南風一の世界

　　時代の子　　　南風一

例えば銅山の町で
一攫千金を夢見て集まった者たちに
銅の採掘はしんどいばかりで
非衛生的だし身体を壊したりするから
白いワイシャツ姿の事務員になる方が
余程気が利いていると
言ってみたところで

銅山の町で
実際現金を手にしている労働者にとって
低賃金で詰まらない事務を繰り返す
ホワイトカラーなど何の魅力もない
実際自分の労働の結果がすぐに現ナマとして
還ってくるので
これほど目に見えて稼ぎのいい仕事など
そうそう他にあるものじゃない

そういうときに
将来的な健康のためとか
安定的な低賃金収入が得られることなど
何の魅力にもならない

そういうときに
敢えて事務員を選ぼうと声高に叫ぶ学者など
風変りの無粋な聖人君子に過ぎない

大学生時代に恩師から貰った著作を読みながら
今さらながら
恩師の凄さに驚いている
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