※本日後半怖い話注意※

 

英国の美しき運河を行く

優雅なるナローボートの旅の

白眉ともいえるのがロック

(Lock:閘門⦅こうもん⦆

あるいは水門)でございます。

 

陸地というものは案外

高低差があるものでして、

故に大自然は河川の周りに

盆地や崖や滝を

配置しているのかと思いますが、

運河は基本的に水面が

陸と同じ高さで

あることが好ましい(たぶん)。

 

その状態で高低差に

どう対応するのか、となった時に

生み出されたのがロックです。

 

 

運河の一部を門というか

壁で区切ってあって、

 

 

運河の水位の低い側から

高い側に移動する場合は

この区切りの中に入って

自分の船の背後の門を閉め、

そして行く手の門を開けると

水が区切りの中に流れ込んできて

(船は当然水で上に持ち上がる)、

で、区切りの中の水位が

十分に高くなったら

行く手の門を開き、前に進む。

 

水位が高いところから

低いところに移動したい場合は

やはりまず区切りの中に船を入れて

背後の門を閉め、

 

 

で、区切りの中の水を抜き

(船は区切りの中を下がっていく)

 

 

そして水が十分低くなったら

行く手の門を開ける。

 

 

わかります?

 

 

ナローボートの旅に出る際

私は自分たちがこのロックに

本当に対応できるのか

不安でたまらなかったのですが

・・・習うより慣れろというか

百聞は一見に如かずというか、

そもそもロックの周辺には

そこを通過したい他の船も

順番待ちをしていることが多く、

そうなると自分の船の

番が来る前に他の船の人たちが

ロックを使う姿を実際に見て

予習することが

可能だったのであります。

 

 

我々の船は非常に船体が長く

そういう意味ではロックの区切り

(閘門:こうしつ)の中に

船を正しく入れるのが

多少難しくはあったのですが

なにせ乗組員

総勢6人でありますから

もやい綱を駆使して

船を移動させるのは

お手の物であったというか。

 

しかしこれはあくまで呑気な

私の視点からの話でして

とあるロックでは近所に

避暑か何かに来た一家の

12、3歳くらいの姉弟が

自らロックキーパー

(水門管理人)に名乗りを上げて

どうやら日がな一日

その運河を利用する

ナローボートのために

ロックを開けたり閉めたりを

手伝っていた様子なのですが

「あれはあの子達も

楽しいだろうし、こっちも

楽をさせてもらえるし、

お互い利点があっていいよな」

 

そう何気なく

夫(英国人)に言ったところ

「いや、僕は怖かったですよ。

あの子達、変に慣れていて

門の開け閉めを効率的に

進めようとするあまり

ちょっと動きが機敏に

なり過ぎていたというか・・・

特に船の後ろ側の門を

閉めた後に水位を変える際、

あの子達は門しか

見ていなかったんですよ。

ロックで一番怖い事故は

水位を変える際に船の位置が

後ろに寄り過ぎていることで、

船の後方が門に引っかかったら

大事故につながるんです」

 

つまり船の後方が何かに

引っかかった状態で

閘室から水が出されると

船は宙づり状態になり破損し

逆に水が入れられると

最悪の場合船は沈没するという。

 

『Narrowboat accident lock』で

ネット画像検索すると皆様も

色々恐ろしい現場写真

ご覧になることが出来るでしょう。

 

 

なおナローボートの旅の

醍醐味の一つは

他のナローボートに

乗っている人々との

談笑でもあるのですが、

そうした人々から仕入れた

情報によりますと、我々が

ボートを借りた週、

とあるボートがやはりロックを

通過しようとした際に

もやい綱を使って

船の位置を安定させ

よし!船の位置はOK!

じゃあ水を抜いて!となった時

船の後ろで舵を取っていた人が

船後方のもやい綱が

船から陸地に出ていることに

気が付いたのだそうでございます。

 

ありゃ、これは危ない!と

総舵手はもやい綱に手を伸ばし、

それと同時に

閘室の水が抜かれ始め、

あ、もやい綱がこのまま

船に引っ張られて水に落ちたら

それは面倒だぞ、とその人は

ぐっともやい綱を引っ張ったところ

・・・もやい綱はどうやら

陸地側で何かに

引っかかっていたらしいのです。

 

で、その人は、本当に何気なく

もやい綱を最初に

引っ張ろうとしたときに

自分の手首のところに綱を

1周させていたそうで・・・たぶん

綱を扱う際に偶然そういう形に

なってしまったのかと思うのですが。

 

さてそして何が

起きたのかと申しますと

船は見事に閘室の水位が

下がると同時にぐいぐいと

下方に落ち込んでいき、

しかしもやい綱は陸地側でほどけず、

総舵手の手首には

綱が巻き付いていて、

そこに船の重量(軽く見積もって

18トン)が一気にかかり・・・

 

皆さん、レジャーと事故は

表裏一体でございますよ!

 

 

安全確認をまめに行い、

事故ゼロ怪我ゼロを目標に

運河の旅は

楽しみたいものでございます。

 

そんなわけで本日は

ロック話でございました。

 

 

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※乗組員人数を訂正しました 

 コメント欄での

 ご指摘ありがとうございました

 

 何でしょう、恐怖の後遺症で

 単純計算能力に問題が・・・?※