「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの随想:紅白からアイドルの一考察

2020年11月25日 | 時事随想

 今年の大晦日のNHK紅白出場者が発表されました。その顔ぶれを見て考えたことを綴ります。紅組では、11年連続出場していたAKB48が落選し、日本最大のポップグループAKB48関連のSKE48・NMB48・HKT48などの48グループからは選出は有りませんでした。その代わり、48グループの公式ライバルである46グループの乃木坂46・日向坂46それに欅坂から改名した櫻坂46の三組の出場が決まりました。それに対して、女性グループの代表的組織のハロプロからは、モーニング娘を含めて全く選出が有りません。こうした状況は、コロナウイルスの影響で、ライブ中心のグループに悪影響が強く出て、ネットに強いグループが相対的に活躍した年だったという理由以外にも、幾つかの原因があるようです。

 私は、これら女性アイドルグループに対して、実はかつて違和感を持っていました。秋元康がプロデュースするグループも、つんくがプロデュースするグループも、少女の性を商売の具とする感覚が気にいらなかったので距離を置いていました。中学生・高校生のメンバーもいることに留意する必要があります。ただ秋元康は、アキバのオタク対象のグループから、学園生活の喜怒哀楽を主題とする方がより一般的な人たちに共感されることを経験的に知り進化していったと思われます。ですので、46グループでは、女性の色気は封印して、上品な可愛らしさの表現を大切にしているようです。

 欅坂46グループでは、それをもっと前進させて、青春の主義主張や社会問題を告発する内容を女性グループが楽曲で表現することが、広く支持を受けることを体験したようです。プロデュースする側が、稀有な表現者の少女(平手友梨奈)から新たな地平を教えられたのでしょう。平手が去った欅坂は櫻坂と名前は変えたのですが、欅坂の路線は継承し「青春」の葛藤を歌い続けるようで、今後も期待できそうです。櫻坂46の1stシングルは『Nobody's fault』(誰のせいでもないあるいは誰も悪くないの意味)。欅坂~櫻坂と続く楽曲の主題は、混迷する社会に対する若者の反逆とも言え、それは現代のロックと形容してよいのではないかと私は思っています。それに対して、つんくの方は女性グループを性の対象としてしか評価出来ない旧態然とした彼の性癖から抜けきることが出来なかったようです。ハロプロのモーニング娘の最新シングルは、『ギューされたいだけなのに』で、つんくの曲ですが既定路線だったとしても、相も変わらずという印象です。脱コルの時代、あんたはいつまでこんなことをやっているの!

 ハロプロは、ライブに結集するオタの熱気だけに目を奪われ、MVの視聴回数やシングルの売り上げやマスコミの取り上げ方など広範囲の評価から得るものをプロデュースに役立てることが出来ていません。しかしハロプロのモーニング娘・アンジュルム・juice=juice・つばきファクトリー・ビヨーンズなどのグループメンバーの歌唱力やダンス力など表現力は、実は驚くべき完成度です。それはハロオタだけの評価ではなく、より多くの人達に評価されるべき存在です。そうなっていないのは、プロデュースする側の力量の問題です。全国から集まった才能あるハロプロに所属するアイドル達の力量の正当な評価と現状の差異に、私などは義憤さえ感じます。

 ハロプロ所属のアイドル達が、スタンダードとなった名曲をカバーして歌っていますので、参考に載せておきます。興味ある方は、YouTubeで視聴くだされば、この子達の力量を理解することができるでしょう。『山崎愛生・手紙』、『平井美葉・海の声』、『島倉りか・スローモーション』、『上國料萌衣・さよなら』、『北川莉央・オリビアを聞きながら』、『工藤由愛・未来へ』、『高木さゆき・小田さくら・逢いたくていま』。高木と小田はベテランの域でありハロプロの中では一二を争う歌唱力の持ち主であり、それ以外は若手と言って良いでしょう。またハロプロを卒業した人たちも、歌もダンスもスキルが高いのでソロでも十分通用する人達が多いのも事実で、例えば『鈴木愛理・Break it down(Dance Shot Ver)』は、楽しそうに歌って踊る姿がスキルの高さを感じます。

 アイドルを創出する日本のプロデュース力の低さを、これからアイドルを目指す人達は的確に認識しているようです。kポップからは、世界に通用するグループが多数登場しています。最近では、それを認識した日本の若者がJYPなどで指導を受け韓国からデビューを考えています。今回の紅白に出場するNiziUもそのようなアイドルグループです。その楽曲も歌唱もダンスも、世界を目指すレベルと意志が読み取れます。プレデビューとなるデジタル・ミニアルバム『Make you happy』が、YouTube再生回数1.8億回を超えたそうです。そのMVの中の縄跳びダンスも話題になりました。期待の新曲『Step and a step』のミュージックビデオが、公開からわずか8時間で、YouTube再生回数320万回を突破し、改めてその高い人気を世に知らしめました。

