盲導犬候補生アーシー(仮名)、

本日はワクチン接種。

 

 

獣医さんの待合室には

他に2匹の犬がいて

・・・アーシーは変なところが

社交的で困ります。

 

熱烈な挨拶を相手と交わしたがる犬を

なんとか抑え込んで椅子に座り

それでも部屋の向こうにいる

他の犬に興味津々のアーシー。

 

そこに獣医さんが登場。

 

前回アーシーを

担当してくれた方ではなく、

待合室で無表情にアーシーを

「犬の社交性を構築するため」と言って

撫でまわしたあのお人で、

私はこの獣医さんの性格をいまだ

理解しかねているところがあるのですが、

今回もこのドクターは

アーシーのことを目にすると低い声で

「その子はアーシー・・・盲導犬候補生・・・」

 

そのまま眉一つ動かさず受付に向かい

どうしたのかしらと思っていたら

両手いっぱいに犬用お菓子を持って戻って来て

「アーシー、お座り・・・お座り・・・

座りなさい、アーシー、座りなさい・・・」

 

これをね、抑揚のない、ついでにいうと

あまり生気もない低い声で笑顔ひとつなく

アーシーに向かって呟いていらっしゃる、という・・・

 

ちなみにここまで獣医さんは

私と目を合わせることは全くなく。

 

いや先生、それってどうなんですか。

 

ともあれドクターの気迫に

押されたらしいアーシーは

素直に床に腰を下ろしまして

するとそこで先生はご褒美のお菓子を

一つアーシーの口に放り込み、

しかし能面のごとき表情を保ったまま

「アーシー、いい子、では次は『お手』。

アーシー、いい子、お手・・・お手・・・」

 

先生、こういうことを申し上げるのも何ですが

先生のその声音、なんだか季節外れの

ハロウィンというか怪談話用のそれのようで

割と率直なところ怖い・・・んですけど・・・

 

 

 

なお先生はこの一連の動きの間

ずっとアーシーを凝視なさっています。

 

「アーシー・・・いい子、

ほら、お手・・・お手・・・」

 

「あの先生、すみません、アーシーに

私は『お手』を教えていないんです・・・」

 

私のその言葉で先生は

やっと私の存在に気が付いたかのように

こちらを振り向き、少ししてから一つ頷くと

「ではアーシー、伏せ・・・伏せ・・・」

 

今度はちゃんと指示に従ったアーシーは

ご褒美のお菓子をまた貰い、さてこれで

我々は診察室に呼ばれるのかしら、と思ったら

「はい、では次の患畜さん、そっちの

犬のウォルフ君(仮名)、診察室に来なさい」

 

そう言われて立ち上がる

ウォルフ君とその飼い主に

獣医さんは相変わらず抑揚のない声で

「あの犬は盲導犬候補生なんです。

そのため常に社交性を

養うように周囲は行動すべきで・・・」

 

こちらの獣医さん、本当の本当に

盲導犬育成の理念に基づき

こうした行動をとっていらっしゃるのか、

それとも診察とは別のところで

犬に触りたい欲求をこうした形で

実現なさっていらっしゃるのか

・・・不思議な方でございます。

 

 

獣医さんのお人柄が

よくわからないあなたも

何故かよくわかるあなたも

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