2019年02月11日
出版に際して(5)ツボ情報の信用性
「(4)古典理論の弱点」のつづき
信用できるツボのデータとは
「本当のツボ辞典をつくりたい」という気持ちからツボネット構想が生まれました。2015年くらいのことです。「整動鍼®」という呼び名が出来た頃です。
もし整動鍼が生まれていなければ、ツボネットは生まれませんでした。鍼灸師なら誰でも作れるものではありません。「ツボ」「理論」「症状」という3要素を共有していることが条件です。感覚的な施術はデータ化できませんし、集めたとしても利用価値が低いものになります。
ツボの位置一つとっても、それぞれの鍼灸師が思い思いの場所を選んでいたら、集まるデータが信用できません。もちろん、個人差がゼロになることはありませんが、最初の設定を厳密にておくことで、データの価値は飛躍的に上がります。
ツボはミリ単位
実は、鍼灸の臨床データを信用できない理由の一つがツボの位置なのです。ツボの位置は鍼灸師によってバラバラですし、1人の鍼灸師でも、時と場合によって同じ名称のツボを違うところに取ることがあります(ミリ単位で比較した時)。
そもそも、ツボの大きさはどれくらいなのでしょうか?
考える際に重要な前提があります。ツボは指圧する所なのか鍼をするところなのか、をはっきりさせる必要があります。一般向けの書籍や雑誌に掲載される情報は、指を前提にしているはずです。ネットで検索して得られる情報の多くも、一般向けに書かれていれば、それは指圧を想定したものです。
本来、ツボは刺鍼点として研究され理論化されたものです。灸の方が早い時期から行われていた可能性がありますが、鍼のようにミリ単位でツボを使い分けるのは難しいです。
日本では、米粒大とか半米粒大という大きさのお灸が発展していますが、そうしたお灸には、純度の高いもぐさ(お灸に使われる蓬の葉からつくるふわふわしたもの)が必要です。古代の中国大陸で日本で使われているようなお灸があった形跡は報告されていません。
ツボは刺鍼点という前提で理論化され、指圧点として一般向けに知識が普及されているわけです。このズレがどうしても気持ち悪いわけです。感覚的な意味だけでなく、本来のツボのポテンシャルが覆われてしまうからです。
北斗神拳の経絡秘孔とツボ
鍼灸の古典は、2000年以上前に書かれています。そこには、あらゆる病気に挑んだ記録があります。すべての病気に有効だったと言えませんが、ある程度の成果が出ていなければ、記録もされないですし、理論化もされず、残ることもなかったでしょう。
つまり、ツボの効果は「何となく」ではないと想像できるわけです。私自身のことを振り返っても、高校生の時に、はっきりとした効果を体感したから鍼灸師になりました。『北斗の拳』でケンシロウやトキが、自信をもって経絡秘孔(ツボ)を突きます。その世界は漫画だと理解していながらも、北斗神拳の経絡秘孔はツボとしての理想像でした。
鍼灸師になって、患者さんのツボに鍼をしていると、時に自分でも信じられないくらいの効果が出ることがあります。いわゆる「まぐれ」というやつです。まぐれだとしても、目の前で劇的な効果を見てしまうと、心は踊ります。
『北斗の拳』で憧れていた経絡秘孔が漫画の世界ではなくなってしまうのです。もちろん、内臓破裂なんてことは絶対に起こりません。イメージの底にあるのは、トキが治療として使っていたツボです。
症状と原因、原因とツボ
臨床を重ねているうちに、動きに注目すると、ツボの精度が高ければ同じ変化が起こることに気が付きました。ツボの位置が変われば起こる変化も変わります。病気や怪我が治るためには、必要な変化があります。
たとえば、膝が痛い時。大腿部の前面(大腿四頭筋)が過緊張をしていたり、後面(大腿二頭筋)が過緊張していたりするわけです。膝の痛みを取りたい時に、こうした筋肉を適度な緊張に戻すことが治療になります。
だから、「膝のツボ」と単純に言えないわけです。同じことがどこでも言えます。「五十肩のツボ」も、「腰痛のツボ」も、「頭痛のツボ」も厳密な情報ではありません。でも、ツボの情報というのは、このように病名や症状名と紐付けされています。
ツボは現象と紐付けしておいた方が、はるかに実用的です。ただし、そこには確かな理論が必要になります。
つづく…
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