ハレの町を巡っておりますと、時折このような看板に出くわすのですなあ。
ドイツ系アメリカ人の画家ライオネル・ファイニンガーにはハレの街角を描いた作品がいくつかありまして、
それはこの場所から見た景観なのですよということを示す看板というわけで。
例えばこれはハレ大聖堂をあしらった一枚ですけれど、ファイニンガーの特徴が分かりやすい作品かと。
Wikipediaの引用で示せばこのようなところです。
…パリで出会ったパブロ・ピカソの影響で キュビスムと表現主義を融合させた作風が多くなる。典型的な作品としては、油絵の例で、階調に差をつけた色彩を使って画面(空までを含む)を平面状に分割し、それにより光を表現した風景画である。プリズムを通して見た風景のような観を呈している。
説明されると「いかにも!」ではありませんでしょうか。
ちなみこの大聖堂の外観(同じアングルではありませんが)はこんな感じです。
他の場所ではこのような絵が描かれておりますな。
タイトルは「夜のマルクト教会」、先に見たマルクト広場に面して建つ立派な教会がマルクト教会ですけれど、
「夜の」とはいえ光の加減からすると薄暮くらいの感じでしょうか。
夜のとばりが完全に下りてしまう前、早くも街中には灯りが点りだしているそんな刹那を
ファイニンガーが描くとこんなふうになるということで。キュビスムには光をプリズムを通してみたときであったり、
あるいは光芒が差しているようでもあったり、ともするとカメラのレンズ越しに光の幾何学模様が見える…
そんな視覚的なところをキャンバスに落とし込むようなところもあるようで。
これまたちなみに(夜の景色ではありませんが)マルクト教会を
似たようなアングルで眺めますと、こんな感じでありますね。
と、また少々場所を変えたところではこのような絵が見られます。でありますな。
やはりマルクト広場に面して教会の反対側に立っているロータートゥルム(赤い塔)を描いたものでありますよ。
こちらはさらにキュビスムっぽさが分かりやすい一枚と言えそうで。
ただ「表現主義を融合させた」と言われると、「ああ、むしろそっちの方か…」とも思うところでして。
上の引用で見たキュビスムとの出会いののち、カンディンスキーらの「青騎士」の画家たちと交流を通じて、
もそっと明らかな抽象をも紡いだファイニンガーですけれど、ここでの具象の個性も味わいがありますね。
さらに後、グロピウスの招きによってバウハウスで指導にあたり、その運動に積極的に関わったファイニンガー。
拠点のワイマールからハレはさほど遠くはないだけに、ハレを訪ねてはその街角を描いたようですけれど、
ファイニンガーにとって他の町でなくハレを描いた、その理由となる町の魅力と言いますか、
昼間のひとときの町歩きではそのあたりの「これだ!」というものまでは感じ取れませんでしたが、
きっと何かしら響くものがあったということでもありましょうか。