陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

街場の書店など、愉快な読書体験提供にとりくむ

2019-11-28 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

図書館や本屋で開いたときにはワクワクして、持ち帰った本がなんだかイマイチ。
──なんてことは、たびたびあります。その逆もまたしかり。芸術作品もそうですが、ものの感じ方はその場の作用をうけているものです。ひとり私室で読めばじっくり読める本もありますが、人の気配があるからこそ楽しめる本もあるというものです。

読んでよかった本に、私はごちそうさまと言いたい。
本は誰かの人生体験や思考の結晶です。その言葉によって、あるいは登場人物の言動によって、あるいは絵や写真によって、人生が変えられることあります。しかし、その本を味わい深いものにするか、つまらないものにしてしまうかも、展示や売り方読ませ方によることが往々にしてあるのです。

今年の10月27日から11月9日までは読書週間。
新聞でもさまざまな特集が組まれています。2019年10月27日付け読売新聞朝刊の社説でも、「世界を広げる本との出会い」と題されたコラムが。そこに書かれたのは、苦境にあえぐ出版業界をふまえ、書店や本の愛好者による多様な読書体験提供の取り組みについてでした。

東京六本木の書店「文喫」では、入場料を支払って入店。
コーヒーや煎茶を飲みつつゆったりと本が読めるブックカフェ。ネット上では高額な入場料が批判されたこともありましたが、都会で待ち時間に本を読みたいビジネスマンなどの需要はあり、根強い人気があるそう。読んだ本は買って帰ることもできます。

神奈川のホテル「箱根本館」では、豊富なジャンルの本1万冊以上を本棚に並べています。
宿泊客は温泉や食事を楽しむ一方、読書も満喫でき、さらに気にいれば本も購入で聴きます。

本を売るだけはなく、本と親しみなじむ体験の場を提供する。
これは従来の街場の書店では難しかった取り組みです。空いたスペースで購入した本を読ませて、飲食サービスがある大規模な書店がないことはなかったのですが、基本的には本は汚してはいけないので立読みと同時に飲食できないことが多いものです。

喫茶店や飲食店にも据え置きの本や雑誌はおいてありますが、手垢がついていかにも消耗品、食べるまでの時間つぶしといった態で、とても読書体験とは言い難いものです。医療機関に待合室にある本も、治療が気になって読めたものではありませんでしたが。ただ別のことをしながら読んだ本の内容ってあんがい覚えていたりはしませんか。私は子どもの頃、美容室で読んだ少女漫画の一コマがなぜか忘れられず、その作品名も作家名も覚えていないのに、その部分だけ鮮明に思い出せます。ホテルでの読書提供サービスはそれを狙ったものでありましょう。

出版社がいくら魅力的な本をつくっても、読者に届かねば意味がありません。
多種多様な本が幅広く未知の読者と出会えるように、より新しく親しまれるように楽しめる空間づくり、環境の設定が今後とも求められるということでしょう。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。


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