「オッケー牧場!」と言えばもはやガッツ石松ばかりが思い出されるところかもしれませんけれど、
「OK牧場の決闘」は実際にあったガンファイトをもとに作られた西部劇の有名作でありますね。
日本でいうなら中山安兵衛の高田馬場の話とか、荒木又右衛門の鍵屋の辻の話とか、
そうした語り伝えと同じようにアメリカでは語り継がれる話であって、映画化も何度かに及んでいるわけです。
(もっとも日本のものも、アメリカのOK牧場も現代からすると懐古的話題でしょうけれど)
とまれ、その決闘の主人公であるのがワイアット・アープという保安官で、敵対するのがクラントン一味。
すでにして、クラントン側が「一味」と呼ばれたりすることからしても、アープ側が善、クラントン側は悪であって、
善が悪を懲らすという勧善懲悪のお話に仕上がっているのですよね。
(もっともアープの側も、ドク・ホリディとか明らかに「いいもん」とはいいがたい人物もつるんでいるのですが)
ですが、「OK牧場の決闘」を撮ったジョン・スタージェス監督はどうやらこの作品には満足しておらなかったと。
Wikipediaにもそんなようなことが書かれてありますけれど、そこで「史実により忠実に描く」ことを目して、
別の作品を撮った。それが「墓石と決闘」なのだそうでありますよ。
とはいっても、OK牧場の決闘に当たるシーンは最初にさらりと終わってしまい、
メインストーリーはむしろ後日譚ということになるのでして、
そこではワイアット・アープを単純に「いいもん」としてしまっていいのかという、
勧善懲悪のステレオタイプな人物造形とは異なる「人間らしさ」を描きたかったのかもしれませんですね。
牧場での決闘の後、アープの兄弟がクラントン一味に襲撃され、命を落としたりもする。
アープとしては法を司る保安官としての立場は重々承知しながらも、
私怨に打ち克てない面も…このあたりが「人間らしさ」ということにもなりましょうか。
こうしたところから翻って考えてみますと、「OK牧場の決闘」で描かれなかったアープには
決して絶対的な善といったことで整理のつかないこともあるわけですね。
で、それをどう扱って物語を仕立てるか。割り切ってアクションにしたのが「OK牧場の決闘」であって、
割り切れない感の残った?スタージェス監督は別に「墓石と決闘」を撮ったということのなのかも。
このように、同じ人物を違った形で描くのはよくある話なわけでして、
歴史的にその素性が明らかでない部分が多いとなればなおのことでありましょう。
そのひとつの例が、2020年大河ドラマでよもやの?主人公となった明智光秀でもあろうかと。
その放送開始と前後して、さまざまに光秀を扱った番組の便乗放送があるくらいに
一躍脚光を浴びることとなった明智光秀ですけれど、そんな番組の中のひとつとして、
過去にTVドラマとして放送された「明智光秀 ―神に愛されなかった男―」という一本がありました。
いやはや、これはなかなかに飛躍した話でありましたなあ。
唐沢寿明演じる明智光秀は、このまま信長に天下を取らせて
その後の世の中は果たして平穏無事となるのかを考えた挙句、
信長を討つ決意をするものの、自身は捨て駒となって秀吉に敗れることで
秀吉を天下人に座らせようと画策する…という。
ストーリーとしてはそういう話も作れるとは思うものの、
光秀の考えるところが「なぜ、そうなる?」という点で得心しにくい。
武将まがいの公家であった近衛前久に唆されて…という「信長燃ゆ」の方がまだしもに思えたところです。
とまれ、こんなフィクションも生んでしまうくらいに想像をたくましくさせる明智光秀、
果たして大河ドラマのこの後の展開はどんなふうなものでありましょうかねえ…。
というところで、昨今どうも疲れ気味だものですから、ちと温泉につかりに行ってまいります。
今回はあちこち見て回ることにあまり精を出さずにのんびりと(の、つもりですが…)。
それはともかく、明日一日、お休みを頂戴いたします。ではでは。