ライプツィヒの町歩きで音楽軌道というルートをなぞっていたところ、メンデルスゾーンハウスの特別展示に
クララ・ヴィークが出てきたことで話を前後させてシューマンハウスの方に飛んでしまいましたが、
音楽軌道の道なりに話を戻すといたしましょう。
メンデルスゾーンハウスは旧市街を囲んでいたであろう市壁の外側ほんのちょいと行ったところでして、
ルートとしてはそのまま市壁の内側、朝に諸国民戦争記念碑に向かう際、トラムに乗ったアウグストゥス広場へと続いています。
その途中の、ただ通りすがっただけのビルの壁面にプレートをひとつ発見。
そもそもの音楽軌道の案内マップに載っていないとは、いささかかわいそうな扱いとも思えますが、
紹介されているのは作曲家のマックス・レーガーなのでありましたよ。
プレートには1916年に作曲家、ライプツィヒ音楽院教授のマックス・レーガーがここにあった建物で亡くなったことが
記されておりますけれど、写真入りであるとは著名であることの証でもありましょうか。
「極度の肥満や暴飲暴食、ニコチン中毒に過労」(Wikipedia)であったとかいうことで
43歳で亡くなったことからも、いわゆる「破滅型」でもあるかなと思われ、
いったいどんな音楽を作っていたのかいね?と気になるところではありますなあ。
これまでマックス・レーガーの作品を積極的に(というか自覚的に)聴いたことはありませんで、
ただドイツの教会でのオルガン演奏会などでは時折プログラムにその名を見かけたことがあったような。
ですが、曲の印象を記せるほどに印象に残ることはなかったもので、後付けで改めて聴いてみたような次第です。
手持ちのレコード、CDは見当たらないものですから、もっぱらYoutube頼みでありましたけれど、
やはりオルガン曲で知られる存在であるようながら、さしあたりオルガンでないものにトライしたのですね。
そうしますと、先に漠然と思い浮かべた人物像からは離れて、「おや、分かりやすいいい曲?!」と。
取り分け管弦楽で演奏された「モーツァルトの主題による変奏曲」ですとか、
ピアノ独奏による「バッハの主題による変奏曲とフーガ」あたりは折に触れて聴きたくなるかもと思いましたですよ。
世紀末の作曲家だけに、音楽の響きや変奏の仕立てにとんがったものがありそうに思うところながら、
むしろ古典的な聴きやすさが感じられたものですから。
ところで、Wikipediaには「約2メートルの身長と100キロを超える体重から「ドイツ最大の音楽家」と呼ばれ、
また、親友にまで「非常に醜い顔」と酷評された」といった記載がありますので、
容貌魁偉でもあったろうかと思うわけですが、そのマックス・レーガー旧居跡のプレートがある建物のすぐ脇、
ちょっとした広間の真ん中に噴水があったのですなあ。
「Mägdebrunnen(乙女の泉)」と呼ばれておるようですが、この美しい水運びの乙女は
(パッと見ではテナルディエ夫妻のいじめで水汲みに行かされたコゼットのようでもありますが)
しっかり見ると顔つきは至っておだやか、うっすら笑みを浮かべているようにも見えるところでして、
なんでもゲーテの「ファウスト」に基づく乙女の姿であるそうな。
「ファウスト」は読んでいないのでどの部分なのか、よく分からないのですが…)
とまれ、この泉は1906年に造られたということですから、
すぐお隣に住まっていたマックス・レーガーも当然のように見上げていたのではないかと思うのですよね。
容貌魁偉なマックスと美しい水汲みの乙女、「美女と野獣」でもあるか…と思ったものでありますよ。
かなり攻撃的な性格もあって敵も多く、音楽もまた尖鋭な部がをその後の作曲家たちに影響を与えたのが
マックス・レーガーのおもての顔とすれば、この像を見上げてひとり心穏やかになったとき、
先に挙げた「モーツァルトの主題による変奏曲」を書いたりするうらの顔があったのかもしれんなあと
思ったりしたものでありました。