「ま。結局。 ひなたがカレシと別れないと。 なんもなんないんだけどな。 それをひたすら待つ、という忍耐はある?」
奨は先にチャーハンとラーメンを食べ終わって一気に水を飲んだ。
「彼氏と別れるのを・・待つのか。 おれは。」
何とも惨めで虚しかった。
こんなに寂しいと思わなかった・・
彼氏がウィーンに行っている時に、泣きながらそう言っていたひなたのことを思い出す。
あれから例のCMの動画が載ったサイトで
彼の名前を調べた。
高遠 奏
日本でも有名なピアノコンクールで入賞経験もある。
北都エンターテイメントで契約しているアーティストであるってことも載っていた。
それ以上の情報は何も引っかからず。
それでも、すごいピアニストなんだろうな、ということは何となくわかる。
あのCMも、本当にキレイで。
男の自分でも見とれてしまうほどだった。
ぼんやりと考えを巡らせていると電話が鳴った。
「・・もしもし。」
「あ、あたし。」
茉衣だった。
「まだラーメン屋。」
ぶっきらぼうに佑真が言うと
「え、奨くんと? ふたり?」
もう茉衣は怪しんでいた。
「ふたり。」
ため息をついた。
「え、どこのラーメン屋? あたしも今から行ってもいい?」
「もう帰るトコ。 今日、生物のレポートやらないといけないから。 これから帰って夜中までやる、」
「そっか。 じゃあ・・LINEするね、」
そう言って彼女は切った。
「大変ですね、」
奨は冗談半分、本気半分で同情した。
友達と彼女の違い。
それはつきつめると
シたいかシたくないか
というところなんだと思った。
友達は気持ち100%で繋がっていればいいけど、彼女はそれプラス『身体』も繋がってなくちゃいけない。
いや、
繋げたいって、欲求。 欲望。
だから
友達と違って、距離を置くと恋人同士は気持ちを繋げるのが難しい。
「ただいま・・」
日曜日。
佑真は秋季大会の試合だったが、1時ごろ帰宅した。
「あ、おかえり。試合。どうだったの?」
母親が店の厨房から顔を出した。
「負けた、」
大きなため息をついた。
自分のミスもあったし、本当にここのところ冴えなさすぎる自分を呪った。
「そう・・。 残念だったね。 で、その顔の傷・・」
頬に3~4㎝ほどの赤い傷跡があった。
「今日、タックルされたあともみくちゃになっちゃって。 血ィ出たけど止まった。」
佑真はその頬の傷を抑えた。
「あ、ねえ。 負けてガックリしてるとこ悪いんだけど・・。そしたら。 おばあちゃんのところに荷物持って行ってくれない? 今日、大人数の予約入っちゃって、今仕込みで大変なの。」
「あ? おばあちゃんのところ?」
ええっと。 確かこの辺・・
佑真はスマホの地図を見ながらきょろきょろとした。
母方の祖母は、ずっと女手一人で母と妹を育て、
母の妹は結婚してオーストラリアに住んでいる。
膝が悪くて両膝に人工関節を入れているので、一人でできることが限られる。
心配した母が介助をしてくれるホームを探して、今はそこに住んでいる。
母が月に何度か訪ねて着替えやらちょっとした食べ物やらを持っていったりしている。
低層マンション風の建物の前に来て
ここだ、
佑真は顔を上げた。
中途半端な気持ちで茉衣と付き合い始めたことを後悔する佑真。そして祖母の暮らすホームで意外な展開が待っていました。
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