…ということで、両親ともども温泉につかって帰ってまいりました。

ここのところよく行き当たるぬるっとして肌がつるりという温泉は実に心地よいものでしたが、

いやあ寒かった、寒かった。駐車場に停められていたどの車もひと晩明けたら

霜でばりばりになっておりましたですよ。


と、それではいずこの温泉へとなれば、群馬県ですと申し上げますと

草津かな、伊香保 かな、水上かな、どこかなとなるやもしれませんけれど、

このほど出かけたのは群馬県藤岡市の山あいにある一軒宿でありました。


藤岡と言ってもピンとこないものと思うところですので申し上げれば

高崎市 のちと南側から南西部に向けて山の間にぐぐっと広がった一帯。

もそっと奥に進めばと方や秩父に抜け、方や信州につながるという山がちなところでありました。


そんなところですので、年齢的にとみに足元不如意となってきている両親同行となれば

かつてはあちこち出かけた折には観光もしたですが、近頃はもっぱら飲んで食べて、

温泉つかってカラオケやってというのが最大の目的になってますので、早目に宿に到着です。


さりながら、ひとっ風呂の後、晩飯までにいささかの時間ありと目したものですから、

宿に訪ねたら「貸出用があります」ということで、借り出してきたのがトランプでありました。


子供の頃は家族でよくやったものですが、

大人になっても親とトランプで継続的に遊んでいるという方は少ないのではと思うところで。

それというのも、トランプ遊びはだいたい子供とやることが前提のようなところが

日本ではあるのではないかと。


ポーカーといった賭博的なものは別としても、例えば英国では

アガサ・クリスティー のミステリーによく出てくるコントラクト・ブリッジは大人の遊びですね。

これを麻雀に擬えると、賭け事っぽいイメージにもつながるところではありますが。


コントラクト・ブリッジとまで行かなくとも、

なんとか両親にナポレオンを覚えてもらおうかと教示を試みたことがありましたが挫折

ですので、両親とできるトランプゲームは限りがあるものの、

やってみて結構(大人げなく?)入れ込んでしまったなと思う「七並べ」なのでありました。


七並べのルールにもあれこれのバリエーションがありましょうけれど、
両親とやるときにはエースまで出たらキングからしかだせない、
キングまででたらエースからしか出せないというルールを採用しておりまして。


つまり、ご存知のように「6」あるいは「8」を手札に持っている人が
戦略として出さない(つまり止めてしまう)場合に、もたもたしていると
「6」あるいは「8」が出せなくなってしまいますよ、というあれです。


どうやらこうしたルールから派生して「エイトキーパー」なる言葉もあるようですが、
父親が結構これをやるんですなあ。もちろん父親なりの戦略でもありましょうけれど、
むしろうっかりということの方が多い。ほかに出せる札にばかり目が向いているわけで。


結果、大きなとばっちりを受ける者が出てくるのでして、
他愛なくもそうした状況で大いに盛り上がり、「もう一勝負!」となるという。
考えてみれば実にシンプルなゲームなんですが、やりようによっては十分楽しめるのですよね。


それでふいと思い出しましたのが、温泉への出かけしな、近所の児童遊園の遊具が
ことごとくブルーシートで覆われ、トラロープでぐるぐる巻きにされておりまして。
貼り紙によれば、経年劣化などで安全基準を満たしていないとかいう点検結果が出たのだと。


たまたまなのか、住まいの近くにある公園の遊具はかなりぐるぐる巻き状態でしたので、
子供たちは正月休みに向けてさぞがっかりするであろうなと思ったのですよ。


さりながらよおく考えてみますと、遊具が使えない公園というものは
要するにただの広場、のっぱらだと考えればいいのではなかろうかと。


遊具があると、遊具の遊び方に従った遊びに終始しがちでもありますけれど、
ただの空間があるとなると、子供たちは子供たちなりの工夫で遊びを作り出すのでは
ありませんですかね。自分が子供の頃を思い出しても、あれこれ子供なりの考えで
遊びを作り出していましたし。


トランプゲームで七並べというシンプルなゲームが
実は戦略的に深みもあって(とは大げさですが)大人でも楽しくできるだけに、
シンプルさはむしろ考える楽しみを与えてくれるものなのかもしれません。


七並べと遊具無しの公園を並べるが適当であったかどうかはともかくも、
ほどやくやってくる正月休みの期間には、遊具無しの公園で子供たちが
いったいどんな遊び方をするのか、これまた楽しみではありますねえ。