コロナ禍でも花は咲く…

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 さて2月の途中から44本連続でコロナウイルス対策記事を書いてきました。

 

 今日は久しぶりにコロナウイルス以外の記事を…

 

 経営コンサルタントとという仕事柄、いろいろな弁護士の方と接点ができます。年齢や物腰、事務所の規模など本当に100人100様です。

 

 弁護士といえど究極は個人で仕事しているわけですから属人的な特徴がでてきて当たり前です。

 

 さて、先般、東京ミネルヴァ法律事務所が51億円の負債をかかえて破産しました。

 

 (※7月2日発売の週刊新潮、3日発売のフライデーに川島弁護士のインタビューが掲載されました。追記していきます)

 

 この破産についてはいまだかつてない奇妙なポイントがあります。

 

【本人の申し立てではない】

 東京第一弁護士会が破産申立をしています。

 

 破産は本人(法人本体)が申し立てをするのが普通ですが、債権者が申し立てることもできます。東京第一弁護士会に東京ミネルヴァ法律事務所は会費を滞納していたということですから東京第一弁護士会が債権者の立場で申立をした、ということになります。債権者申立の破産は申立人に費用負担も発生しますし、弁護士会が申し立てるのは異例中の異例、と言えます。

 

【金融債務がない】

 50億円を超える負債額、となると通常は金融機関からの借入が過半を占めますが報道によると、依頼者からの預り金や依頼者に送金すべき過払い利息額を払っておらず、その預り金や未払金でこの金額になっている、とのこと。

 

 消費者金融の過払金返還訴訟がわかりやすいと思いますが東京ミネルヴァ法律事務所が代理して消費者金融会社から過払利息を取り戻したがそのおカネを依頼者に払わず、別の支払いに充てた、という形です。

 

 さらにこの50億円のうち20億円が実質的に東京ミネルヴァ法律事務所を支配していたとされるリーガルビジョン社やその関連会社に対する未払金、ということです。

 

 東京ミネルヴァ法律事務所の平成31年3月期の貸借対照表を想像してみると、大体、

 

 資産 21億円 負債 リーガルビジョン社など 20億円

          預り金など(依頼者関連?) 32億円  

          純資産の部 繰越利益剰余金 △31億円        

 

 となります。この資産21億円はあくまで計算上です。

 

 繰越利益剰余金は昨年3月期の金額ですからこの1年で赤字が20億円出ていれば、

 

 資産 0億円 負債 リーガルビジョン社など 20億円

          預り金など(依頼者関連?) 32億円  

          純資産の部 繰越利益剰余金 △51億円   

 

 (※純資産の部が不明ですが、週刊新潮のインタビューではリーガルビジョン社の未払20億円、預り金31億円と回答しています)

 

 という感じになっているかも知れません。おカネがなくて破産するわけですからおそらくこれに近い貸借対照表になっているのでは。

 

 預り金32億円。依頼者に返すべきおカネと考え、一人当たり30万円と仮定すると債権者数は1万人です。

 

 資金繰りがもたず破たん、という流れですから債権者が回収できる金額は…。

 

 

 

【おカネはどこに消えたか】

 単純に言えば5032億円分のおカネがいったん東京ミネルヴァ法律事務所に入ったが、本来の受け取り人には払われず流出した、ということになります。

 

 ここで登場するのが東京ミネルヴァ法律事務所の実質的なオーナーと言われている人物の存在です。

 

 もと武富士の社員。営業が上手く東京ミネルヴァ法律事務所にも相当数の客をつけた、とされています。東京ミネルヴァ法律事務所はこの人物の言うがままに事務所賃料やTVCMなどの広告宣伝費を払っていたとされます。これら経費はそれぞれ契約によって払われた形ですので一応は「合法的に」社外に抜かれたことになります。(もっとも今後調査が進めば何か後ろ暗い取引が出てくる可能性はあります)

 

 実際には東京ミネルヴァ法律事務所に相談員(利息過払請求や肝炎訴訟などの電話相談を受け実際に処理を進めていくパラリーガル)や総務経理担当者をオーナー側の会社から派遣し、東京ミネルヴァ法律事務所としてはこれらの人材がいないと業務が回らないという状況になっていたようです(弁護士がこのようは業務の丸投げをすることは禁じられています)。

