ライプツィヒ造形美術館の展示室を巡って、お次はひとつのハイライト。

このように大きな空間がひとりの作家に宛がわれていたのですから。

 

 

作家の名はマックス・クリンガー、ライプツィヒ・オールスターズのひとりにその名が挙がっていましたので、

地元ライプツィヒの美術館ならでは扱いでもあろうかと思うところです。

 

てなことを言いますと、単に地元びいきなだけにも思えてしまうそうではありますが、

フロア中央に大きな存在感を放っている作品、こちらは相当に知られたものでありますね。

なにしろ美術館の中にあるのに、ライプツィヒ音楽軌道のポイントのひとつになっているのですから。

 

 

作品名は「Beethoven」、それにしてもどこかで見た姿であるなと思ったわけですが、

実は日本でベートーヴェンの「第九」が初演された板東俘虜収容所で、

その演奏会プログラムに配されていたのがこの像だったのですなあ。

 

渋谷のBunkamuraで板東俘虜収容所の世界展を見たときに記憶に残ったものですけれど、

この像自体、ウィーン分離派展の展覧会でクリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」とともに展示された…とは、

以前にも書きましたけれど、話題性のある展覧会だったでしょうから、収容所にいたドイツ人に中にも

強く印象に残っていた者がいて、プログラム印刷のときに描いたのでありましょう。

 

マックス・クリンガーは若い頃からベートヴェンを敬愛し、この像の完成までは15年以上の歳月がかかっているとか。

最初は木造であったプロトタイプは、ボンのベートーヴェン・ハウスに展示されているということで。

 

それにしても、上半身は裸で下半身をベールで覆っているあたり、神話の世界でもあるようですし、

腰かけている台座の側面と裏側にはアダムとイヴの姿、そして楽園追放のようすが描かれているとは、

ベートーヴェンを神にも並ぶものとして描き出したということになりましょうか。

 

 

というところで、彫刻家でもあり画家でもあったマックス・クリンガーの、

まずは彫刻作品をもそっと見てみようと思いますが、まずはこちら、

魅入られたくないがために?そそくさと撮りましたので、ボケてしまって…(笑)。

 

 

洗礼者ヨハネの首を手元に置いたサロメ像ですけれど、

まあ、絵画に描かれるサロメは画家たちが腕を競って妖艶に、また淫靡にも仕立てていることに比べますと、

なんともおとなしい印象ではありますが…。

 

続くこちらも神話の世界か…と思えば、「Badendes Mädchen」であるということですが…。

 

 

直訳的には水浴する少女てなところでしょうけれど、彼の地では日本に比べて子供の発育が良いので(?)

このような姿となるのでしょうなあ。髪に彩色があるところに生々しさがあるので、少女の印象からはなおのこと遠く…。

 

と、もうひとつも女性像ですけれど、後ろに掛けられている絵とモデルが同一人物であるような。

同じ展示室内には別にもう一枚、この方の絵があるのですけれど、はてどなたでしょう?と思えば、

タイトルには「Elsa Asenijeff」(エルザ・アセニエフ?)と。

 

 

マックス・クリンガーのパートナーであったということでして、モデルであり、恋人であり、ミューズであり、

いわばクリムトにとってのエミーリエ・フレーゲのような存在であったのでしょうか。

エルザ自身、作家として多くの著作を残したようですので(といって、日本には紹介されていないようですが)、

やはり自立した女性でもあったようですけれど、クリンガーと別れた後は不幸な末路でもあったようで。

 

とまれ、ここに見られるエルザ像は自信に満ち溢れたようにも見えますが、

続いてはやはりエルザの肖像を始め、マックス・クリンガーの絵画作品を見ていくことにいたします。