荻上チキ 安倍政権・内閣広報室のテレビ番組文字起こしを語る

荻上チキ 安倍政権・内閣広報室のテレビ番組文字起こしを語る 荻上チキSession22

荻上チキさんが2020年6月3日放送のTBSラジオ『荻上チキSession-22』の中で内閣広報室がテレビで放送されたニュース番組のキャスターやコメンテーターたちの発言を文字起こしし記録していた件について話していました。

(荻上チキ)さて、ちょっと驚いた記事があったんですけれども。なぜ驚いたのかと言うと、内容もさることながら、自分の名前が突然出てきたことにも驚いたんですけれどもね。先週と今週発売の週刊ポストで今、結構話題になっている記事なんですけれども。こういった記事があるんですよ。先週のタイトルは「1ヶ月で922枚の報告書。安倍官邸『反政府ニュース監視』の記録文書」っていう記事。今週の記事に記事に関しては「安倍官邸『反政府ニュース監視』。922枚機密文書を全公開する」っていう、そういった記事が載ってるんですね。

で、これはどういった趣旨の記事なのかというと、内閣の広報室がテレビ番組。中でも報道関連の番組をチェックをして、それらをつぶさに文字起こしをして、そして記録をして、何かしらの広報活動などに活用していたという。そういったようなことが記録文章から明らかになったという、そんな記事なんですよね。で、これは記事の中にも書かれているんですけれども。都内在住の会社員男性の方が公開請求をしたものを週刊ポストに提供して。そして更に追加取材などを重ねて、ひとつの記事になったというものなんです。

新型コロナ関連のニュースというのがこの公開請求を行なわれたタイミングでは集中的に行われていたこともあって、どんなコメンテーターが行政の対応などに対してどういったコメントをしていたのか?っていうことがつぶさに記録をされている。特に、この週刊誌の見立てと分析によると、こうした情報収集というのはあまねく全ての番組に対して行われているというよりは、特にその特定のコメンテーターの発言などに対して注目がされがち出会ったという。

たとえば、批判の色が強かったりであるとか。あるいはコメントの動向が気になるような方というものにより強調されて注目をしている。たとえばね、今週・先週で記事が2つ、続いていたんですけども。その記事の中ではダイヤモンドプリンセス号に乗り込んで政府の対応を告発した岩田健太郎さんに関する文章は「岩田教授」っていう項目が立てられて、その出演した時の発言というのがまとめられているという。まあ、そういったような文書を作ってましたっていうことが取り上げられているんですよね。

(南部広美)「特に」っていうことなんですか? その発言を人ごとに項目立ててまとめられていたってことなんですか?

(荻上チキ)そうですね。岩田教授に対してはその項目立てが目立っていたということになるようなんですね。で、これは本当に広い番組……たとえば『NEWS23』とか『報道ステーション』とか。あるいは『バイキング』とか。『news zero』はなぜか監視対象外のようなんですけれども。『23』とか『報ステ』とかは基本的にチェックされていたということで。どの番組がチェックされて、どの番組をチェックされてないのか?っていうことも含めて、「なぜこの選択なのかな?」っていうことも疑問ねっていうことに投げかけられているんですけれども。

その中にこういった文書があったんですね。3月6日付けの文書には「『NEWS23』の『入国規制、政治決断の背景』としてこう記されていた。小川彩佳キャスターが発言したことを受けて。小川アナが『安倍首相の今が正念場である』などの発言を紹介すると評論家・荻上チキ氏。『言葉は1個1個強いんですけれども、根拠であるとか、裏付けというのは不透明ですよね』というやりとりが続く」という風になっていて。僕がテレビに出た時の……。

(南部広美)チキさん、そうですよね。『NEWS23』に。そうでした。

(荻上チキ)で、その文字起こしも載っていたよっていうことになるわけです。

(南部広美)そこでお名前がっていうことですね?

