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株式会社 ハウスショップ 東京都町田市

罠・・・・34

2020年02月24日 | 社内事情

店長と口論になり
会社を辞める辞めないの話しにまで発展してしまいました。
その日帰宅した山本は
一人悩みました
しかし自分の中では結論は出ています
それは数年前に
証券会社の若い営業マンと会った時に
心に誓ったからです。
もう良心に恥じる仕事はしない

ただ
会社を辞めれば
すぐにまたお金の問題になります
祐太は進学校でトップクラスですから
大学も行かせて上げたい
まだ進路は決まっていませんが
大学となればお金がかかります。
その積立もしなければなりません。
また明美はもし今後症状が悪化すれば
その治療に大金がかかるかも知れない
そんな事を思うと
自分の一存で会社を辞める事もできない
そんな思いが脳裏を駆け巡って
悩んでた訳です。
ただその悩みは明美には伝えられません
今は精神状態が安定していますが
ストレスを感じればまた悪化する可能性があるからです。
明美には言えませんが
裕太には今の自分の気持ちを伝える事にしました。
学校から帰ってきたら
もし自分が会社を辞めて転職すれば
もしかしたら収入が半減する事
そしてそうなれば
裕太の進学は大きく制限を受ける事
これを伝えました。
すると裕太はあっさり
俺の事は気にせずにお父さんが辞めたいと思えばそうすれば
って言って来ました。
そう言われれば
逆に罪悪感が湧いてきて決断がつきません。
ですから裕太に少し声を荒げて言いました
お前の本心を言って欲しいんだと
山本の剣幕に少し驚いた裕太は
少し考えさせて
と言って自分の部屋に入って行きました。
その時にコードレスの電話も部屋に持って行き誰かに電話し始めました。
長電話で中々出て聞きません。
そして30分くらい話したあと
その受話器を片手に戻ってきました。
そして
裕太にそれを差し出して一言
おじいちゃんがお父さんに代わってくれ
と言って
それを手渡しました。
山本は何がなんだか分かりません
なんで裕太が自分の父親と話してるのか
それに自分は大学を卒業したら
家から追い出されるように出てきましたので
少し気まずい気持ちがあって
父親とはほとんど電話で話した事はありません。
ただ今の状況は
ためらう時間もありませんので
言われるがまま電話に出ました。
すると父親の口からは
意外な言葉が出てきました。
裕太が高校を卒業したら家族でこっちに戻って来い
まずそう言いました
それからどうしてそんな話をするのか
聞いたら
その理由を色々と語り始めました。
裕太は震災で大阪に行って以来
頻繁におじいちゃんと連絡をとってた事が分かりました
どうしてそうしてたかと言うと
裕太とおじいしゃんの思いが一致していて
それを実現しようとしてたのです。
裕太は
大学は関西で出たい
そんな思いを強く持っていました。
その理由は
大阪に行けば身内がいるからです。
このまま関東にいても
両親が亡くなれば
一人ぼっちになってしまいます。
一人っ子で育った裕太は
関西にいる従妹たちを見て
兄弟がいる事
これが羨ましかったのです
その従妹の子たちも
裕太をお兄ちゃんと慕ってくれたので
関東ではいくら長く住んでも湧いてこない
故郷の存在
これを関西に行けば感じるようになったのです。
また山本の父親は
元々三重の出身で
そこには先祖代々住んで来た家と墓があります。
これを守る後継ぎ
これがどうしても欲しかったのです。
山本にその思いを伝えたかったのですが
大学を卒業したら冷たく突き放した訳ですから
自分の都合で帰って来い
とは言えなかったのです
しかし裕太が震災の後来てくれて
じっくり話した結果
祐太も自分のルーツに対する思いが強く
三重の家もお墓も自分が守っていくから
と言ってくれました。
この言葉に祖父は
裕太に今後の事は託す
そう決めた訳です。
しかし山本は
その父親の申し出を断りました
明美がいるから関西に戻る事はできない

すると父親は予想してかのように
そうか
と一言言った後
裕太は本人も希望してるので関西で大学に進学するのであれば
一人で来させて欲しい
と言った後
その代わり
大学にかかる費用と裕太の生活の費用はすべて自分が出す
そう言って来ました
山本としては
自分の子供の事は自分で責任を持つ
そんな思いが湧いてきましたが
よく考えれば
裕太ももう高2
人生は自分で選択する
この権利があるはずです。
ですから
最後は
裕太がそうしたいと言うのであれば
それを止める権利は俺にはない
そう言って電話を切りました。
そして
裕太に
お前は本当にそうしたいのか?
と再度確認すると
これからは自分も自分の人生を歩むから
お父さんも自分の生き方を貫いてほしい
そう答えました。
山本はこれで会社を辞める決断がつきました。

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