Phrase(14) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「そんなんだから。 真尋は全く自分以外のことに興味なかったし、」

 

志藤は先にラーメンを食べ終わった。

 

「え、」

 

「ライバルとか、リスペクトする演奏家もいなかったし。 負けたくないとか向上心とかゼロ。 だから、あの時設楽と奏のお母さんを会わせたいって熱弁ふるった時は心底驚いた。」

 

そう。

 

あの人のおかげで、お母さんと設楽さんは再び巡り会えた。

 

奏も想いを馳せた。

 

「おれもエリちゃんも。 真尋が他人のことにあれだけ熱くなってることにびっくりした。 あー。こいつも成長したんやなって。 だから、ウィーンに拠点を移すことも、ホクトから少し離れることも。 おれも納得して許した。」

 

「・・真尋さんにフィレンツェに連れて行ってもらった時も、もうみなさんにすごく歓迎されて。 大きなホールじゃなくても真尋さんはこうやってたくさんの人たちを感動させてきたんだって思いました。 コンクールの看板がないって、言われてますけど・・。 もう3日と家にいないくらい忙しくて、世界中から呼ばれて。 ぼくもああいうピアニストになりたいって思いました、」

 

奏の言葉に志藤は笑って

 

「あんなんなってもらったら困る。 おまえにはでっかいタイトルの二つや三つ。 獲ってもらわんと困る、」

 

冗談とも本気ともつかないような口調で言った。

 

「それはおまえと、おれとさくらちゃんの三人が同じ熱量でやっていかないと叶わないからな。 前だけを見て歩いていくんやで、」

 

いつもはとても厳しくて

 

一見すごく優しそうだけど、目がものすごく怖い。

 

だけど今は本当に優しい表情。

 

「・・はい、」

 

奏は小さく頷いた。

 

「もっと食べれば?」

 

と促されたが、

 

「もうおなかいっぱいです、」

 

そう断った。

 

「真尋の三分の一も食べへん、」

 

と笑う志藤に、どれだけ厳しくしても決して真尋を見離すことなく

 

愛情を注ぎ続けた存在なのか。

 

奏は胸が熱くなる。

 

 

「ごちそうさん、」

 

志藤が会計をおかみさんに頼むと

 

「ウチ。 今月いっぱいで閉めるのよ、」

 

釣りを持って来ながらそう言われた。

 

「え、ほんま?」

 

「お父さんも年だし。 後継ぎもいないしね。 それにここ再開発計画に引っかかっちゃって、どのみち立ち退かないといけないし。」

 

「えーー。 なんや、残念…。 おれもここのラーメンが一番好きなのに。」

 

志藤は残念そうに言った。

 

「ぼんに会うことがあったら伝えておいて。」

 

主人も笑顔で言った。

 

「・・長い間。 あいつにうまいラーメンを食わせてくれてありがとうございました。 間違いなくあいつのモチベーションはここのラーメンやったから。 おれが厳しくして練習から逃げ出しても、ここのラーメンを食えばリセットされた。」

 

志藤は自分が事業部を離れる時もここで真尋とラーメンを食べて、

 

泣きながら

 

志藤さんがいたからここまでこれたんだ

 

と言った彼の顔を昨日のことのように思い出していた。

 

思い出のラーメン屋も、もうすぐなくなります。志藤はいろんな思い出で胸がいっぱいになります・・

 

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