駒場の日本民藝館 に出かけたついでですから、
近くにあるらしい日本近代文学館にも立ち寄ることにしたのですね。


住宅街を廻り込んで行けば到着とは思っていましたが、
邸宅と邸宅の隙間に奥の林へと続いている道があり、
これを抜けていくとショートカットかなという予感に従ってみたわけでして。


駒場公園南門

看板には「駒場公園南門」とあって、
通り沿いに並ぶ住宅の奥にこんな木立が隠されていたのか…と進んでみますと、
やおら広場に出たと思えば、目の前に忽然と一軒の洋館が姿を現したのですなあ。


忽然と現れた洋館…

なんじゃあ?と正面玄関側に回ってみますと、「重要文化財 旧前田家本邸」と。
持ち主の前田家とは、加賀百万石の分家筋といいますか、
前田利家の五男・利孝を藩祖とする七日市藩(現在の群馬県富岡市)の藩主を
明治まで一貫して務めた家系であるそうな。


重要文化財 旧前田家本邸@駒場公園

十二代目当主の前田利為は明治33年に16歳で本家の養嗣子となり、
加賀前田家を継ぎましたので、もはや分家筋とは言えないかもですが。


ところで、この前田侯爵邸が内部を無料で見学できるということでしたので、
「そういうことなら遠慮なく」とお邪魔させてもらうことにいたしました。




中央に中庭を置いてロの字を描く建物のそこここには丁寧な解説があり、

ほぼ隈なく見て回ることができます。



建物裏側の窓から中庭方向を見ると、このように見えるとは

昨夏訪れたアムステルダム の古い建物を思い出す気がしましたですよ。


ですので、設計はお雇い外国人?とも思ったところが解説に曰く

「総指揮をとった東京帝国大学工科大学教授の塚本靖を中心に、

優秀なスタッフが集められ」たのだとか。


設計当時はあるじの利為侯爵が英国大使館付きの駐在武官としてロンドンに赴任しており、

スタッフはロンドンに呼ばれて打合せを行ったりもしたそうな。

周りが洋風建築だらけなのは当然で、そうした中で打合せをすれば当然にして

洋風建築らしい洋風建築が出来上がるということになりましょうかね。


ですが、この前田侯爵邸は洋館の裏側に隣接して(通路で繋がっているようです)

和風建築の建物があるのですなあ。



招き、招かれする中には畳がいいという人がいたかもしれませんし、

家族にしてもときには素足で畳に触れる感覚を欲したかもしれませんですね。



とまれ、駒場公園に忽然と出現した洋館とその背後の和風建築。

この和洋併せた旧前田侯爵邸が入場無料で見てまわれるというのは、

維持費もかかるだろうに、ずんぶんと目黒区は太っ腹でないかいと思ったものでありますよ。

(すっかり日本近代文学館の話は飛んでしまいましたので、この次に…。)