と、真鶴半島の突先(干潮時ではなかったので、三ツ石まで歩いて行くことはできませんでしたが)を訪ね、

丘上の道から急カーブの続く下りを経て湘南寄りの海沿いの道まで下りてきたのでありますよ。

その海沿いでひとつ訪ねたのがこちら、「しとどの窟」なのでありました。

 

 

治承四年(1180年)、石橋山合戦に敗れた源頼朝はやがて船で海を渡って安房国へ逃れ、再起を期したわけですが、

一旦は辺りの山中に忍んで、船出の機を窺うにあたり、隠れていたのが「しとどの窟」であるということで。

(奥に見えている、牢屋のようになったところですなあ)

 

実は(立ち寄りはしませんでしたが)「しとどの窟」と呼ばれる場所が湯河原にもありましたなあ。

いったいいずれが本物であるか?とも思うところですけれど、なにしろ追われる身とあっては

ひとつところに長いは禁物、一度は山深くに潜んだとしても船で逃れる算段が付けば、

海沿いに移動するのは必定。どちらも本当(の伝説)なのかもしれませんですね。

 

ちなみに「しとど」というのは元々「しとと(鵐)」という鳥の名前から来ているのだそうな。

解説に曰く「追っ手が窟を覗くと「シトト」と呼ばれる鳥(ホオジロの一種)が急に飛び出して来たので、

人影がないものとして追っ手が立ち去った」ところから、洞窟にその名があるということでありますよ。

 

ところで、しとどの窟のすぐ近く、真鶴港に面して小さな食堂が並んでいたものですから、

遅まきながらの昼食ということに。前日の宿でもって、「地域共通クーポン」なるものをもらっていましたので、

こいつを使って豪華な昼食をと目論んでいたものなのでありますよ。

 

されど、あれこれ並ぶお店を覗く限りでは取扱店舗を示すものが貼りだされておらないようす。

とりあえず、近辺でいちばん大きなお店で尋ねてみますと、「うちでは使えないんですよ」と。

 

登録やら決済やらのシステム対応がネックになっているのか、どうも地場の小さなお店ほど

恩恵に預かれないのでは…と想像していた制度ですけれど、まさにそんな感じなのですなあ。

 

これまでの外出控えから規模の大小を問わず、ことごとく観光に関わる事業者は痛手を被っておりましょうけれど、

小さな事業者ほど対応が難しく、恩恵を受けられないというのは、どんなものでありましょうかねえ…。

飲食店関係では「GOTOイート」も全く同様ではありましょう。

(まあ、これらの制度の動向も先行き知れんところではありますが…)

 

で、どうせだからとクーポンの使える店を探して昼飯を…という行動もとれたわけではありますが、

「がんばれ!個人商店」の思いは相変わらず続いておりますので、この際クーポンは別の形で使うとして

港近くに並ぶ小さなお店の一軒、海女食堂というお店で昼飯としたのでありました。

 

 

前の晩の夕食で山のような刺身を堪能しておりましたので、このときは焼魚の定食を。

それにしても、カマスがまるまる2尾ついてくるとは思いもよらず。たっぷりです。

 

 

ともあれ、地域共通クーポンの仕組みとは無縁の食堂もこんなふうに頑張っておりますな。

ところで、しとどの窟を出た源頼朝は後に鎌倉に幕府を打ち立て武家による政治が始まりますけれど、

その幕府が全国に配置したのが地頭職であると。

 

「泣く子と地頭には勝てぬ」てなことわざができてしまうほどに権力を笠に着た横暴ぶりで、

庶民は泣かされたわけですが、どうも弱い者にしわ寄せがくる構図は、

何百年経っても変わることがないということなんでしょうかね、いやはやです…。

 

そういうこちらも同じく庶民なわけで、手にした地域共通クーポンは昼食では使えなかったものの、

帰りがけの小田急線に乗り換える小田原駅でかまぼこやらなんやらの土産物を

たあんと買い込んで帰途についたものでありました。