(参考01864:ボルソナロ、ディカプリオをアマゾン火災に資金提供と告発)

 

破壊はあまりにも大規模で、その数字をわたしたちは想像することができるだろうか。

 

2019年には、熱帯の原生林は、6秒ごとにサッカーの競技場面積が失われた。10のサッカーのフィールドの広さが、わずかに1分で失われたのだ。

 

これらの資料は、グローバル・フォレスト・ウォッチ(GFW)が発表した新しい報告書に基づく。この組織はワシントンに本部を置く、世界資源研究所(WRI)に属し、リアルタイムで森林の監視をおこなっている。

 

昨年[2019年]、熱帯全体で1190万ヘクタールの森林が失われたと、報告書は強調している。これは人工衛星の資料に基づき、メリーランド大学の分析によって作られた。

 

失われた森林の3分の1近く、380万ヘクタールが原生林である。

 

そしてラテンアメリカがこの破壊の物語の、中心的な役割を果たしている。

 

2019年世界レベルでの熱帯の原生林消失の、3分の1はブラジルの地で起きた。そしてこの報告書で、もう一つの「大規模な」森林消失の目立った例としてあげられているのが、ボリビアである。

 

報告書が指摘しているところでは、2019年世界レベルの原生林の消失は前年と比較して、2.8%増加した。これは2016年、2017年と比較すると低いものだが、この20年間のあいだで、3番目に悪い割合、消失となっている。

 

原生林とは実に何であろうか?

 

原生林は、なにゆえその消失が取り返しのつかないダメージを引き起こすのか、これを説明する固有の性格を持っている。

 

「原生林について話すとき、それは成熟した森林で、何十年ものあいだそこにあり、最近に人の手が入っていないものです」。グローバル・フォレスト・ウォッチのアナリスト、ミカエラ・ワイセはBBCムンドに語った。

 

これら自然林は、酸素の供給、その豊かな生物多様性のみで重要なのではない。さらに環境の大量のCO2を吸収する能力のある、自然の炭素吸い込み口であり、気候変動を緩和している。

 

「わたしたちは原生林が、通常の森林の2倍の炭素を蓄えていることを知っています。そして原生林に受け入れられている動植物、たとえばジャガーやオランウータンは、他の種類のエコシステムのもとでは、生きていけないのです」。

 

これらが燃やされたり解体されるとき、木々は炭素を環境へ放出する。

 

ワイセによると、2019年に失われた原生林は、同じ期間の4億台の自動車の、二酸化炭素排出量の増加に照応する。

 

ラテンアメリカの最悪の5カ国

 

報告書では2019年熱帯原生林の消失がもっとも多かった10カ国のなかで、次のラテンアメリカ諸国を際立ったものとしている。

(報告書のなかでそれぞれの国の資料については、次のサイトで見ることができる)https://globalforestwatch.org/dashboards/global

 

ブラジル

 

「ブラジルがもっとも心配されるのは、すべての熱帯原生林の消失の3分の1を占めていることです。これは驚くべきことです」、ワイセが指摘する。

 

かつてない火災による消失のあった2016年と2017年とは別に、2019年は、ブラジルにとってこの13年間で、原生林が失われた最悪の年であった。

 

2019年8月のアマゾニアの火災は、ブラジルにおける原生林消失の主要な原因ではなかった。なぜなら多くのそれらの火災は、すでに森林破壊の影響を受けている地域で発生したからである。

 

しかし原生林消失の形態は、たしかに最近のブラジル、アマゾニアにおける農業のための伐採、そのほかの土地の利用によって、急速に増加している。

 

報告の起草者たちは、2019年についてさらに新しいことを記している:先住民地域における原生林の破壊、とりわけパラ州についてである。

 

ワイセによると、これらの問題は、鉱山、土地の不法取得と関連している。

 

世界資源研究所の森林問題専門家フランシス・シーモアによると、ブラジルにおける先住民の土地における森林破壊は、この問題での政府の与える政策の重要性をしめしている。

 

(ブラジルにおける原生林の消失)

 

ジャイル・ボルソナロ大統領は、2月の法案を議会に提出したが、それは先住民の土地での鉱山開発、水力発電ダムの建設を許可しようとするものだった。

 

「わたしたちのデータがますますはっきりさせることは、先住民の存在が、いかに森林を保護する役割を果たしているかということです。とくにその土地が、先住民のものであると認められている場合は」。シーモアが指摘する。

 

「しかし政府が、先住民の土地を鉱山会社に開放するという選挙公約を実行する姿勢を示すならば、人々はこれをシグナルと受け取って、侵入を始めるのです」。

 

ボリビア

 

この国の森林消失全体は、グローバル・フォレスト・ウォッチが、2002年に監視を初めて以来、過去の記録(2016年)より80%大きいものである。

 

「今年の報告書の話のなかで、もっとも大きなものの一つは、ボリビアにおける森林の大規模な消失で、これは2019年の破滅的な火災によるものです」。シーモアが言う。

 

(ボリビアにおける森林の消失)

 

火災は大きくサンタクルス地方において起きた。多くの火事は、農業のために森林を焼くことから始まった。しかし強力な風と、干ばつによって、コントロールができなくなり拡大した。

 

ボリビア政府はこの数年間のあいだ、農業の拡大のための政策を導入し、それには2019年の火災が起こる数か月まえまで、管理された火災の制限を緩和するものが含まれていた。

 

