本日2回目の更新です。
 
今日、京都劇場で初日を迎えた 劇団四季『パリのアメリカ人』。
拝見しました!
 
『パリのアメリカ人』の舞台は第二次世界大戦直後のパリ。
アメリカの退役軍人ジェリーが、街で見かけたリズに一目で恋に落ちます。
リズは第二次世界大戦中は、ナチスから逃れ、息を潜めて生きてきました。
戦後解放され、バレリーナを目指しています。
一方ジェリーは画家を目指し、パリに残ることを決めました。
作曲家を目指すアダム、ショーマンに憧れるフランスの御曹司アンリは、
ジェリーとともに新たな人生を模索し始めます。
そしてもう一人の「パリのアメリカ人」なのが富豪のマイロ。
彼女は裕福な家庭で育ち、これまで全て思うがままに物事を動かしてきました。
彼女は芸術を愛し、その富で芸術家を守り育てることを生きがいとしていますが、
画家の卵ジェリーに恋をします。
彼らの恋物語と、芸術への賛歌がバレエを基礎としたダンスや、
ユニークな舞台転換で描かれた作品です。
(劇団四季『パリのアメリカ人』をかなりざっくり紹介しました)

 

私はこの作品を劇場で見るのは初めてです。

でも、昨年秋の合同取材会に参加させていただき、

キャストの一員でいらっしゃる石橋杏実さん、

岡村美南さんにインタビューさせていただきました。

その際、役としての気持ちや、作品の背景、

衣装や振付、大道具に至るまでの見所を

お二人から教えていただいたので、

ストーリーを追うだけではない

楽しみ方ができたように思います。

 

 

インタビューはみのおエフエムのYouTubeチャンネルでお聞きいただけます。

もし良かったらお聞きください。

  ↓

 

【本日のキャスト】
 
●歴史的背景に注目
 第二次世界大戦直後ということ。
 戦地に赴いた人は、目の前で仲間が死ぬところを見るなど、
 文字通り地獄を見てきました。
 だから、明るそうに見えるアメリカ人のジェリーは
 実は心に傷を負っています。
 ユダヤ人として迫害から逃げていたリズはもちろん、
 直接従軍していなかったアダムもアンリも、
 フランス国内でそれぞれの地獄をくぐり抜けてきたわけで、
 この物語が単なる「恋愛物語」でも「スター誕生」でもない
 深い部分だと思います。
 キャストの皆さんは当然ですが自身は戦争を体験していないので、
 映画や文献などで戦争について知り、
 役作りをしたのだと、インタビューでお聞きしました。
 
●ヒロインの衣装に注目
 とにかくバレエ、ダンスが大きなウエイトを占めている作品です。
 ヒロインの衣装は、時代背景もあるのでしょうが、
 Aラインの、たっぷりと布を使ったワンピースやスカートばかり。
 脚の動きに、布が大きくひるがえる様子にウットリ。 
 どうやらスカートの広がりまで意識しての振り付けだと、
 これまたインタビューでお聞きした通りでした。
 
 ところで、今日のリズはインタビューでお話をお聞きした
 石橋杏実さんでした。
 石橋さんのお気に入りの衣装は、
 オープニングのコートの下に着ているワンピースなのだとか。
 「だけど、舞台ではコートを脱がないので、
  お客様からは見えません。
  いつも舞台に出る前に鏡に映してじっくり見てから
  舞台に出ます」
 とおっしゃっていたのを思い出してニヤニヤしましたよ。
 
 そして私が好きなのはマイロの衣装!
 あの上質なドレスの数々。
 デザインも素敵だわ〜。
 ところで、マイロが最初に登場し自己紹介した時、
 マダム・ヴォーレルに
 「極めてアメリカ人的なかたね」
 (セリフ、うろ覚えです)
 というようなことを言われるんですが、
 映像で見たときは、どういう意味かよくわからず
 聞き過ごしていました。
 岡村美南さんへのインタビューでその謎が解けました。
 マイロは最初、真紅(と黒かな?)を基調とした洋服で登場します。
 第二次世界大戦直後のヨーロッパの人にとって、
 赤はナチスドイツの旗を連想させる色。
 それを平気で着ているのが、マイロ。
 相手がどう受け取るか理解していないのか、
 わかっていても取るに足りないと思っているのか、
 それが「極めてアメリカ人」なのでしょう。
 
