去る3月に休館予定の千駄木の島薗邸に行った。

至近には旧安田楠雄邸がある。


島薗邸は昭和7年に島薗順次郎が新婚の長男・順雄夫婦のために建てた邸宅。
ちなみに島薗順次郎は脚気はビタミンB1の欠乏によるものと学説を発表した帝大(東大)教授であり、
順雄もまたビタミン研究の第一人者である。




建築は銀行建築で有名な矢部又吉によるもの。(ドイツで建築を学んだためヨーロッパ古典様式)

見た目今様である。


入ると右手に書斎。



見事な本棚。

戦後すぐは邸宅は医院として、また書斎は診察室として活用された。

当時洋館は接収対象でGHQから守るための策だったようだ。

(社会的活動をしているという理由ですね)


書斎の奥へ進むとサンルームやリビングにつながっている。

こちらは天井が高く、居心地がよい。



※リビング側より撮影。奥がサンルーム。


こちらのランプシェードはガラスではなく雲母。

今では大変珍しいシロモノ。

ピアノや食器棚も雰囲気がある。




食器棚は廊下とつながっており、お手伝いさんが配膳するのに便利。



廊下側からリビング。

廊下を奥まで進むと二間続きの和室がある。




和室側から庭を見る。


玄関まで戻り2階へ上がる。

2階部分は昭和16年に増築された。



ステンドグラスは当時戦時中だったこともあり、戦闘機と軍艦という珍しさ。





2階の窓からは戦後焼け野原の向こうに東京湾が見えたそうだ。


外壁の空豆は子孫繁栄の願いを込めて。



昭和初期の建築だが少し手直しすれば今でも十分住めるし使い勝手がよさげな邸宅だった。




残念ながら一時休館して和館部分は取り壊されることに。

つくづく文化財の維持は難しいと痛感するうーん




島薗順雄に親しみを覚えたのは下記の言葉だ。


「お昼ご飯は泉屋のクッキー10枚くらいとミルク。たまに鳩サブレー。これが栄養にいいんだ」


ビタミンの権威がランチにクッキーなんてかわいらしいじゃないかにやり