 ハロプロの最新グループのビヨーンズは、遅まきながら乃木坂の影響を受けているのか、色気を封印し楽曲『眼鏡の男の子』など学園生活を寸劇を交えた個性的な演出で、広い支持を得ようとしているようです。私は職業柄なのか、メンバーの背景が気になります。メンバーの一岡伶奈は研究生として長い間苦労し、これが最後と覚悟したオーディションで、最後に名前を呼ばれ泣き崩れる姿を目にしました。楽曲『元年バンジージャンプ』でライトを浴びてステージで溌剌とした姿を見せるメンバーにそうした青春の蹉跌があるのです。また、持って生まれた特別な才能をチャンスで生かし、ハロプロの将来を担うと期待されている山崎夢羽もいます。

 同様の観点で、乃木坂の西野七瀬にも関心があります。「根暗で、女の子らしくなく、出不精で、泣き虫」というアイドルらしからぬ自己分析をして、「俺はそういう人間だ」と言い切っています。最初のお披露目では握手を求めた人がいなかったという悲惨なスタートを切りながらも、アイドルとして完璧に近い白石麻衣を差し置いて、最もセンターに多く選ばれたのは、そうした自分を変える努力が半端でなかったことを示しています。楽曲「命は美しい」(YouTube『命は美しい LiveMix』)のセンターは、西野七瀬です。儚さと強さを感じるこの楽曲に完全に共鳴したかのような西野のパフォーマンスで、メンバー全員を楽曲に同調させていく力は、特別な感性を持ったこの人でなければ出来ないだろうと心に響きます。自死の多い日本ですが、そんな人たちにも生きる勇気を与えようとするエネルギーを感じるパフォーマンスです。

 また、乃木坂のセンターを務めた生駒里奈は、学校ではいじめを受けて、乃木坂のオーディションに合格すれば学校を辞められることも参加動機だったそうです。自分で切ったという髪の毛で秋田弁丸出しの生駒をオーデションで選んだ人物は、とても人を見る目があったと思われます。現在の良好な乃木坂のイメージは、この生駒の貢献が大きいと思われるからです。また乃木坂の絶対的エースの白石麻衣も同様にいじめを受け、転校までしています。アイドルになるほどの資質が、いじめをする側の生徒にいじめの原因を与えたのでしょう。

 ハロプロのグループのjuice=juiceは、私が最もパフォーマンスの質が高いアイドルと考えている宮本佳林がいますし、実力のある金澤朋子、次元が異なるほどの歌唱力の高木紗友希、ベストパフォーマンス賞に二度選ばれた若手で最も歌唱力があると思われる段原瑠々がメンバーで、その完成度は際立っています。その知名度が一般の人にいまいちなのは、明らかにプロデュースする側の問題です。juice=juiceの『この世界はすてたもんじゃない』・ハロオタの熱気がすごいライブ『Juice=Juice Fiesta! Fiesta! ~ GIRLS BE AMBITIOUS ~』・『Juice=Juice オープニング ~ ひとりで生きられそう』、ピアノ弾き語り『段原瑠々・渡良瀬橋』・『段原瑠々・スッピンと涙』、宮本佳林の『ロマンスの途中・2019年10月17日』・『少女K・2019年10月17日』・『氷点下2019年10月17日』などのMVは、juice=juiceをご存じない方はYouTubeでぜひご覧になるとよいでしょう。

 乃木坂が国民的なアイドルグループとなったのは、メンバー一人ひとりに注目が当たるように、バラエティ番組に積極的に参加させ、メンバーの個性を大切にしているからでしょう。さほど関心のない私でさえ、生駒・白石・西野・橋本・松村・星野・生田・桜井・斎藤飛鳥・秋元・堀・高山などのメンバーの名前がスラスラ出てきますし、その顔や性格も知っています。一人ひとりの個性が紡ぎ出す世界の多様性を、歌を通して表現することが、多くの人の心に響くという現実をプロデュースする側が認識したからでしょう。

 乃木坂に関連する最新のニュースで、堀未央奈(24)がグループのYouTube公式チャンネルにアップされた自身のソロ曲『冷たい水の中』のMV内で卒業を発表しました。堀は2期生として加入したその年に、研究生という立場で楽曲バレッタ『7thバレッタbest shot version』の
センターに抜擢されるという衝撃的な登場をし、その後も独特な個性で人気を博していました。ただ、堀未央奈のアイドル人生は順調だとも言えず、苦労したのではないでしょうか。引退する時も特別な方法で多くの方に突然のインパクトを与えたと思われます。ネット配信による白石麻衣卒業コンサートで盛り上がったばかりですが、このようにメンバーの動向に人々の関心を集めるのが、乃木坂の強みです。

 目指す目標であり憧れる容姿を持った女性であり恋愛対象の理想像であるアイドルに求めるものは多いことでしょう。けれども、アイドルが一般人と異なる特別な活動を行いながらも、一人の人間としてどのような個性を持ち葛藤しながら生きているのかを、多くの人は関心を持っています。距離のある存在であるけれども、身近な存在であってほしいアイドルを求めているように思います。

(注)今回のテーマの内容は、あくまでも私の個人的な見解ですので、異なる考えの方もおられることと思います。そうした見方もあるのだという参考にしていただければ幸いです。今回の内容に詳しくない方は、文中紹介の楽曲の『』内をコピーしYouTubeの検索に貼り付け、検索してMVを実際に視聴されて各自判断されるのがベストです。

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