◇あらすじ◇

パリ郊外に位置するモンフェルメイユ。ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台でもあるこの街は、いまや移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域と化していた。

地方から異動してきた警官ステファンは、犯罪対策班に配属されクリスとグワダのチームに加わった。3人でパトロールするうちに、ステファンは複数の勢力が互いに緊張関係にあることを察知する。

そんなある日、ロマのサーカス団からライオンの子供が盗まれた事をきっかけに自称”市長”の一派とロマたちが一触即発となる

3人は衝突を避けるために捜査を開始。盗んだ犯人はイッサという少年である事を突き止める。

 

 

◇感想◇

2019年のカンヌ映画祭で、「パラサイト 半地下の家族」とパルムドールを争い、審査員賞に輝いた作品です。

 

観終わった率直な感想は、

「暴動の起こる着火点を見た」という感じです。

 

すでに一部ネタバレしてますが、そこまで書かないとこの作品の良さが伝わらないと感じたからこその言葉です。

 

メインは犯罪対策班の行動を中心に描かれる物語ですが、とにかく悪い事ばかりするんですよ。周りの大人も悪そうな人たちしか出てこないですし、だから子供も悪い事するのかと思いながら見ていたら、ある事件をきっかけに後半大変な事に巻き込まれるという展開。

 

この生々しい空気感はどこからくるものかと思ったら、監督自身が物語の舞台となったモンフェルメイユで育ち、今も暮らしており、その体験を元に作られていると知り、納得しました。

 

あと、映画を見始めると、何となく善と悪を仕分けしがちなのですが、今作では複数の勢力それぞれが善の面も悪の面も持ち合わせていて、最後まで観ると全員がフラットだったと気づかされます。

 

あえて言えば、様々な人種が渦巻くこの地域での均衡状態、そして慢性化している失業や貧困の現実そのものが「主役」という事かもしれません。

 

そしてクライマックスの衝撃はかなりのものでした。

溜まりに溜まった不満が一気に爆発したとでも言いましょうか。

 

こういう不満の種みたいなものが常にあって、ある事をきっかけに暴発する危険がそこにあるというのを、今まさに観せられたという感じでした。

 

 

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