近頃おらが村に

引っ越してきた方が

とてもいい方で、

犬と歩く時にその家の前を通ると

必ず庭仕事の手を休めて

話しかけてきてくださって、

それでいてそういう態度に

過度な押しつけがましさ、

みたいなものがまったくなくて、

英国伝統の社交術(田園編)とは

まさにこういうものだよな、と毎回

私は感動していたのでございます。

 

で、本日日曜日、私が家で

ごそごそとくだらない作業を

やっておりましたらノックの音が。

 

見ると件の隣人女性が

封筒を手にして立っていて

「こんにちは!ご存知のように

私、今、色々自分の庭に

手を入れているでしょ。

今後の作業予定を近所の皆さんに

前もってお伝えしておいた方が

色々と迷惑がかからなくて

済むかな、と思って。というわけで

これ、この夏の工程表なの」

 

まあ、さすが!

 

さすが真に社交的な方は

行動にそつがなくていらっしゃる!

 

なるほどこれが

正しい気配りのあり方か!と

私は手紙を受け取ると

「どうもありがとう、後で読みますね」

 

「ええ、そうして」

 

「はい」

 

「・・・じゃ」

 

「はい、じゃあよい週末を!」

 

彼女が私に手を振って回れ右して

10歩ほど歩いたところで

私は気付きました、これ、推奨される

田園社交会話の流れとしては

私の方が手紙を受け取った時点で

「ところでせっかくだからうちに入って

お茶の一杯も飲んでくださいよ」

と言うべきであった!

 

絶対そうであった!

 

そういえば彼女、ちゃんと

お洒落な訪問着風の

ワンピースを着ていたもの!

 

・・・しかし今さら私に何が言えましょう、

遠ざかる彼女の背中に大声で

「あー!待って待って!今気が付いた!

ちょっとお茶を飲んで行ってよ!」とか?

 

・・・もう遅い!

 

というわけでその後30分間

私は深海のアンコウのように

暗く床をのたうちまわっていたのですが

折角の晴天日曜日、こんなことで

大事な午後を潰してしまっては

もったいない、と己に喝を入れ

外で園芸作業に従事することに。

 

もちろんお供はわが黄色雌犬

盲導犬候補生アーシー(仮名)。

 

で、私がイチゴ鉢に水をやっている

その一瞬の隙を突き、アーシー、

北面の牧草地にたむろする

種牡羊(通称:おっさん)の

群れに全速接近。

 

 

アーシーとしてはおっさんたちに

挨拶をして、ついでにおっさんたちの

落とし物(間接表現)で美容パックを

したかっただけかとは思うのですが

・・・お前な、英国田園

牧畜区画においてはな、

家畜の群れを追いまわす犬は

無条件に射殺されても

文句は言えないんだぞ!

 

ただアーシーのありようは

『追い回す』というよりは

『付け回す』に近いというか、

いや、それじゃもっと悪質だな、

まあ羊に噛みついたりはせず

ちょっと離れたところで

前脚を伸ばしてお尻を高く掲げて

尻尾を元気に振って

「こんにちは!私はアーシー!

誰か私と遊びたい人いない?

一緒に泥んこプロレスとかしない?」

 

ホイッスルとわが地声を使って

約1分後にアーシーを

呼び戻すことに成功はしたのですが

(身柄確保用のリードを準備するのに

ちょっと時間がかかってしまった)、

そしておっさん羊たちは皆怪我もなく

鷹揚に我々の退場を

許してくれたのですが、

私は気が付いていました、

敷地の向こう、道路を挟んで

反対側の牧草地から

おっさん羊の持ち主である

隣人の羊飼いがじっとこちらを

注視していたことに・・・!

 

本日私の隣人としての評価は

近辺で地に落ちていることと思われます。

 

自業自得です。

 

 

そして現在アーシーからは

湿った羊フンの香りがします

 

・・・ちょっと洗ったらね、

こう水気が逆に芳香を膨らませてね

 

『家畜香道』とかあったら今の私は

結構上位に食い込めると思いますね

 

 

 

 

「これは・・・牧草と水草を

主に食べて育ったガチョウ4歳の

朝方の落とし物の香り・・・!

夜の間腸内で熟成されたことで

香りの重みが増しております・・・!」

 

逃避に忙しいNorizoさんに

戦わなきゃ、現実と!

の1クリックを

人気ブログランキングへ