小学生向けの読書感想文教室の講師をしていると、

自分では選ばない本に出会わせてもらえます。

 

今年の受講生さんの一人が選んだ

氷室冴子さんの「いもうと物語」もそんな一冊でした。

 


 

舞台は昭和30年代の北海道。

国鉄勤務の、真面目で地味な父親と、

ガミガミ口うるさい母親、

勉強がよくできる姉の歌子と、

勉強はさほどではないけれど、

体育が得意な妹チズルの四人家族の周辺を描いた短編集です。

 

大きな事件が起こらないこと、

妹を主体にしていること、

そして何より昭和の日常を描いているところが

「ちびまる子ちゃん」に似ていると思います。

昭和の子どもたちにとって、作品の中に流れている空気感は

懐かしくてたまらないと思います。

 

テレビが白黒からカラーへ。

炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、身の回りの電化製品が、

あれよあれよという間に新しく進化していく反面、

子ども服くらいなら、母親が縫っていた時代です。

チヅルの母ももちろん、子どもに洋服を仕立てます。

 

私の幼い頃も、手編みのアンサンブルや、

簡単な夏物のワンピースなどは母が作ってくれていましたっけ。

母が特別に手先が器用だったとは思いません。

それが珍しくない時代だったのです。

また、洒落たデザインの既製品が少なかったことも

理由の一つかも知れません。

やがて、既製品を買ったほうが早くて安く、

そこそこ可愛いということになり、

特に洋裁和裁を習った人でもない限り、

自宅で洋服を仕立てることは少なくなりました。

日本経済が右肩上がりで、いろいろなものを買い揃えることが

生活の豊かさとイコールだった時代なのです。

 

ただ「いもうと物語」の舞台となる北海道では、

日本全体の景気が良くなるのとは別に、

石炭から石油へと移り変わることで、

炭鉱の町がさびれ、男たちの仕事が失われていきました。

 

戦後昭和の明るさ、力強さとともに、

そこはかとない物悲しさも描かれているのが素晴らしいです。

 

私は氷室冴子さんの名前はもちろん知っていましたが、

作品を読むのはこれが初めて。

そのきっかけをくれたのが平成も後半に生まれたお子さんだとは、

氷室冴子さんも天国で驚いておられるかもしれません。

 

作家さんは亡くなったあとも、

作品が世にある限り、世代を越えて生きておられる、

そんなことも感じました。

 

 

 

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