WeVote ウィボート 新世紀の選挙システム | アディクトリポート

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真実をリポート Addictoe Report

 

アメリカの大統領選挙で不正が取り沙汰されるも、

 

悪事はシナリオがあって進んでいるため、

そのシナリオに沿っているメディアは真実を報じず、

虚偽を触れ回ることに腐心している。

 

このカラクリはどこも同じで、

本当に目にしておくべき情報は隠され、

ふれても何の得にもならないどころか、

迷惑や被害が広がるばかりのものが流布される。

 

こうなると、本当に人々に訴えたいことがある人は遮られ続け、

心の声が誰にも届かない。

その状況を打破するには、

捨て身の奇襲攻撃をしかけるしかない。

 

映画『いま、会いにゆきます』(2004)

『ただ、君を愛してる』(2006)

『そのときは彼によろしく』(2007)

原作の市川拓司

 

出版社に就職するが3か月で退職(本人いわく、ぶち壊し)、バイクで日本一周の旅に出る。2年間フリーターをした後、少人数で働く税理士事務所に14年に渡って勤める。その頃から妻のためにと小説を書き始め、1997年からはインターネット上で多数の作品を発表していた。ミステリー作家としてのデビューを目指していたこともあり、サントリーミステリー大賞鮎川哲也賞創元推理短編賞に応募した経験がある(小説を書き始めたことについては、後に振り返って、もっと深い無意識の動機があったかもしれないと述べている)。

ネット小説が注目され、2002年に『Separation』でデビュー、同作品は『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』としてテレビドラマ化される。

 

映画『さくら』(公開中)

 

原作者、西加奈子がしかけたように。

 

大阪に住んでいた頃からひそかに小説を書いては一人で悦に入っていたが、人に読ませたところ「技術はあるけど感情が無い」と言われ、「書きたくなるまで感情を溜めないとだめだ」と勧められるまま半年ほど断筆、その後に閃いたイメージから猛烈な勢いで一気に書き上げたのが『あおい』である。この作品に西はいたく愛着が湧き、「活字にせな」と思い立ち、いくつも仕事を掛け持ちして上京資金を貯め、「全部捨てんとアカン」とそれまでの大阪生活の全てを投げうって身一つで東京に移り住んだ。『あおい』は程なくして『世界の中心で、愛をさけぶ』の編集者の目にとまって出版にこぎつけ、西は文壇デビューを果たした。

 

 

というわけで、私も一つやってみようかなと。

 

以下のショートショートは、

昨年の某賞に応募したもので、

条件は、

  • 文字数制限
  • 実在の人物や団体を出さない
——だった。
 
作品を応募する時は常に、自作には絶対の自信がある。
それがなければ、無駄なので応募しない。
 
なのに毎回ことごとく選に漏れ、
では受賞作がいかほどかと読んでみても、
「どうして受賞?」と納得いかず、
案の定、その受賞作は世間に評価されず鳴かず飛ばずの場合が多い。
 
というわけで、
2019年7月8日付けの短編、
まあ読んで下さいよ。
 

 

WeVote ウィボート 新世紀の選挙システム

 

2019/7/8 武田真純

 

その年のラフランス社の新製品発表会は衝撃だった。

創業者のステファン・アンプロア(Stephen Emplois)が2011年に急逝、後任のチムチ・キュイジニエ(Timothée Cuisinier)が業績悪化で退任し、同社初の女性CEO、ロレン=プウェル・アンプロア(Laurene Powell Emplois)が初めて壇上で発表したのが、WeVote(ウィヴォート)だった。

 

 これは不正操作の可能性を徹底排除した最も公正な最先端ネット投票方式で、全世界のどの選挙にも使用可能だという。

指定投票日に世界のどこにいようと、投票所に足を運ばずに、ケータイ、スマホ、テレビを含むあらゆるネット端末から投票が可能。これにより不正選挙の要因と疑われる期日前投票が必要なくなり、投票所に足を運ばなくてもいいので棄権される可能性も格段に減る。

