このところ湧水づいていることはこれまでのあれこれでお気付きでもあろうかと思いますが、
富士山や八ヶ岳にまで行かずとも、近くに湧き水があることはあるのですなあ。
なんとなれば、多摩川の河岸段丘が現在の川筋の両側に広く、何段にも断崖壁を見せておりまして、
その露頭部から水がしみ出していたりするわけです。東京・国立市のママ下湧水もそのひとつでありますよ。
ちと下り坂度合いが分かりにくいところでしょうけれど、ここがひとつ、多摩川の方に下る断崖になってまして、
実際にはそれなりの高低差があるのでありますよ。解説板にはこのように。
ということで段丘下まで下って行きますと、湧き水を集めたせせらぎが流れておりまして、
結構しっかりした流れであることから、淀みもなく清涼感がありますな。
崖側の下部からはわりとあちこちからわずかずつしみ出しておりますが、
ひとつはっきりした水源とされているのがこの矢来の中。奥の暗がりをよおく見れば、確かに湧いているなと。
見た目にきれいな湧き水が必ずしも飲用可とは限らないことは先にも触れたとおりですけれど、
淀みなく流れているのをいいことに、ついついペットボトルで汲んでしまい…。
近くの立て札に「野菜以外は洗わないでください」とあったことから、ヒトの口に入る野菜を洗えるのなら
変な重金属が含まれてしまっているようなことはあるまいと高をくくってしまったわけして。
このあたりの判断は多分に自己責任でとなるわけですが、家に持ち帰って煮沸してまたコーヒーを淹れる。
さすがに井詰湧水には敵わないものの、やはり水道水とは違うまろやかさがありましたなあ。
ところで、湧水源から沁み出した水の流れはやがて、東京とは思われない田園風景の中へ。
この先でせせらぎは、別の湧水点から流れてきた矢川と出くわすことになるのでして、
左がママ下湧水の流れ、右が矢川です。
そして、ふたつの流れはほどなく府中用水という疏水の支流にあたる谷保分水に合流することに。
この場所は「矢川おんだし」と呼ばれているそうでありますよ。
府中用水は江戸時代にあたり一帯の農業用水として作られたもので、現在も使われているところからして、
やはり田園風景に馴染むところでありますね。ちなみに府中用水は農林水産省選定の「疏水百選」のうち、
唯一東京で選ばれているところだそうな。ついでにいえば、ママ下湧水も「東京の名湧水57選」のひとつでした。
とまあ、ご近所話をひとくさり…という感じではありましたけれど、
しかしまあ、暑いときに水場に佇むのはなんともホッとするものでありますなあ。