「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの随想:「アルキメデスの大戦」を観て

2019年08月06日 | 時事随想

 今日は、8月6日、広島原爆の日です。実際に戦争を体験した人たちは、どんどん少なくなっていく昨今。戦争の悲惨さを、私たちはどう語り継ぐ必要があるのでしょうか。

 戦艦大和の建造をめぐるさまざまな謀略を描いた三田紀房による同名マンガを、菅田将暉主演、「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0」の山崎貴監督のメガホンで実写映画化した「アルキメデスの大戦」を、小5の娘と観に行きました。「アルキメデス」という題は、アルキメデスの原理・・・浮力の原理・・・船からきているのか、天才的数学者として組み込んだのかどちらかでしょう。



 まず、この映画の舞台となっている時代背景を簡単に紹介しましょう。1929年に始まった世界大恐慌は、日本においても
都市部では多くの会社が倒産し就職できない者や失業者があふれました。満州事変は、1931年中華民国奉天郊外の柳条湖で、関東軍南満州鉄道の線路を爆破した事件 (柳条湖事件)に端を発し、関東軍による満州全土の占領を経て、1933年5月31日塘沽協定成立に至る、日本中華民国との間の武力紛争です。その結果、リットン調査団が派遣され、日本は国際連盟を脱退し孤立を深めていきます。

 昭和6年満州事変が起き、日本と欧米の対立が激化する昭和8年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦・大和の建造計画に大きな期待を寄せていました。海軍少将・山本五十六はその計画に待ったをかけました。山本は代替案を提案するも、上層部は世界に誇示する大きさを誇る大和の建造を支持していました。いわゆる大艦巨砲主義ともいえる主張が主流派だったわけです。



 それに対して山本は、これからの戦闘では、空母を中心とした戦術が中心となっていくことを主張します。すでに私たちは、過去の事実として山本の主張が正しかったことを知っています。この映画の冒頭に、アメリカ軍の戦闘機による集中的な攻撃により戦艦大和が沈没する映像が流れ、3000人以上の乗務員が戦死したことが語られます。不沈戦艦大和の出撃は、生還を期さない特攻だったわけですが、日露戦争当時の考え方ともいえる大艦巨砲主義の敗北だったわけです。

 
山本五十六は、大和の建造にかかる莫大な費用を算出し、大和建造計画の裏に隠された不正を暴くべく、天才数学者・櫂直(かいただし)を海軍に招き入れます。数学的能力、そして持ち前の度胸を活かし、大和の試算を行っていく櫂の前に帝国海軍の大きな壁が立ちはだかります。菅田が櫂役、舘ひろしが山本五十六役を演じるほか、浜辺美波、柄本佑、笑福亭鶴瓶らが顔をそろえます。天才数学者・櫂直は、虚構の人物のようです。この物語が無論フィクションであることは分かっていますが、日本の歴史が大きく転換する出来事を垣間見た思いがしました。



 天才数学者・櫂直は、巨大戦艦の建造を阻止することにより、戦争を回避しようと努力します。一方山本五十六は、同様の考えを持ちながら、戦争回避不能となった時点での、真珠湾攻撃を計画していました。戦艦大和が竣工した時に、艦上を闊歩した人物が山本五十六で、それを迎える士官の一人に櫂直がいました。櫂直は、最後の時点で戦艦大和の建造に協力していました。人生の不合理を感じる瞬間でもありました。戦艦大和とそれを取り巻く人々の人生が語られた興味深い映画でした。

 昭和16年12月8日、日本海軍がハワイの太平洋艦隊を急襲の8日後、世界最大の主砲を備えた日本海軍最強の戦艦「大和」が竣工しました。その時、山本は第26代連合艦隊司令長官に就任していました。山本は連合艦隊司令長官に任官されることを拒み、吉田善吾が海軍大臣に内定された際、吉田の下で次官として留まり日米開戦を回避出来るように補佐する事を要望して、米内光政に人事の撤回を強く要求したが認められなかったそうです。

 アメリカ留学経験や駐米大使館付武官経験のある山本五十六は、アメリカの国力を肌身で感じ取った人物であり、そうした経緯もあって対米戦争を回避する努力をした人でした。その人物が、対米開戦の責任者となり、ミッドウエー海戦で大敗北を喫し、最期は敵攻撃機によって撃墜されジャングルの中で絶命しました。天才数学者・櫂直は、本来の数学の道をあきらめ、戦争回避のための努力をします。けれども思うところがあり、最後はその才能を戦艦大和の建造に役立てます。彼の意に反して戦争に突入してしまいます。戦艦大和も、さしたる戦果を挙げることなく、大勢の乗組員と共に海の藻屑となってしまいました。理不尽の蓄積の上に、不幸な歴史が築かれていくといった印象を受けました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マッキーの随想:「天気の子... | トップ |  マッキーの随想:富士山登山... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

時事随想」カテゴリの最新記事