きっとあなたは松本清張のファン、もしくは『砂の器』のファン、もしくはその両方に違いない。
日本海の寒々しい海風が吹き荒れる海岸線を巡礼姿で歩く父子。
訪れる土地土地で迫害を受け、ようやく辿り着いた島根県の奥深く。
〝宿命〟のタイトルにふさわしい、ピアノとオーケストラによる悲しみが迸るようなオープニングと、
それに続くピアニスト、和賀英良(秀夫)の回想シーン。
1974年に映画化された作品、加藤剛、緒形拳、丹波哲郎に森田健作らが出演。
小学校6年生のときに、近くの公民館で上映されたこの作品を観賞したときの衝撃が未だに忘れられない。
まさか今回訪れることになろうとは、思いもせず。
ダダが行きたいと言ってた、スサノオノミコトゆかりの須佐神社⛩からレンタカーで
一時間弱の距離にあると知り、急遽訪ねることにした。
ひっそりとした佇まい。
車窓から見えた奥出雲の風景。
映画やドラマのロケ地めぐりが趣味というわけではないけれども、
この映画の劇中で使用された〝宿命〟はサントラも持っており、
今でも時々聴くほど好きな作品。
音楽監督は芥川也寸志、作曲・演奏は菅野光亮。
菅野光亮は本作を35歳のときに手掛けているが、44歳でその生涯を閉じる。
そうしたヒストリーも含めると、才能がありながらも若くしてピアニストの道を閉ざされたであろう、
和賀英良の半生と重なる。