陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

父の日に観たいあの映画「幸せのちから」

2020-06-21 | 映画──社会派・青春・恋愛

コロナウイルスにより、世界の政治経済は混迷を極めつつあります。
たとえば、合衆国の黒人の暴動。警察官による射殺事件が契機となって、大掛かりな略奪行為などが行われたとか。日本でも渋谷でクルド人への扱いを巡ってデモが起きたりした模様ですが。緊急事態宣言も解除され、日常がもどり、感染者は微増しつつあり、油断できない毎日です。(6月9日現在の状況)

米国ではマイナンバーのような口座と個人情報を紐づけするシステムが整っていて、失業者に対する給付金もスムーズに支給されたはず。ところが、このシステムには裏があります。駐車違反をして反則切符をとられただけで、口座をストップさせられてしまう。一時の給付金のために、他国の制度をうらやむべきなのでしょうか。そして、こうした政府による情報管理が進んでいないと言いながらも、日本国は世界に類をみない社会保障が手厚い国で、国民皆保険制度は国籍身分性別を問わずに、国民(あるいは一時的な来日者でさえも)の健康を支えています。日本で、黒人を射殺するなんて考えられない事態ですけれどね。

さて今回は、黒人の、お父さんが活躍する映画をご紹介いたします。
2006年のアメリカ映画「幸せのちから」は、アパートを追われ、生活にも窮したシングルファーザーの奮闘記。実話をもとにしたお話です。

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2009年の初見時には、金策が尽きて、子どもに語気を強めたり、公共の場所で傍若無人な振る舞いをしたりすること(そのくせ、証券会社のお偉方には卑屈なほど逆らえない)が目について、あまり好きになれませんでした。実話ですから信憑性はある筋書きなのだろうけれど、自分の成功譚一歩手前の苦労話を見せつけられたような気がしたものです。たとえば精神的に疲弊していてもはやいかほども行動する意欲も絞り出せない場合には、こういうガンバリズム賞賛な物語はなんとも毒なものです。

しかしながら、TV放映で観なおしてみれば、サラリーマンの悲哀や、どうにもならない苦境に振り回され、ときに自制心を失いそうになりながらも、幼い息子を連れて懸命に生きようとする姿に胸打たれないこともない。親になった者の苦労というのは、まだ知るには早すぎたのでありましょうか。

奥さんとも身勝手に別れたような印象があったのですが、ちゃんと話し合ってはいるんですよね。男ひとりも生活もままならないのに、子どもを引き取ろうとしたところに、親としての責任感を感じます。そして、二人で暮らしていくためにがむしゃらにセールスしていく根性も(少々危なっかしいものは感じますが)見上げたものです。子育てしながらの職探しといえば、男女問わずにあてはまる世の中ですので、女性向きであるともいえますよね。大人が苦労している時に、子どもの無邪気な所作がなんとも恨めしげに思えることがあって、頷きたくなります。

あえて怒りを向けるとすれば、主人公をさんざん振り回した「タイムマシン」が好きなホームレスのおじさんと、証券会社の役員たちですかね。いくら正式採用後は高給取りになれるからって、研修中が無給というのはいささか酷いとは思うのですが。それとも日本の就労政策は手ぬるいのでしょうか。

初見では手応えがなかった作品を再見してみると、また違って見えてくるものです。
そういうわけで、今日を境に、本作は父の日を前にしたお勧め映画となりました。

監督はガブリエレ・ムッチーノ。
出演はウィル・スミス。サンディ・ニュートン。ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス。スミス父子は2010年の「ベスト・キッド」でも共演していますが、本作は実際の親子の愛情をうまく映像にとりこんでいます。台詞がなくてもわかるんですよね、空気感で。

ウィル・スミス主演で同監督の「七つの贈り物」もお勧め作です。

(2011年5月13日視聴)

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