私がパーソナリティを務めさせていただいている

エフエムあまがさきの番組

「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。

 

番組17時台にお送りするのが「昭和あれこれ」。

昭和の含蓄ある歌詞を深掘りしたり、

昭和の出来事と当時流行っていた曲を紹介する

「プレイバック昭和」のいずれかをお送りします。

 

 

私たち夫婦は今年の夏休みに、青森旅行を計画していました。

お目当ては「ねぶたまつり」。

ラッセラーラッセラーと跳ねまわるのが私の夢のひとつでした。

そして時間があれば、太宰治のゆかりの地 津軽にも

行ってみたいなぁと思っていたのでした。

 

ねぶたまつりは大人気で、1年前から予約しないと

ホテルが取れません。

ということで、去年の9月くらいには、手配を終えていました。

が、ご存知の通り、コロナ禍でねぶた祭りは中止。

私たちの旅行も中止せざるを得ませんでした。

あーあ。

思えば早春からこちら、旅行に行っていません。

 

そんな時、私の脳内では

 

知らない街を歩いてみたい

どこか遠くへ行きたい

 

という曲が再生されます。

 

おそらく、多くの方が「旅行」と聞くと、

そうなるのではないでしょうか?

 

ジェリー藤尾さんの『遠くへ行きたい』は

昭和37年(1962年)5月に発表されており、

昭和、平成、令和の三つの時代を生き抜いている名曲です。

 

歌の背景を探ってみました。

 

ジェリー藤尾さんは昭和15年(1940年)、

上海の日本租界に生まれました。

本名は藤尾薫紀(しげき)さん、

日本人でNHKのアナウンサーだったお父さんと

イギリス人のお母さんの間に生まれていて、

家では英語で会話していたそうです。

 

戦後、家族で日本に引き上げたものの、

お父さん以外は日本語を話せません。

また、外見も明らかに純日本人ではない。

今でこそハーフは強みにもなりますが、

当時は「ハーフ」という言葉もありません。

ジェリー藤尾さんとお母さんは厳しい差別を受けました。

 

お母さんは逃げ場をお酒に求めてしまい、

28歳の若さで亡くなってしまいました。

その時のジェリー藤尾さんは中学1年生。

学校から帰宅したジェリーさんが第一発見者だったそうです。

お父さんはというと、家庭を顧みなくなり、以後、

ジェリーさんは夜の繁華街で荒んだ生活を送るようになりました。

ヤクザと対等に渡り合えるくらい喧嘩も強かったようです。

 

そんなジェリーさんの人生を変えたのは音楽。

もしかしたら荒んだ生活の中、音楽に慰められていたのかもしれません。

昭和32年(1957年)にはバンドボーイとなり、

ジャズ喫茶でエルヴィス・プレスリーの歌をカバーするようになります。

 

そのビジュアルと発音の良さを芸能プロダクションに見出され、

スカウトされることになりました。

 

昭和33年(1958年)、ジェリーさんは高校を中退してデビューしています。

水原弘とブルーソックのシンガーとして日劇ウエスタンカーニバルで

初舞台を踏みます。

レコードデビューは昭和36年(1961年)の『悲しきインディアン』。

外国の歌のカバーでした。

 

やっと、ハーフであることがアドバンテージになってきたわけですが、

ジェリーさんは自分が日本人であることに誇りを持っていて、

外国のカバー曲を嬉しげに歌う風潮には馴染めなかったらしいです。

ハーフゆえに、余計に国籍にこだわりがあったのかもしれません。

 

そんなジェリーさんが『遠くへ行きたい』に巡り合ったとき、

日常の言葉で語られ、どこかメルヘンを感じる日本語の歌を歌えることに、

大きな喜びを感じたそうです。

 

ちなみに、ジェリー藤尾さんは最近のJ-POPを

あまり認めておられないらしいです。

その理由は「日本語を大切にしていない」。

 

『遠くへ行きたい』が大ヒットした原因は、

NHKの人気番組『夢であいましょう』の

「今月の歌」として取り上げられたこともあるでしょうが、

ジェリー藤尾さんが日本語を大切にして歌ったことも

大きいのかもしれません。

 

遠くへ行きたい

作詞:永六輔   作曲:中村八大

 

知らない街を歩いてみたい

どこか遠くへ行きたい

知らない海をながめていたい

どこか遠くへ行きたい

 

遠い街 遠い海

夢はるか 一人旅

愛する人とめぐり逢いたい

どこか遠くへ行きたい

 

愛し合い 信じ合い

いつの日か 幸せを

愛する人とめぐり逢いたい

どこか遠くへ行きたい

 

 

歌詞をよく読むと、この人物は今は孤独なんですね。

今は誰も寄り添っていない。

だけど、どこか遠くの街で愛する人とめぐり逢い、

信じ合って生きる幸せの日が来ることを願っている。

 

単に「旅行がしたい」という歌じゃない。

「人生の旅」について歌った歌なのだわ。

 

 

私が生まれる前に誕生した『遠くへ行きたい』。

私の死後もずっと歌い継がれるのかもしれませんね。

 

YouTubeからお借りします。

アップ主様、ありがとうございます。

   ↓

【YouTube】 ジェリー藤尾 遠くへ行きたい

 

 

 

【参考文献】

塩澤実信『昭和の歌手100列伝 Part3』

 

 

 

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