もコーティングもポリウレタン樹脂が使われています。先に説明したポリウレタンのゴム芯と同じ素材なので、どちらも時間とともに劣化してしまう素材なんです。
ブランド品で有名なのが、マッキントッシュのゴム引きと言われるコートですね。
日本製マッキントッシュが出た当時、表示を見るとちゃんとウレタン樹脂加工と書かれていましたが最近見たコートには書かれていなかったかな・・・?
ポリウレタン樹脂は色々とあり、高級家具や革と人工皮革コンビのカーシートなどは10年、20年経っても劣化しないモノもあり、寿命が来るのが早いか遅いかはメーカーの使うポリウレタンの素材次第になります。
日本のクリーニング保証基準で見ると、経時劣化商品の場合、平均使用年数2年(ボンディング等)~3年(ゴム樹脂加工加工など)とされています。
ダウン製品のほとんどがボンディング、コーティング加工されており、モンクレールやデュペティカなどによく使われるとても薄いナイロン地の場合、加水分解を起こすと付けた覚えのない油シミのようなものが出てきます。
モンクレールなど洗うと傷むって販売店から言われたりするらしいのですが、衿など皮脂を残しておくと加水分解が一気に進み油シミのような染み出しが出てきたりします。
空気中の水分と皮脂(油分)の両方でポリウレタン樹脂が溶け出すためかなり早く加水分解が進んでしまうんです。
壁にセロテープを貼り付けておいて、時間が経った頃剥がすとぺトペト糊残りしますよね。
セロテープの接着剤が空気中の水分で溶け出した状態ですが、同じ現象が服の内側で起こります。
薄い生地の場合、溶け出すとそのまま表側まで浸透してしまうためシミとなって出てくるわけです。
モンクレールですが、染み出しの過去記事は下記をクリック!
https://yuuyuu.hamazo.tv/e7686174.html
品質表示を見るとこの服がどれくらい愛用できるのかの目安が書かれていましたね。
洗い指定、素材の組成が書かれている表示は法律で付ける事を定められている服の保証書です。
とても大切なモノだけど、見られる方がほんと少ないので、奮発して購入する服などは見る癖をつけておくといいと思います。
でも、服はデザインを、おしゃれを楽しむためのアイテムでもあるから、軽く機能性が良く、暖かい服を作るための加工が悪いとは私は思いません。
この話もお客様と良くしたりするのですが、ファストファッションの服などまた機会があったら書いてみますね^^
説明書くのに疲れたぁ・・・わかりやすく書こうと思うと長くなってしまうけど、本当にわかりやすくなっているのか・・・(汗)
さて、シミ抜きの難度が高いぞ!って説明です。
説明してきた通り、ポリウレタンというのはゴムのように使われたり、接着剤のように使われたりと多種多様な使われ方をしているのですが、時間とともに劣化する、加水分解を起こすなど特性は同じなんです。
で、瞬間接着剤という強力な接着力を持つ樹脂を取ろうと思う場合、この樹脂を溶かすのですが、瞬間接着剤はポリウレタンより強力に固まり簡単に溶け出さないんです。
ポリウレタンが簡単に溶けてしまうような薬品を使い、その薬品でも簡単に溶け出さない瞬間接着剤を溶解しなければいけないというシミ抜きになるんです。
ドライクリーニングができるかどうかが一つの目安なんです。ドライクリーニングというのは石油系溶剤で洗うクリーニング方法ですが、石油系ドライというのは和服も洗えるドライ溶剤になります。
ドライクリーニング不可となっている場合、ベンジンやエタノールでもボンディング加工が簡単に溶解してしまう可能性が高く、洗う事もシミ抜きもリスクが高すぎてできなくなるんです。
これが難度がとても高いシミ抜きの理由です。
シミ抜きは下から強力なバキュームでシミ抜き剤、溶解したシミも吸いだして取っていくのですが、このブルゾンは完全に通風性を遮断されているためバキュームで吸い取れない・・・
だから、とにかく広げないよう小さな範囲で加工を溶解させないよう取っていく・・・
これが弁償、保証のリスクを背負ってはできない理由です。
ほとんどのお店で取ることができないシミの一つになります。
もう一つ、このブルゾンのやりにくかった理由が、撥水加工。
ものすごく効いていましたので、弾かれてシミ抜き剤が浸透して行かない・・・
どんな状態かは次画像見て頂ければわかります。
シミ抜きした部分は撥水加工が取れてしまうため、撥水加工をやり直している画像です。
水を掛けて撥水テストしている画像です。
水が弾かれコロコロ転がっています。
シミ抜き剤もこんな感じで弾かれ転がっていた・・・
今回お客様は、接着剤を取ろうとネットで調べたところ、アセトン(除光液)で取れるって見つけたのでやろうと思ったけど、生地を傷めそうで心配だったから止めた、との事でした。
これは大正解でしたね。アセトンでも溶解したかもしれないけど、仮にポリウレタンが溶解せず接着剤が溶け出してくれたとして、どうやって溶けた接着剤を服から取っていく?
家庭で丸洗いできない服とか、水洗いするだけでは取れない油シミ、こうした通常付かない洗っても明らかに取れないだろうと思うシミ、は大切な服だったら自分で何かしようと思わないほうがいいでしょう。
水洗いができないに服に大きな水シミを作ってしまうと取りたいシミより水シミを取る方の金額が高くなってしまったりします。
今回の場合、アセトンを付け広範囲にアセトンでシミを作ってしまうと、ドライクリーニングができない服なのでそのシミを取ることが難しくなるし、内側のポリウレタンが溶け出してしまったら直せなくなります。
今回は何もしないでご相談を頂いたからこそ綺麗に取ることができたんです^^