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「幻想と怪奇 傑作選」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 1973年4月~74年10月まで計12冊が刊行された伝説の雑誌『幻想と怪奇』の傑作選。

「幻想と怪奇 傑作選」監修)紀田順一郎・荒俣宏(新紀元社刊)

◆内容紹介
1973年4月、雑誌〈幻想と怪奇〉創刊。当時からすでに幻想文学紹介の先頭に立っていた紀田順一郎・荒俣宏による、文字どおりの「我国最初の幻想怪奇文学研究誌」だった。翌74年10月号の休刊まで12号を発行、1年6ヶ月という短い期間ではあったが、名のみ知られた数々の名作を掲載し、後の幻想文学出版の礎石となった。休刊から45年。ここに〈幻想と怪奇〉掲載作および、評論、コラム、書評を厳選し復刻。寄稿者による書き下ろしエッセイと、〈幻想と怪奇〉の前身と言うべき幻の同人誌〈THE HORROR〉全4号を収録した、幻想文学愛好者必携の一冊。

 かつて『幻想と怪奇』のオリジナル版(という言い方が適切かどうかはさておき)が刊行されていたのが47、8年前。当然その頃のものを自分が知る由もないし、10代の頃にこの怪奇幻想恐怖小説の泥海にハマるようになってからも、最初は翻訳もの、国内作家もの問わずモダンホラー方面ばかりに目が向いていたため、かつて『幻想と怪奇』というその手の専門誌があったと耳にはすれど、あえて古書を渉猟しようという気までは起きてこなかった。
 ってまぁ、そんなことはどうでもいい。

 今年2月に新紀元社から新創刊となった同名誌のパイロット版というか、Vol.0的な意味合いもあったんだろう。折しも昨年8月には「幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成」が創元推理文庫から刊行されていたが、その流れも何らかのかかわりがあったんだろうなと。
 当時の誌面で邦訳が紹介され、後に書籍に収録された作品は数多いが、今回の傑作選は未収録のものが選ばれたとのこと。

 各作品について一言感想
ジプシー・チーズの呪い(A.E.コッパード)
 ジプシーからチーズのレシピを騙し取った男が受ける報い。クライマックスからの畳み掛けが印象的
闇なる支配(H.R.ウェイクフィールド)
 美しく退廃的な家庭教師の女性に"支配"された少年の異常な記録。ウェイクフィールドがこんな作品を書いていたとは驚かされた。てか筋書きだけならR18よこれw
運命(W.デ・ラ・メア)
 長い旅から戻った旅人が、我が家の近くで出会った馬車。彼は自分の村まで乗せてもらうが……。物悲しく残酷な掌編
黒弥撒の丘(R.エリス・ロバーツ)
 異教徒が儀式を行ったという伝承のある〈犠牲(いけにえ)の丘〉で"私"が見た異様なものとは。マッケン「パンの大神」もそうだが、非キリスト教的モチーフというのは彼ら欧米の、特に怪奇幻想作家にとっては魅力的なモチーフなんだろう
呪われた部屋(A.ラドクリフ)
 伯爵の城館の「呪われた部屋」に泊まることを希望した騎士を待つ運命。長編の抄録みたいなものらしいので、前後関係や登場人物が今一つわかりにくい
降霊術士ハンス・ヴァインラント(E.シャトリアン)
 狂信的な降霊術士が図った世界への復讐とは……。マッド・サイエンティストテーマの変奏ものみたいなもの、とも言えなくもないか
(メアリー.W.シェリー)
 名門最後の一人となった美しい女伯爵の物語。編者序文には「ゴシック趣味の旧套を誰よりも早く脱ぎ棄てた先覚者」とあるが、この作品はそれこそゴシック趣味じゃないのかなあ……と。
子供たちの迷路(E.ランゲッサー)
 申し訳ないがよくわからない。こういう作品は苦手。
別棟(A.ブラックウッド)
 夜毎自分をこっそり訪う存在を見つけようと、立入りを禁じられた屋敷の別棟に踏み込む少年。読み始めてから「翻訳編吟」さんの同人誌で読んでいた作品と気が付いた。
夜窓鬼談(石川鴻斎)
 江戸後期~大正時代の詩文家による随筆。鬼神論、牡丹灯籠、冥府(彼の世)について
鬼火の館(桂千穂)
 戦時下、密やかな恋に揺れる若い未亡人と、彼女を慕う義弟……。運命の皮肉。自転車のライトが鬼火に見えるのは、闇が濃かった往時ならではか
誕生(山口年子)
 三姉妹の次女に起こった異変に翻弄される裕福な家族。次女は"闇が近付いてくる"と怯えるが……。ラストは衝撃的だけれども、何か物足りないというか「どういうこと?」という感想が拭い切れない

 今回収録された作品は、自分の酷く偏った好みからするとどうも今一つ。むしろ特別収録された同人誌「THE HORROR」の方が面白かったのも正直なところで。
裏庭(J.Pブレナン)
なぞ(W.デ・ラ・メア)
だれかがエレベーターに(L.P.ハートリー)
オハイオの愛の女像(A.ジェイムズ)
ムーンライト・ソナタ(A.ウールコット)
死刑の実験(J・ウェイト)
 デ・ラ・メア「なぞ」はこの手のアンソロジーのマスターピースなのでさておき、他は煽情的だがストレートな恐怖譚として単純に愉しめた。
 その他、当時の評論、書籍レビュー、全巻の編集後記等も載っていて興味深い。



 なんかやけに読了に時間がかかった気がする……。

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