我が家の盲導犬候補生

アーシー(仮名)とわが夫(英国人)が

隣の部屋で何かやっているな、と

漠然と認識しながら

私は私で違う部屋で

家事など進めておりましたところ

「こら!アーシー!いけません・・・

あっ・・・ああっ!ノー!駄目!」

 

あら、あのイタズラ犬ったら

今度はいったい何をしたのかしら。

 

その場で様子を窺っていたところ

夫が憤然とやって来て

「妻ちゃん!あの犬が今

いったい何をしたと思いますか!」

 

「いや、君、なんか叱っていたね。

で、アーシーは何をやったのかね」

 

「僕が靴を履き直そうと思って

ちょっと屈んだと思ってください」

 

「うん」

 

「その瞬間にあの犬が寄って来て

僕にキスをしたんです!

頬にではなく口にです!」

 

「まったくあの娘は・・・既婚者に、

しかも私の夫にそういうことを・・・」

 

「それも普通のキスじゃないんです!

し、舌を・・・僕が止めるように

言おうとして口を開けた瞬間に

そこに舌を・・・僕はこともあろうに

フレンチキスをされてしまったんです!」

 

「フレンチって君なあ」

 

「物凄く湿っていました・・・

今もあの犬の唾液の味がします・・・」

 

「唾液の味っていったいどんな味だよ」

 

「端的に言えば下水の味ですね。

あの子がドブで遊んだ後

全身から変なニオイを

漂わせていることがあるでしょう?

あれを凝縮したようなニオイ

いい具合に温められて・・・」

 

 

「もういい。もうたくさんだ」

 

「君は僕の妻なんですから、

それにあの犬の

取扱い責任者なんですから、

もう少し僕を慰めるようなことを

言ってくれたっていでしょう」

 

「それはそうだな。うむ、

なるほど、今回は災難だったな。

うちのアーシーが申し訳ない。

で、お願いというか通達なんだが

私は多分これからしばらく君に

接吻をしないと思うが

そこはあしからずご了承願います」

 

「・・・」

 

「いやだってさ、

君のことは好きだけどさ、

下水味の犬と間接キッスはちょっと・・・

精神的にも衛生的にも、ねえ・・・」

 

夫はこの日1日、下水味のキスの

フラッシュバックに

悩まされたそうでございます。

 

 

ちなみに盲導犬候補生は

『人の顔を舐める癖』が

ついていないほうが望ましいらしく

私もそのようにアーシーの

躾を進めておりまして

おかげさまでアーシーは

私の顔を舐めない、舐めようともしない

 

・・・うちの夫はやはり

犬にちょっと

甘すぎるのではなかろうか・・・

 

世界よ、これが責任転嫁だ

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