食欲の秋・・・と言うわけではありませんが、今日は誰もが好きな〝寿司〟の世界のお話です。
2008年の〝ミシュラン東京〟において三ツ星を獲得し、2014年には当時のオバマ大統領と安倍総理が会食をしたことでも有名な、銀座の寿司店・『すきやばし次郎』 。
この有名店の大将は、言わずと知れた
小野 二郎 氏
1925(大正14)年に静岡県で生まれた小野氏は、7歳の時に奉公に出されて以来料理人の道一筋。
79歳の時にガンの摘出手術を受けて1ヶ月安静を言い渡されたのに、僅か3日後に退院。
その翌日、中野から銀座の店まで2時間半かけて歩き、その3日後には仕事をしたという、まさに〝鉄人〟です。
その小野氏が、1965年に独立・開業したのが、この店なのですが・・・今日は今年3月にミシュラン三ツ星レストランの最高齢料理長(Oldest head chef of a three Michelin star restaurant )」(93歳128日)としてギネス世界記録に認定された彼自身の経験を通した仕事に対する心構えについて語った言葉を、以下にご紹介させていただきます。
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職人の世界は教えるじゃなくて覚えろですから、教わるということはありません。 全部自分で見て、盗んで覚えるしかないわけです。
親方とか先輩に教えてもらおうと思って入ってくるのは大きな間違いで、自分が上の人のやり方を盗んで勉強し、進歩していかなければいけない。
というのは、教えてもらったことは忘れるんですょね。
自分が盗んだものは忘れない。
自分が苦労して苦労して、これを必ず自分のものにしようと思って、
やっと盗んだものは決して忘れない。
私は寿司を握り始めたのが26歳、皆より10年近く遅かったですから、皆が昼休みで遊んでる時も、自分は調理場へ入って握りをしました。
人よりも上に行こうとすれば、人の二倍も三倍も努力をしなかったらやっぱりダメだと思いますし、私はそうやってきたから、現在の自分があるんだと思っています。
うちの店でも、修業に来て3日も持たない子がいっぱいいますょ。
一番短いのは、午後にお母さんが連れてきて、その日の夜にそのまま帰っちゃったという子。
他にも空きが出るのを半年も待ってて、やっと声をかけたら、何も知らない素人だから皆が仕事をしてるのをただ見てるだけ。
それで 「立ってるのが疲れたので辞めます」 って。
その程度の者が多いんです。
実際この店に来て、まともにやって残るのは10年に1人か2人位でしょうね。
自分が鮨屋になるのであれば、いい鮨屋でしっかり勉強した方が独立した時にいい仕事ができて、いいお客様を取れると思うんですよ。
でもそういう店は厳しいから嫌だと言う。
自分のわがまま放題、好き勝手なことをやってて将来もずっと通るかといえば、私は通らないと思います。
何事も一番底辺から覚えていかなかったら、一人前にはなれません。
まず10年は辛抱しないと、その仕事を本当に芯から覚えていくのは難しい。
でも朝が早いから嫌だとか夜遅いから嫌だとか、そういう人達ばかり。
これは、人間の基礎ができていないんじゃないかと思うんです。
だから私はこの仕事は合うとか合わないとかっていう若い人の言い分を聞くと、つい言いたくなるんです。
仕事っていうのは合う合わないじゃなく、こっちから努力して合わせていくものだって。
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この名人の生き様からは、プロとしての心構えと、技術を習得しようとする者・技術を伝承する立場の者双方に対する貴重な教えが伝わってきます。
宮大工の西岡常一棟梁同様、超一流の仕事師の持つ厳しさを知るにつけ、身が引き締まる思いです。
以前拙ブログでご紹介しました、〝料理の鉄人〟道場六三郎氏の記事も、是非併せてお読みいただきたく・・・。