◇あらすじ◇

大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろは、一目惚れした新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きるー。

(公式サイトより引用)

 

 

◇感想◇

大森立嗣監督の最新作を観てきました。

なんとデビュー作の2005年『ゲルマニウムの夜』を上野公園の仮設映画館で観て以来、大森立嗣監督作品は15年ぶりでした。

 

今回は監督目的ではなく、成長した主演の芦田愛菜さんの実写作品の演技を観たいというのが、今作を観に行った動機でした。

 

 

では、観終わった率直な感想は?

 

思春期の少女の心の揺らぎを真正面から描いているのですが、キャラクターに癖がないというか、悩みを抱えて落ち込んだりとか、反抗したりとか、そういう素振りを表面上は見せない普通の中学生のように演じるというアプローチがされている事に、驚かされます。

 

なので、親から禁止されているコーヒーを学校帰りに飲んだりする姿に、両親への小さな反抗心が見え隠れしたり、宗教施設での仰々しい行事の間も楽しそうに振る舞ったりできます。

 

怪しい宗教にハマった両親と成長していく過程で日々更新されていく価値観の変化との間で揺らぐちひろは、これからも小さな葛藤は続いていくのだろうけれど、両親から受ける愛の大きさが優ってしまうのでしょう。

 

映画全体としては、感情移入するタイプではなく、見守っていくような目線で物語を追いかけていった印象でした。

『ゲルマニウムの夜』でも感じた事ですが、提示された事象に対して、安易に答えを求めない仕組まれた物語ではない所に、感銘を受けました。

物語の本質が見えにくくもありますが、受け取り方は個々の判断に任されるからこそ、物語を追いかけるしかなかったのです。

 

面白みが伝わりづらい作品ですが、観終わって時間が経つにつれて、もっと深く読み込みたくなってきました。

 

当初の目的である芦田愛菜さんの演技は、登場した時からちひろでした。例えセリフを発してない無言の時すらもそう。話す相手に合わせてチューニングとでも言いいますか、アプローチの変え方がうまいと感じました。

 

 

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