悲しみのアイスランドビール | 旅中毒

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ストックホルムでの乗り継ぎをミスりそうになりながら持って帰った、アイスランドの500ml缶ビール10本について。

 

私、アイスランドでは食費を切り詰めておりましたが、帰る段になって奮発しましたの。なんでそこまでビールにこだわったかと言いますと、印象的なビールを先に飲んでいたからかと。

 

 

で、アイスランドでずらりと並ぶビールを見て、各種制覇してみたくなったんだと思う。あとは、缶のデザインがヴァイキングだったので、それが嬉しかったのもあると思います。飲むだけじゃなくて、持って帰って皆に見せたくなるじゃないですか。写真を撮っておけば良かったわ。

 

で、無事に持って帰ってきまして、いそいそと友人たちに見せる計画を立てました。

 

まず最初のお披露目は、大の酒好きの友人K宅での飲み会と決めました。私は仕事を辞めて旅に出ており、戻ったばかりで無職のままですからいつでも良かったんですが、呼ばれたのは日曜日でした。Kはその当時は新婚。日曜は夫氏がいるのではと思ったら、その日は夫氏は用事があって出かけて夜まで帰らないので昼間はのんびり飲んでて大丈夫、とのこと。

 

2人だけなので10本全部飲むわけではないけど、見せるためだけのために10本、持っていくことになりました。その日に4本くらい開けて半分こして飲み、1本くらいはお土産として渡し、5本は持って帰る、そんな算段で。その5本はまた別の飲み友達に見せびらかして、ごちそうしましょう。


んでKの新居にお邪魔し、どれを飲むことになるかわからんからビール10本をすべて冷蔵庫で冷やし直す。そしてお茶を飲み、つまみをいろいろと広げて準備を始め、そろそろ飲もうか~となった頃。

 

ガチャッと玄関で鍵の開く音がして、Kの顔色が変わりました。「うそ、帰ってきちゃった!」 夜まで帰らないはずだった夫氏が、なぜか1時間もしないうちに帰宅したのです。

 

「ごめん、すぐ帰って!」 Kが必死につまみを回収して冷蔵庫に叩きこみながら言い、私が『え、あの、ビール…』とか思っている間に夫氏が部屋に入ってきて私を見て怪訝な顔をする。挨拶もそこそこに、Kは私が旅行のお土産のビールを持ってきてくれたのだと説明し、「もう帰るところだから!」と私を押して玄関まで連れて行き、そして私はそのまま押し出されたのでした。間男か私は。

 

と言うか、その… 帰るのは全然構わないんですけど、ビールは…? 10本のビールを、お土産に渡したってことにされてしまったの…? 嘘でしょ…。

 

と思いましたけど、私が彼女の家にいたことの言い訳がビールをお土産に持ってきたってことなので、返してもらうわけにもいかない。その言い訳を前提にすれば、自分で飲むつもりのビールまで持ってくる理由がないし、冷やしもしないだろうからね。

 

あの飲み会が夫氏には内緒だとは知らなかった、と言うより、Kが夫氏に内緒で私を家に呼んだなんて知らなかった。せめてそれを言っておいてくれたら、10本全部なんて持っていかなかった。なぜ内緒だったのかもわからんし、知られてなんでああまで焦ったのかもわからん。彼女がお酒好きってことは夫氏も知っていたのに。

 

そもそも、そこまでバレるのを恐れているならK宅ではなく私の家で飲めば良いのでは? それとも、夫氏の休日に、たとえ夫氏の留守の間にでも家を開けることができなかったのか。あるいは、Kは結婚後は自宅を友達が集まるサロンのようにしたいとも言っていたから、他人の家ではなく自宅で飲み会を開きたかったのかな。でもそれなら余計に夫氏に内緒ってのは無理があるでしょうに。ゆくゆくはって話で、時期尚早だったのかしら。

 

なんだかわからんけど、こういうわけで、食費を切り詰めながら大量購入した、あんなに苦労して持ち運んだ、楽しみに楽しみに持って帰ったビールは、私の口には一滴も入らなかったのでした。

 

これもアイスランドの会で話したところ、「よく許しましたね!?」と言われたけど、どうしようもないやん! ビール10本がお土産ってことにされてしまった後で、新婚家庭に波風立てるわけにいかないもの! というか、ある意味、許してないかも。もちろん今でもKとは友達だし、今さら責める気もないし、もういいんだけど、100%笑い話として語り合えるか自信ないわw

 

余談ですが、こういうことを言うとすぐ「食べ物の恨みは怖いですねえ」と笑う人がいるけど、私はそのセリフ、嫌いなんですよね。食べ物は、それ自体を嗅覚や味覚で味わうだけのものじゃない。美味しい食べ物や飲み物が与えてくれる幸福感や、リラックスできる楽しい時間を台無しにされたら、嫌な気持ちになりますよ。言う側が笑っているならともかく、嫌な思いをしたという話でさえ笑い話としてしか聞かない人がいるのは何故なのかしら。

 

と言うか、もっと重要なこととして、人が気分を害したことを面白がるのは無神経で無礼でしょう。なのに、なぜか食べ物がらみであれば笑っていいと思うのかな。「使うのを楽しみに揃えたアクセサリーを全部友達に取り上げられた」と怒っている人を笑ったりはしなくても、「自分で食べようと買っておいたお菓子を全部友達に取り上げられた」と怒っている人が相手なら「おお、怖い怖い」と喜ぶ。そしてそれに抗議すると「食い意地が張ってる」と更に面白がって笑う。食べ物がらみなら相手の感情を軽んじて良いと思い込んでいるアレ、何なんですかね。

 

ぶっちゃけ、このアイスランドのビールの一件は、「食べ物の恨みは怖いですね」と言われても腹が立たないレベルのことです。だけど、この言葉自体が大嫌いだから、言われたくない。いや、言葉自体と言うか使われ方が、ってことかな?