「我が子を愛していない親なんていない」
――私は、子どもたちへの話の中で、必ずそう話します。
「怒りは感情のフタ 」や、「 親子のボタンの掛け違い」 の例を話すと、子どもたちも、愛されていることに気づいてくれます。
「愛されていることが分かり、安心した」
「親は、私のことを思って、怒っているのだと気づいた」
「帰ったら、親に感謝を伝えたい」
――そんな感想が返ってきます。
でも中には、こんな質問を書いてくる子がいます。
「我が子を愛していない親はいないのなら、なぜ、子どもを虐待したり、殺したりする親がいるのですか?」
当然の疑問だと思います。
こういう質問を書いてくる子の気持ちには、2通りあるように思います。
1)自分自身は親に愛されていると感じているが、ニュースなどを聞いて、疑問に思った。
2)自分自身が愛されていると感じられなくて、「我が子を愛していない親だっている」と思っている、
感想文だけでは、そのどちらなのかは分かりません。そこで私は、次のように返事を書いています。
確かに、子ども虐待などの悲しいニュースを聞くと、そういう疑問を持つよね。
私は、そういう親は、「本当は愛したいのに、うまく愛せない親」だと思っています。そういう親は、とても辛い子ども時代を送っていることが多い。目の前の我が子のおびえた眼が、幼かった頃の自分に重なり、なさけない自分自身への怒りが我が子に向かっていた――という母親もいました。
中には、「子どもを幸せに育てる自信がない。辛い人生を送ることになるなら、殺したほうがいい」と思ってしまう親もいます。冷静に考えればありえない理屈だけど、追い込まれてしまうと、そう思うこともあるということです。
そういうふうに苦しみ、追い込まれている親は、「悪い親」ではなく、「助けが必要な親」です。まわりに助けを求める、まわりが手を差しのべることで、虐待の連鎖を断ち切ったり、子殺しを防ぐことができる――人間にはその力があると信じています。
もしその怒りが、本当は親自身への怒りだったとしても、虐待という形で行動に移すことは許されるものではありません。感情には善悪はありませんが、行動には善悪がありますから。
虐待という行為は許されないし、罪は償わないといけません。
君は、親に愛されていると感じてる? もしそうなら、大丈夫です。 それに、君がこういう疑問を持ったのは、そういった子どもたちに思いをはせる、やさしい心の持ち主だからだと思います。そのやさしさを、これからも大事にしてください。
すべての子どもたちが、認められ、大切にされて、幸せに育つことを願わずにはおれません。(完)
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