「荻上チキ氏」

(荻上チキ)そうです。まあ他にもいろんなやりとりがあったと思うんですけども。その週刊誌の方がこの部分を「たとえば……」っていうことで例示されたので。広く目に留まるようになった。で、この情報公開請求をした方はウェブ上でね、Twitterアカウントとそれからnoteのアカウントを持っていて。この公開請求で明らかになった文書を全部公開してるんですよ。

(南部広美)ああ、そうですか。

(荻上チキ)で、前から注目をして。記事になる前にその文書を全部公開していたから、それらに一通り、目を通させてもらったんですね。で、「ああ、自分も載っているわ。知り合いも載っているわ」って。たとえば、安田菜津紀さんとか。まあいろんな方がテレビに出ているので。

(南部広美)ああ、その情報公開請求をしたものに関して目を通したら名前があったという? その、発言がですよね。

(荻上チキ)そう。テレビに出た発言が記録されているっていうことがわかったわけですよね。まあ、これがどう活用されているのかっていう、そうした諸々も気になるんですが、それはおいおいの話として。「おいおい」というのはこれからさらなる調査というものも行われたりするということもあると思うので。それはまた別途の話として。こうしたその情報収集を行政が行うことの意味っていうものは、いろいろ考えることが必要だと思うんですね。

というのは、世の中で何がどのように話題になっているか。特にそのメディア論的にはテレビが発信する情報というのはオピニオンリーダーを経由して議題とか、あるいはメッセージが拡散していくっていう機能を持つわけですよね。だからそこでどういった情報が届けられているのか?っていうことを行政が注目をすることそのもの自体が問題かというと、まあそうは言えないわけですよね。場合によっては世の中の動向を気にして「それだけ批判が高まってるんだったら、なるほどな。ちょっとこの議論をもっと丁寧にしなくてはいけないな」って反省するという、そういった活用だって可能だったりするわけですよね。

つまり、そういったような世の中の報道とかに対するチェックをどのように活用するのか?っていうのが結局はポイントになって来る。ただし、ここにも当然ながら税金が使われていることになるので、そのチェックに見合ったような仕事が果たしてなされているのか? それらがたとえば批判を単に潰すためだけに……なんか「アンチのやつを探してやれ」っていう風に思っているのか。それとも「議論をより加速させていくために反対意見を積極的に集めていこう」という風にしているのか。それはやっぱりそのひとつの態度の現われ方如何ということになるわけですよね。

でも、やっぱりこれが特にこの時期のニュース番組、報道番組に関する情報が収集されていたということもあって。やっぱり思うところはあるわけですよ。それはなぜかというと、「これだけ一生懸命にテレビの文字起こしを頑張るんだったら、専門家会議の文字起こをしたらどうかね?」っていうような嫌味のひとつも言いたくもなりますよね。

「テレビ番組の文字起こしができるなら、専門家会議の文字起こしも」

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(南部広美)コロナの時期にっていうことですね。

(荻上チキ)コロナ関連の時期で。要は「人々がどう反応しているのかということに耳を傾けて……」と言えば聞こえはいいんだけども、その動向を監視したりチェックをして、それを政策運営とか行政の対応に対して参考にするっていうのは、それはそれで結構なんだけれども。それで以上に行政がやるべきことは、やっぱりそのアウトプットですよね。情報を公開したり、説明をしたりということを重ねていくことが必要になるわけです。

そうしたような、たとえば「情報公開が非常に難しい」っていう話をこの番組で取り扱う時にはね、やっぱりその情報公開の意識が少ないこともさることながら、予算も少なく、人員も少ないよね? そのアーカイブを作るとか、あるいはアーキビスト……具体的な情報公開に携わる専門家の方々を育てようっていうような意識がなかったり。あるいは、その予算がなかったりっていうような背景も紹介してきましたよね。だから「ああ、お金がないんだったら増やすべきだよな」ってつくづく思うんですけれども。でも、「ああ、ここ(報道番組のチェック)に予算が付くんだったらそっち(情報公開)に付けた方がいいんじゃないかな」って思わなくもない。

(南部広美)うんうん。それは同時に思うところですね。

(荻上チキ)もちろん、世の中でいろんな批判が高まっているからこそ、それに対して説明をしようという方向に使ってくれるだったらいいわけですけども、どうもそういう風に使っているという実感が湧かないんですよね。あ、ちなみになんですけど、この情報公開請求をされた方はテレビとラジオについて情報公開請求をしたようなんです。

(南部広美)ああ、ラジオも?

