ボッケリーニのスターバト・マーテル。バンキーニ率いるアンサンブル415にアニェス・メロンの歌唱で弦楽五重奏にソプラノ、1781年稿を当時の奏法を検証しながら微細な響きを引き出しています。91年録音。改訂稿は1800年で、アルト、テノールと声が拡充されました。カトリック教会、キリストの磔刑にあたり聖母マリアの悲しみを歌う楽曲で古くセクエンツィアにまで遡るものです。ボッケリーニ作品では、1736年のペルゴレージの有名な作品が意識されたことでしょう。こちらの編成はソプラノ、アルトの独唱と弦楽器。短調が主体、小さい編成が劇性をともなって聖母の悲しみを伝えます。当初は、その劇性こそが批難の対象となりましたが、26歳というペルゴレージの早すぎる死にともない、広く伝播することとなりました。再版が繰り返され、改作が多いのも特徴となっています。これが18世紀を通じ、強い影響をともなったのも当然なのでした。ペルゴレージ作品も、1724年のA.スカルラッティが意識されていました。アンサンブル415にはヴィヴァルディ作品の録音があります。ハイドン夫人とさえ称されたボッケリーニ。ハイドンはボッケリーニに10年ほど先行(1767年頃)し、1時間近い大作があります。曲は40分ほどのボッケリーニ作品よりは長大でオラトリオ風。ハイドン作品としては天地創造以前のもっとも有名な楽曲でした。声楽はソプラノ、アルト、テノール、バスのp4声に、オーボエと弦楽合奏というもので、やはり編成は小さい。ボッケリーニ作品は弦楽四重奏にチェロを加えることでの五重奏編成に声を加えたものです。チェロ奏者として名高ったボッケリーニは、低域を生かし、微細な表現としました。

アンサンブル415は、古楽奏法のバンキーニの強く照射する音像が厚塗りではない個々の響き、特に弦のアタックをとらえています。イギリスのカークビーに対し、フランスのアニェス・メロンの歌唱。どちらもその清浄な歌唱で知られ古楽を率いていたものでした。ボッケリーニ作品の置かれた位置はハイドン、モーツァルトの生きた時代です。演奏はバロックに引き寄せられ、時代楽器が意識されています。1800 年稿は声を付加することで響きも拡充され、ハイドンと時代を接する響きとなった演奏は多いものです。アンサンブル415は、ミニマムな編成を意識し、古楽をいれた同曲編成の小ささを意識させたはしりともなりました。編成は小さくとも、劇性は帯びていて、清澄な歌唱は聖句も追いやすい。精緻なバランスの上になりたったものでした。


 


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