優雅なる英国ナローボートの旅。

 

本日も画像は本文と

まったく関係のない風景で

お楽しみください

 

本日はふきつのる強風の中

水路合流地点の三叉路にて

われらが長大なる船

(全長21メートル)が

いかなる騒動を

巻き起こしたか、一幕目です。

 

違うんです、我々はそもそも

合流地におとなしく

6時の方向から入り

速やかに何事もなく

2時の方向に抜けて

いきたかっただけなんです。

 

 

想定外の事象が2つありました。

 

1つは、一時おさまったかに

見えた風がそこで突然

強さを増して戻ってきたこと。

 

そしてもう1つは、その合流地点、

普通の水路よりかなり広く

運河の幅が採られている部分、

そこに何艘ものナローボートが

係留されていたことでございます。

 

本来ならばこうした合流地点は

船の係留禁止なはず、でも

1艘が船をもやえば次の船が来る、

集団心理って怖いですね!

 

 

最初の挑戦で見事に

風に負けたわれらの船でしたが、

総舵手であるわが義父

(白色シュレック)は

慌てず騒がず平然と

「速度を増してやり直しだ!」

 

ギアをバックに入れ

船を後進させ、合流地点の

少し手前まで戻ったところで

ギアを入れ直し全速前進、

同時に舵を一気に切る。

 

よしこのまま右へ!

 

右へ!

 

船よ、2時方向目指して右に進め!

 

しかし向かい風、あくまで強し!

 

一度目の時と同じく

我々の船は見事に風に負け

ぐいぐいと12時方向に

係留されている

船の群れに近づいていき

・・・慌てたのは向こうの船に

乗っていた人たちで

時間的にどうやら早めの夕食を

楽しんでいた人たちが

多かった様子なのですが

一部の人はナイフと

フォークを投げ捨て

代わりに例の

『発進の際に陸を押す棒』を

手に持って船べりに立ち

「おい!こっちだって

ぶつけられたくないからね、

悪いけどそっちの船を押すよ!」

 

船首で棒を操りながら

わが夫(英国人)も

「どうか遠慮なく!僕も

そっちの船を軽めに

押しますから、同時に

うちの船の

船尾を押してもらえますか!」

 

(ほとんど

『二人弁慶ごっこ』の世界)

 

 

 

 

「よし、じゃあ、せーの!」

 

このように2回目の挑戦も失敗。

 

 

しかしそんなことでは

へこたれない

鉄の意志を持つわが義父は

「加速が足りなかった!

もう少し離れたところから

前進を開始することにしよう!」

 

船を合流地点から

かなり離れたところまで後進させ

さあギアを入れて全速前進、

同時に舵を切る!

 

船よ右へ!

 

・・・今度は船は右に曲がった、

しかし曲がるのが早すぎた!

 

3時方向につながれた

複数の船に向かって突き進む

我らのナローボート。

 

「来ないでー!

こっちに来ないでー!」

 

「いや我々も行きたくて

行っているわけでは!」

 

またも棒を使って衝突を回避、

船を後進させ義父は

「よしわかった、もう少し遅く

舵を切ればちょうどいいはずだ」

 

というわけでやり直し!

 

合流地点から距離を取り

全速前進、少し待って

もう少し待って、よし、ここだ!

 

・・・今度は舵を切るのが遅すぎた!

 

12時方向の

船の人々から上がる悲鳴。

 

「ギャー!止めて止めて、

俺らの船は先週ペンキを

塗り直したばかりー!」

 

「棒!そっちも棒を使って!」

 

風は基本的に我々から見て

右側からふいてくるのですが、

合流地点の右側に何軒か

建物があり、どうやら

それらが風よけとして

機能してしまっているらしく、

我々の船からすると

あるところまで無風で

あるところから一気に

横殴りの風が来る、みたいな

感じになってしまっていたのです。

 

 

そんな絶望的な悪条件の中

義父はそれでもあきらめず

何度も船を後戻りさせては

新たにアタックを

繰り返していたのですが

そのうち騒ぎを

聞きつけた人たちが周囲に

集まり始めてしまってですね。

 

「スピードをもっと出すんだよ!」

 

「違う、スピードを出しすぎるから

他の船にぶつかりそうに

なっているんだ、もっと低速で

ゆっくり船を扱えばいいんだ!」

 

「舵を切るのが早すぎるんだよ!」

 

「逆だ、遅すぎるんだ!」

 

「そうじゃなくて

最初に軽めに切って

船が方向を変え出してから

深く切る、これだ!」

 

「それじゃ間に合わない、

最初に深く切って後から

微調整していくもんだ!」

 

「初めから右に行こうとするから

間に合わないんだ、

舵を反対に切って

そこから一気に反転、

右を目指したらどうだ?」

 

わが父(イメージ武将:

石田三成)はこの騒動の

途中から船内に引っ込み

「だって僕が隣にいると

シュレックさんの気が散るから」と

殊勝なことを言っていたのですが

窓から外の光景を眺めて

「これはね・・・シュレックも

頭に血が上るよ、

こう好き勝手言われたら人間

平静を保とうにも保てないものね」

 

その言葉にそっと船尾を見ると

・・・ああ、わが義父の顔色が

赤黒くなっている・・・!

 

誰かあれは

夕日の反射だと言って・・・!

 

しかし船はいったん

陸地から離れた以上

進み続けなくてはならない!

 

義父の血圧が

急上昇する音を聞きつつ、続く!

 

 

私は自分の筆力の足りなさを

今日ほど嘆いたことはありません

 

現場のあの悲愴なまでの

緊張感をこの文章は

その半分も伝えられていない!

 

皆様の想像力で

行間を補っていただければ

恐縮です、どうかよろしく

 

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