90年録音。ブロムシュテット指揮のサンフランシスコ交響楽団のブルックナー、交響曲第6番(ノヴァーク版)です。2005~12年のゲヴァントハウス管弦楽団によるブルックナーは全集として完結しました。小型の交響曲としては単発のもの。ワーグナーのジークフリート牧歌を併録しています。ドレスデン国立管弦楽団、サンフランシスコ響といったオーケストラ、北ドイツ放送交響楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス。このアメリカに生まれたスウェーデン、北欧の指揮者の手掛けるレパートリーは手堅いものです。北欧ということではニールセン、シベリウスが代表的なものとして取り上げられ、R.シュトラウス、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーといったドイツ系の曲種も、取り上げるものの中核にあります。オーケストラ・ビルダーとしても知られるブロムシュテットは、オーケストラから自然に個性を引き出すため、R.シュトラウスなど作曲家も重なるところでは、オーケストラ独自の音色を確認することができます。シュターツカペレ、ドレスデンでのブルックナーの交響曲第4、7番の2曲もブラスの壮大さと、管弦楽の古色をもまとった音響が好ましい。サンフランシスコ響でのブルックナー、第4、第6番はアメリカのオーケストラらしくブラスは輝かしく、ブルックナーの音楽としても陽性で好みは分かれるところですが、曖昧さを残さないブルックナーは苦手な人にも受け入れられやすい内容です。サンフランシスコ交響楽団との間のニールセン、シベリウス、R.シュトラウスのアルプス交響曲、グリーグのペール・ギュント抜粋といった録音では、その自然な流れをデッカの音響がとらえている内容。ドレスデン時代のDENONとの間にも録音のコンセプトこそ違えど、現代の音響を代表するものとなっています。かつてのハンガリー系のオーケストラ・ビルダーたちは大管弦楽を統率し、レンジの広い音響にヨーロッパ型の指揮者が避けてきた難曲をとりあげてきました。ブロムシュテットの取り上げる曲目にはR.シュトラウス、マーラーといった機能を最大限に引き出したものもありますが、ブルックナーも、ゲヴァントハウス管との間に全集として完結させたように、中核の音楽はドイツ、オーストリアにあり、その志向するところはヨーロッパ型のものと一致するところにあります。ブラスの音量のブレンド、アメリカの管楽器は巧みなものですが、弦を中核としたものからは乖離することも多い。実際、当盤でも寂寥感や、神秘といったものとは遠いのですが、ブルックナーと北欧の音楽にも共通する自然はここにもあります。第6交響曲でのヨッフム、クレンペラー、カイルベルト、シュタインといったものと比しても重量には不足しますが、もともと作品も小型であり、ジークフリート牧歌との組み合わせもよいものです。

 

ベートーヴェンの第9交響曲以降の音楽の模索から出発したワーグナー。標題的傾向をもっていますが、ジークフリートにも使われた素材で編まれた小さな管弦楽はコージマへの愛情こもった誕生日を祝うプレゼントであり、ワーグナーの音楽の小さな見本です。ここに壮大なものはないのですが、牧歌的なものが展開しています。ブルックナーの第6交響曲。ベートーヴェンの第6交響曲が「田園」であるように、自然を映す瞬間があります。ブルックナーの音楽から標題を見出すのは無意味なものですが、高山にたとえられることもあるのも事実。第6はその中でも小型の佳品であり、登山にたとえるなら可憐な高山植物を探索できるような作品です。

 

 


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