赤ちゃんをウイルスから守るのに以下の2つの方法は有名なのでご存じだと思います。
ウイルスに対して母親が作った抗体をY・Y・Y・Y・Y(←抗体のつもり)胎盤を通して赤ちゃんに届ける。
赤ちゃんが自分で抗体を作る。
そして、もう一つあります。それが母乳から貰う感染を防ぐ仕組みです。
↓の記事は2015年に書いたものです。母乳が赤ちゃんを守る仕組みを書いていて、内容そのものは古くなっていません。↑母乳(出産後5日目の成乳を遠心分離機にかけて撮っています)の中には写真を撮ってくれた病理部の細胞検査士さんによりますと「恐らくビフィズス菌(2023/06/17訂正)」が写っていますが、その他に、組織球、好中球、リンパ球、幹細胞などの多くの細胞成分が入っています。写真は,旧・内海病院検査部の中島準一さん撮影
母乳の中にあって生きている細胞も赤ちゃんをウイルスや細菌から守る一つの力として役立っているのです。
乳児はウイルスや細菌から我が身を守る仕組みをまだ育てていなくて,それらに対しては丸裸に近い状態です。
母乳からもらうもので、人工乳に入れられないものの代表である組織球、好中球、リンパ球などの細胞成分は、赤ちゃんが我が身を守る力が弱くても病気の原因(病原体)に負けないための大きな力の一つとなります。
↓の図に示したものには細胞成分の他に母乳が通る赤ちゃんの腸で起きている免疫の仕事を分泌型IgAやオリゴ糖、ムチンなどを代表としてイラストで示しています。「Breastfeeding and Human Lactation」4th edition(Riordan, Wambach)
p144 Jones and Bartlett発行より
版が古いですね。テキストの新しい版を今,買いました。
(2023/06/17 追記:今6版まででています)
ここまでは2015年にすでに書いているわけですが、追加したかった項目として↓の働きをあげます。
わかりやすく解説しようとこの2週間くらい免疫学の教科書にかぶりついているのですが、いつまで経っても分かりやすく書けそうな気がしないので,まず文章だけアップします。twitterとかでご質問下されば,それにお答えはします💦
気管支・小腸・乳房経路 は教科書には以下のように書かれています。・腸管関連リンパ組織(GALT)・鼻咽喉関連リンパ組織(NALT)および気管支粘膜付随リンパ組織(BALT)のリンパ球は,腸管・器官などから入ってきた細菌・ウイルス・真菌などの抗原を認識する。・パイエル板にあるB細胞はここで病原体の情報を受け取り,リンパ管・リンパ節を通って胸管から血流に入る。・情報を受け取ったB細胞は乳腺に集まり、認識した抗原に対する特異的な分泌型IgAを産生する。・この分泌型IgAは,児の腸管内で消化されずに,標的の腸管粘膜に運ばれる。「母乳育児支援講座」改訂2版水野克己・水野紀子著 南山堂2017年11月1日 2版1刷より
分かりますでしょうか。パイエル板の伝え方が難しくて、漫画はたらく細胞第4巻も読みましたが、わかりやすい はたらく細胞ですら、まだやっぱりわかりにくい解説でした。
この引用部分は、上で示したイラストの分泌型IgAがどこから来たか、を表現しているのです。
母乳の中にあって、赤ちゃんの腸に細菌やウイルスがくっつかないようにはたらくのが分泌型IgAです。これを、、、ものすごくザッと説明します😅
お母さんの身体に入ったウイルスや細菌がお母さんにも初対面のこともあります。鼻や気管支や腸管にきた初対面の「そいつら」を身体に「有害なそいつら」として認めたリンパ球のB細胞は、リンパ管-胸管-血管を通って乳房に出向いていって、「そいつら」のそれぞれに対応した分泌型IgAを作る!のです。
ああああ、分かりますか?分かって下さい!
私がきっちり理解するのも中々むずかしくてこんなに説明に時間が必要だったわけですが、エイヤ!っと書いてしまえば,これだけのこととなりました。
B細胞?パイエル板?なんで初対面のウイルスやバイ菌に対して抗体が作れるの?、、、の説明をすっ飛ばしてしまうとそれだけの事なのです。
免疫の仕組みをもう少し知りたいお方がいましたら、少しずつ書きます。twitterなどでリクエストをお願いいたします。
今は,緊急事態なので、とにかく、母乳の中には、初対面のウイルスに対する抗体も入っているのだ、と伝えるためにこの記事を投稿させていただきました。
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about me: さぬき市民病院 産婦人科勤務
(産婦人科医・外来のみ、R1年9月より3月)
次の四国での母乳育児支援学習会は今のところ未定です。
継続しておこなって行く予定です。
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