94年録音。アモイヤルのヴァイオリン、ロジェのピアノにイザイ弦楽四重奏団によるショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏曲のための協奏曲を収めた一枚です。併録はフランクのヴァイオリン・ソナタ。ティボーとコルトーも録音した協奏的作品はイザイに検定されました。協奏曲と銘打たれていますが、響きは室内楽的なものとなっています。フランク門下。4楽章から成る大作でヴァイオリンとピアノが独奏パートとして協奏的な効果を発揮します。ベルクやシェーンベルク作品で知られるアモイヤルに、ラヴェルやプーランクといったフランス近代を得意とするロジェ。フランクをつながりとして生まれたフランスの名品を瑞々しい感覚で再現しています。併録されたフランクのソナタもこの分野屈指の名作。こちらはフランク晩年の作品でやはりイザイに検定されています。フランス的な感覚にある二つの室内楽にみせる微細な感触。当盤では、静謐なだけではなく込められた熱情ともいえるものにも対応しています。ショーソン作品の協奏という呼称には違和感があるかもしれません。弦楽四重奏を通常の協奏曲での管弦楽と見立てた場合でも、ピアノが加わり複協奏曲のようになるのではありません。協奏的部分でもロマン派的な技巧追求も行いません。ショーソンといえば誰もが思い浮かべる詩曲と同様のリリシズムが際立つ作品。そこには品位と知性で紡がれたものであり、一説にはその出所をバロック期のラモーやクープランのコンセールに求めています。さまざまな捉え方はできる作品ですが、触感や精神性はコンセール出自をうなずかせるものがあります。二つのソナタ形式の楽章に緩徐楽章。そして2楽章にはシシリエンヌ。シチリアーナ、舞曲が置かれるのもコンセール的です。躍動感のある先頭と末尾に置かれた二つのソナタ形式の楽章。ここに協奏的な楽器の活用が確認できるのですが、全編を通して楽器のバランスは保たれ統一された色調を醸し出しています。

 

1899年。わずか44歳で自転車自動車事故で亡くなったショーソン。91年のこの協奏曲も30代半ばの作品で、ここに老成といった巧みではなく、抒情ととともに十分な若さも感じられる作品です。交響曲、愛と海の詩と並ぶ代表作。微妙なバランスにある作品のため、力感に比重が置かれると香りを相殺することがあります。パリジャンであったショーソン。アモイヤル、ロジェともにフランスを体現したニュアンスと明瞭は音楽に相応しい。

 

 


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