「政府が、農業のために森林を燃やすことの制限を緩和したことのあとに火災が発生したのは、偶然の一致とは考えられない」、シーモアが言う。

 

報告書の筆者たちが強調するのは、2019年の火災で失われたのは、チキタノ乾燥林の12%近くで、これは世界の熱帯乾燥林でもっとも大きく、熱帯乾燥林はほとんどボリビアにしかなく、主要にはサンタクルス県に存在している。

 

コロンビア

 

2002年から2019年のあいだ、コロンビアでは150万ヘクタールの湿潤原生林が失われた。報告書によると、この期間に失われた森林全体の36%を占める。

 

2019年に失われた原生林は、これより2年間まえの高い割合よりは低いものであった。

 

コロンビアにおける原生林の破壊は、2016年の和平協定ののち、急速に増加した。ワイセによると、「アマゾニア地方で、以前は占拠されていた土地に、権力の空白が生まれた」。

 

(各国の年ごとの原生林消失の蓄積)

 

2019年4月、政府は「アルテミサ作戦」を発動、国立公園内の森林破壊をコントロールするため、軍の導入をも決めた。

 

しかしこの方策は議論と告発をも生むことになった。住居への放火や保護地区に居住する農民共同体の権利侵害が引き起こされた。

 

前年との比較では森林の消失は減少したのだが、ワイセは指摘する。「コロンビアにおける組織の報告があるが、2020年には、森林破壊の割合はふたたび上昇するであろうと見られている」。

 

ペルー

 

2002年から2019年までのあいだに、ペルーでは190万へタールの湿潤原生林が失われた。これはこの時期に失われた森林全体の65%に相当する。

 

「2019年には、その前年と比較して、ペルーでは原生林消失の割合は15%増加した」。ワイセはBBCムンドに語った。

 

もっとも森林消失が大きかった県は、ロレト、サン・マルティン、ウカヤリである。

 

「ウカヤリでは、主要には小規模の農業によるもの、また新しい方法での木材の取り出しを見ることができる」。グロバル・フォレスト・ウォッチのアナリストは語った。

 

メキシコ

 

「2019年には、2002年にわたしたちが監視を始めてから最も高い割合で、この国の原生林の消失が記録された」。ワイセが言う。

 

「たとえばカムペチェ、チアパスでかなりの火災を見ることができる」。

 

(2019年の各国の原生林の消失)

 

2002年から2019年までのあいだに、メキシコでは59万4000ヘクタールの湿潤原生林が失われた。これは森林損失全体の15%に相当する。この時期に、湿潤原生林の面積全体の5.7%が減少した。

 

カムペチェが森林全体の消失で最大の県で、続いてチアパス、キンタナロー、ユカタンとなっている。

 

インドネシアのポジティブな教訓

 

ラテンアメリカ以外では、報告書は昨年末から2020年初めにかけての、オーストラリアでの破壊的な火災の影響を強調している。

 

この国では2019年は前年と比較して、6倍もの森林の消失があった。

 

しかし良いニュースもあり、それはインドネシアの場合で、この国では3年連続して、森林消失が減少している。

 

インドネシア政府は、2015年の破滅的な火災ののち、新しい政策を導入した。このときは主要に泥炭の地域において起こり、ここは湿った土地で、多くの炭を含み、容易に燃え、大量の煙を発生した。

 

この2015年の火災は、2016年のハーバード大学、コロンビア大学の見積もりによると、10万人以上の呼吸器の問題からくる、寿命を短くした死者を生んだ。煙の雲が、この東南アジアの国の大きな部分を覆ったのである。

 

「2015年の火事のトラウマののちの、政府の努力を過小評価することはできない。泥炭地域の火災や、パーム油プランテーションのための、原生林の破壊にたいする監視が広範囲におこなわれることになった」。シーモアは述べた。

 

インドネシアにおける変化のポジティブな例は明らかにしている。なにゆえ「2019年の世界レベルの森林消失の規模が受け入れられないのか」。「どのようにすれば、この問題に対処できるか知っている」と。

 

「インドネシアの例は、もし政府が明確なシグナルを出して、法律を適用するならば、それは現場に反映されるのです」。

 

「しかしもしも政府が森林を燃やすことへの制限を緩め、先住民の土地への商業開発をおこなおうとするシグナルをしめすならば、森林破壊は増加するのです」。

 

パンデミックの影響

 

報告書の筆者たちは、地球上の森林への、新しい脅威を警告している:COVID-19である。

 

短期間には、土地へのパトロール活動がおこなわれないのは、違法な伐採や焼却が増加することになるだろう。ワイセが指摘する。

 

中期的にはリスクは、国々が経済を活発化させようとして、開発産業を推進することであろう。これはインドネシアが、1990年代アジア金融危機ののちに採用したものである。

 

しかしパンデミックは、一方で「過去よりも何か良いものを再建する」機会にもなりうる。

 

経済回復のために森林を犠牲にするのではなく、政府はより持続可能な経済、エコシステムを創造するため、森林の回復のために投資をおこなうべきであると、ワイセは主張する。

 

(アマゾン1ヘクタールに生きる動植物)

 

そしてこの回復には、消費者もまた役割を果たすことができるのである。

 

「パーム油、大豆、食肉など、これらは森林破壊とつながっている。少し食べる肉の量を減らす、消費している生産物がどこから来ているのかを知る、これらの生産をおこなっている会社に、森林を守ることを約束させるなどの行動を、おこなうことができるでしょう」。

(通算2955) (BBC Mundoによる)