 ただ、映像で見た時には、プロローグで
 巨大なハーケンクロイツの旗が落ちてきて、
 それが真っ赤な滝のように網膜に焼き付いた直後に
 赤い服を着たマイロが出てきたように思うのですが、
 今日の舞台では、ハーケンクロイツは
 プロジェクトマッピング(?)で表現されていました。
 しかも、ハーケンクロイツは裏返るとフランス国旗になる趣向で、
 「赤い滝のような布」が脳裏に焼きつくことがなく、
 マイロの衣装との関連も薄い感じに見えました。
 ちょっと残念。
 
●舞台装置に注目
 踊る大道具、と言われるように、
 舞台装置が複雑に動いたり、
 キャストが椅子やテーブルを踊りながら運んだり、
 めまぐるしいのだけれど、
 それが全く「雑音(視覚だけど)」にならない、
 非常に面白い舞台の転換です。
 私が一番好きなのは、二幕のバレエ公演の部分。
 最初は、舞台のホリゾント側から見ているのが、
 途中で180度転換して客席の目線に変わるところが大好き!
 180度転換といっても、舞台の盆回しを使わずに表現されているのです。
 こういうことを考えつく人の頭の中が知りたい!
 
ここからは、役について。
 
 この作品の主人公はリズ・ダッサンとジェリー・マリガン。
 だけど私はこの二人よりも、マイロ・ダヴェンポートと
 アンリ・ボーレルに感情移入しながら見てしまいました。
 彼らはたまたま裕福な家庭に生まれ育ったわけです。
 「苦労知らずのお坊ちゃん」だとか、
 「君はお金でなんでも買えると思っている!」と
 仲間や好きな人に罵られるなんて
 「可哀想やん!そういう家庭に生まれて
  素直に育っただけやんか。そこまで言わんでも!」
 と私は思うのですよ。
 実際、マイロはちょっと思い上がった部分があっただろうし、
 アンリは恵まれすぎて、そうでない人たちへの想像力が
 欠けている部分はあるだろうけど、
 愛している人を手放したり、自分の欠点を認め受け入れたり、
 これまで味わったことがない悲しみと苦しみを体験している。
 見ていて、感情移入しすぎて泣きそうでした。
 きっと二人はこれを糧に、人間として大きく成長するに違いない!
 幸せになってほしい人たちです。
 
 
 主役のリズ。
 他の登場人物たちが何かを失うことで成長していくのに対し、
 リズだけは、逆なのです。
 ユダヤ人だということで、普通の平穏な暮らしや、
 平凡な恋愛の機会を失ったところからスタートして、愛を得る。
 人生プラスマイナスゼロだということを暗示しているのかも。
 それにしても、石橋さんの周りだけ無重力空間なのか?!
 動いている時も止まった瞬間も、体の線がとても美しい。
 これまでアンサンブルとして舞台に出ておられた石橋さんの
 初と言っていい大役。
 それがリズ自身と見事にシンクロしていると思いました。
 ダンスって、バレエってこんなに素晴らしいんだと再認識しましたよ。 
 
 
 もう一人の主役、ジェリー。
 今日は吉岡慈夢さんでした。
 背が高く、手足が長く、そして素晴らしいダンス!
 リズとのデュエットダンスは 見とれるばかり。
 
 
 狂言回し的な役割も担う、アダム・ホックバーグの
 斎藤洋一郎さん。
 私が斎藤さんにインタビューさせていただいたのが
 2009年8月ですから、もう10年以上前のことになります。
 まだ少年のようだった斎藤さんが素晴らしく大人になっておられ、
 親戚の叔母ちゃま気分でした。
 アダムも、一度は手に入れたと思い込んだリズの愛情を失うわけだけれど、
 彼はそれを創作の力に変えることができたわけです。
 よかった、よかった。
 
 最後に。
 もう一人とても印象的なのがアンリのお母さんである
 マダム・ボーレル。
 私はいつも観劇時に、
 「この中で私が演じるとしたら どの役が良いかなぁ」と
 夢のようなことを考えるんです。
 『パリのアメリカ人』の中だと、断然マダム・ボーレルです。
 表と裏の顔を使い分けている女性。
 それは見栄や外聞ではなく、正義のためだった、
 というのがカッコいい。
 夫もいい人だし、だからアンリがあんなにいい子に育ったんだわ。
 
 
 とりとめもないことを書き連ねました。
 最後まで読んでくださってありがとうございます。
 
ガーシュインのナンバーが素晴らしい
京都劇場での劇団四季『パリのアメリカ人』は、
5月17日(日)までの期間限定公演。
ダンス好きなら見逃してはいけません!
 

 

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茶々吉24時 ブログテーマ「劇団四季」

 

 

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