More(10) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「ぼ、ぼくが、ソロで?」

 

ここに来てからずっと黙っていた奏だったが、思わず声をあげてしまった。

 

「そうよ。 お客さんは私と競演するピアニストが誰?ってことになるんじゃないかって。」

 

神宮寺綾はソファの肘かけに肘をついて飄々としたように言った。

 

「・・それはー・・」

 

葦切も突然の彼女からの提案に戸惑った。

 

が。

 

「高遠に関しては、事業部ではなく常務の志藤が全て取り仕切っています。 今私がお答えすることはできないのですがー・・」

 

一旦持ち帰りの方向に持って行こうと思ったら

 

「じゃあ。 その人呼んで。 私も時間がないから、また後日なんてことも難しいし。 明日にはまたパリに行かなくちゃいけないし。」

 

とにかく彼女はせっかちのようで早口でまくし立てた。

 

 

この人は・・

 

 

奏はもう彼女に振り回されてる感が満載で、ものすごい嫌悪感を抱いた。

 

葦切は少し考えた後、

 

「連絡をします。 ちょっと失礼します。」

 

そう言ってその場を離れた。

 

 

「・・あのう、」

 

奏はぽつんと残され、思わず口を開いた。

 

「なに?」

 

資料を読みながら綾は適当に返事をした。

 

「どうして。 ぼくとの競演を申し出てくださったのですか、」

 

疑問を素直に口にした。

 

「どうして?」

 

綾は顔を上げた。

 

その自信たっぷりな表情が律ととても似ていた。

 

「・・あなたに興味があったからよ。 一昨年のヒライのコンクールで。 ウチの娘に勝ったって話は聞いたわ。 娘はとても負けず嫌いだからその相手のことを特に語らなかったけど。 篠宮先生のところの生徒だっていうから。 律はあなたに負けたのが悔しくてパリへの留学を決めたの。 聞けば篠宮先生も相当あなたにご執心だっていうし。」

 

表情は微笑みをたたえていたが、目の奥がすごく厳しくて奏はその迫力にたじろいだ。

 

「・・ぼくよりも・・経験豊富なピアニストはたくさんいます。 それなのに、なぜ・・」

 

少し怖くなってうつむいて目を逸らした。

 

「正直、北都フィルとの競演はたいして興味はありません。 娘からあなたがホクトと契約をしたことを聞いて、それならば・・と思って承諾しました。」

 

黙ってしまった奏に

 

「何か。 不満?」

 

さらに追い詰めるようなことを言ってくる彼女に

 

「とんでもないです。 何だか・・信じられなくて。」

 

慌ててそう言った。

 

「まだ16歳でしょう? もっと素直に喜んだらどう?」

 

綾はまた厳しい視線を奏に向けた。

 

「・・ぼくは。 そこまでまだ自分に自信がありません。 本気でピアノに賭けるようになってから・・まだ2年ほどです。 少しは実績も作れたのかもしれませんが、神宮寺さんと、共演なんて、まだ信じられないです。」

 

綾はそんな奏をジッと見た後

 

「あなた。 ピアノ弾いてる時と随分違うのね。 もっと生意気な子かと思ってた。」

 

おもむろにそう言った。

 

どこまでも辛辣な綾に奏は翻弄されます・・

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