 

 この仕組みはWINWINでおカネが回っているうちは良いのですがこのケースのようにおカネの循環が止まると大変なことになります。

 

 (※リーガルビジョン社から派遣された社員で資金移動を含めすべての動きを握られていた、と。同じ記事でリーガルビジョン社の代表、児島(兒島)勝氏は広告しかしていない、と支配を否定)

 

【時系列で整理すると】

 昭和62年 弁護士の広告の一部解禁

 平成12年 弁護士の広告の本格的な解禁

 平成16年4月 のちに実質的な東京ミネルヴァ法律事務所の支配会社となるDSC社が設立される

 平成23年10月 武富士の更生計画認可

 平成24年 東京ミネルヴァ法律事務所設立

 平成26年11月 DSC社が東証2部RVH(医療用3DグラフィックスLSIの製造会社)子会社に

 平成27年2月 DSC社が国税庁の査察を受ける(5億円の所得隠し)

 平成27年4月 リーガルビジョン社がDSC社の事業の受け皿として設立される

 平成27年 東京ミネルヴァ法律事務所の初代所長室賀晃弁護士が死去

 平成29年8月 二代目所長の河原正和弁護士が体調不良で辞任、現代表の川島浩弁護士就任。川島弁護士が主宰していた大和弁護士法人が東京ミネルヴァ法律事務所と「合流」(※どのような手続きを経たか合併なのかどうかなどは不明)したことで川島弁護士が代表就任。

 平成30年11月 リーガルビジョン社の親会社RVH社からトラストフィナンテック社へ。トラストフィナンテック社の代表者は長野県の税理士。

 平成31年3月 東京ミネルヴァ法律事務所の債務超過額31億8100万円に(※今回の破産は令和2年3月期決算を組めないまま申立になったのでは…)

 令和2年6月 東京ミネルヴァ法律事務所、破産へ

 

【弁護士法人の社員弁護士の無限責任】

 弁護士法第三十条の十五に、「弁護士法人の財産をもつてその債務を完済することができないとき各社員は、連帯してその弁済の責めに任ずる。」とされています。

 

 (※週刊新潮のインタビューでは「一生かけて法的、道義的に償うべき十字架」と)

 

【途中となっている案件は】

 委任を受けた東京ミネルヴァ法律事務所が破産し業務を止めたことで宙に浮きます。

 

 個人で法律事務所を開いていた弁護士が急死した場合など周囲の弁護士が助け舟を出す形で案件を分担して引き継ぐケースがあるようですがこのような何万件という単位で案件が止まるというのはいまだかつてない状況だと思います。過去、弁護士法人アディーレ法律事務所が2か月間の業務停止命令を受けた時も案件をどうすればよいかとという問合せが数千件単位で出たようです。

 

 (6月28日追記アディーレ法律事務所の業務停止のケースでは、1.自分だけで手続きを進めていく、2.他の事務所の弁護士に依頼する
3.アディーレの弁護士と個人契約する、という選択肢を提示され、3を選んだ方々は特に支障なく案件を進めることができたようです。しかし、今回は破産申立ですので東京ミネルヴァ法律事務所という組織そのものがなくなる、という事態です。)

 

 依頼者とすればすでに東京ミネルヴァ法律事務所に着手金を払っています。一方、あとを引き継ぐ弁護士は無償で働くというわけにはいきません。難しい選択を迫られることになります。

 

【リーガルビジョン社】

 ※週刊新潮の記事では、ミネルヴァ法律事務所設立以来8年の収益とほぼ同額の130億円がリーガルビジョン社に払われた、と試算しています。

 

 きちんとした契約に基づき支払われたものであったとしても、

 

 リーガルビジョン社に今後税務調査が入り脱税がなかったかどうか厳しく精査されることは間違いありません。

 

 また、ミネルヴァ法律事務所はこのあと破産手続きに入りますのでリーガルビジョン社に対する料金などの過払いなどがあれば当然配当にまわすべく管財人から請求が行われるはずです。

 

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