(荻上チキ)ラジオも。このご本人に尋ねたんですけれども。ラジオも同様にやったんですけれども、「ラジオの方は人手が足りなくて文字起こしをやってない」っていうようなことをおっしゃられていて。「ああ、そうなんだ」って。

(南部広美)テレビに比重が置かれている?

(荻上チキ)ちょっとこころなしか寂しい気持ちもある。つまり、こっちは「聞いてほしい」って思ってやってるわけじゃないですか。官僚の方も政治家の方も含めて、国会のニュースとかを日々取り上げるわけだから。「このポイントはちょっとこれから説明してほしい」というような趣旨のことも僕は言いますよね? 「明日以降もちゃんとやってほしい」っていうようなことも言いますよね? それは、やっぱり「聞いてほしいな」って思って放送しているから。「チェックされてる」とかって言われても別に萎縮とかはしないわけですよ。「ああ、そうですか。じゃあぜひぜひ聞いてください」って。

(南部広美)そこに向けて放送をしているっていう部分が大きいわけですね。

(荻上チキ)大きいですよね。うん。だけどまあ、どうなんでしょうね? でも前にこの番組にね、国会議員の方が何人か来て、選挙の時期とかに討論をするようなこともあったじゃないですか。その時に、とある与党系の議員さんがCM中にさ、「ラジオも全部録音してるからね」みたいな、そんな一言をボソッとさ、僕の目を見て言った議員さんとか、いたでしょう?

(南部広美)ああ、ありましたね。

(荻上チキ)放送には乗っていないんだけど。

(南部広美)コマーシャルの間でしたっけ?

(荻上チキ)なんかちょっと威圧的な感じで言ってきた方、いたよね? その時は「ああ、録られているなら、それは嬉しいな」みたいな感覚を持っていたんだけど……あれがブラフだっていうことになるんだったら……。

(南部広美)ああ、今回の件でテレビは取られてられるけどラジオは……っていう話ですか?

(荻上チキ)「ラジオはないということは、なんだろう? なにが言いたかったんだろう?」みたいな気持ちもね。

(南部広美)まあ時期の問題もあるかもしれないですね。

(荻上チキ)振り返って思い出しますよね。ああ、そうか。選挙期間だと党の方でやっているっていうこと?

(南部広美)今の、このコロナの時期はそうだったっていうことかもしれないし。わからない。全部見たわけじゃないわけですよね。

(荻上チキ)なるほど。その可能性は考えてなかった。でも、そうかもしれないね。という報道が出て。面白い記事なんで、ぜひ読んでください。Twitterとかnoteでも公開されているので。「WADA」さんという方なので。面白いので、ぜひ見てください。

WADAさんTwitter・noteアカウント

(荻上チキ)それで見た上で、単にやいやい面白がってるだけではなくて、それはいかなる効果を発揮するのかということと、それを政治がどのように使うことが適切なのかどうかということ。あるいは今の政権がどう使うかということだけではなくて、別の政権が別の仕方でもこういったものというのは使うるので。

(南部広美)そうですね。「仕組みがある」ということですからね。

(荻上チキ)仕組みがあるということは、善用も悪用もできるということ。よくも悪くも使えるということでもある。その意味について私たちはやっぱり考えなくてはいけない。あとはまあ、やっぱり情報公開請求で大事だなってつくづく思いました。今年に入ってちょっと情報公開請求、少しサボってたんですけど。いろいろちょっとやってみようかなみたいな気持ちもわいてきまして。何か出てきたらまた取り上げられたらなという風には思ったりしますけれどもね。

<書き起こしおわり>

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