個人認証は、選挙区ごとに発行されるID登録とパスワードによるログインに加え、ラフランス社のスマホWeSmart(ウイスマート)が採用している指紋認証や顔識別も併用され、しかも認証は多段階方式を経るため別人や自動プログラム攻撃によるなりすましは不可能。暗号化技術で個人情報は守られるが、一票の重みを重視して投票の結果への反映は投票者が自分で後日いつでも追跡確認が可能になっており、この検証機構は同時に、不正操作が試みられば直ちに発覚する警告装置の役目も兼ねている。

データのすり替えは常時チェックできるし、記録は永久保存のため票の消失や行方不明も防げる。不正アクセスが発覚すればデータベースのログと照合して、ハッキングや改竄操作の日時と犯人のIPアドレスも即座に特定できる。

また不正選挙には証拠隠滅のために記録の破棄がつきもののため、ネット操作に不慣れな高齢者向けに従来どおり用意される投票所での選挙でも、保存にかさばり処理に手間取る投票用紙は廃止し、端末に表示された候補者を選ぶ方式に変更するため、書き損じや無効の白紙投票も防げる。現場では候補者を誰も選ばなければ棄権とみなされ、それが投票者の真の意志なのかを操作端末から確認されるので、うっかり棄権の白紙投票も一掃される。

 

 この発表は全世界で大変な反響を呼び、ロレン=プウェル女史は後日、場所を改めて、世界各国のマスコミ向けに追加の記者会見を行い、本システムの提案動機を改めて説明した。

 

 その動機説明の前に提案者の経歴を記しておけば、社名からも明白なフランス発祥のラフランス社は、創業者のステファン・アンプロア氏が、コンピュータ・テクノロジーとインターネットが人々の生活をより良きものにするという理念のもと、デジタル音楽配信のWeTones(ウイトーンズ)、再生用の携帯音楽プレイヤーWeStick(ウイスティック)、WeStickとスマートフォンを融合させたWeSmart、WeSmartとノートPCの中間的タブレット端末WeTab(ウイタブ)等々のデジタル機器ハード群と、連携するバートレットWeOS(ウイオーエス)、ネットアプリ、ラフランスApp(アップ)等のソフト群で、自国フランスのみならず世界市場を席巻した。

 しかしステファン氏は原因不明の難病で数年の闘病虚しく2011年に没し、生前から事業引継の打ち合わせを重ねていた上級幹部のチムチ・キュイジニエ氏がCEO(最高経営責任者)に交代したが、このキュイジニエ氏が曲者だった。

自分には創業者のアンプロア氏ほどの才覚がないことなど重々承知のキュイジニエは、自分の地位の安定と、ラフランス社資本の私物化に走ってしまった。彼はCEOに就任たちまち、自分のラフランス社の持ち株をさっさと売りはらい、会社機構も変更して、なにか会社に落ち度があっても、自分だけは引責辞任に追い込まれない体制を固めてしまった。

 かくしてキュイジニエ新体制ではアンプロア時代のような画期的なデバイスもソフトもシステムも発表されず、ユーザーの利便性よりラフランス社の収益が優先されてしまい、ハードもソフトもシステム使用料も値上げが続いた。

 キュイジニエ時代の末期は、ラフランス独自仕様のPCバートレットは高額商品となったうえに機器の初期不良や不具合が絶えず、ライバルの安価な世界標準PCレフネートルに大きく水をあけられて業績は下る一方、株価も低迷し、これではさすがにキュイジニエ氏を解任するしかなくなった。なぜならラフランス社の業績不振の原因は、キュイジニエ氏の采配や方針以外に考えられないからだ。

 しかし社内綱領は改変され、キュイジニエは死ぬまでCEOに居座れるようになってしまっている。そこで幹部社員が団結して造反を起こし、キュイジニエを買収企業のインサイダー取引で告発、後任にアンプロア氏の実娘で、イメルソン財団という慈善社会団体の代表だった、ロレン=プウェル・アンプロアが担ぎ出された。

社員幹部が造反を決起したのは、キュイジニエを追い出すのに成功しても、では誰が後任につくのかという超難題に、創始者ステファンの実娘が別財団の代表を務め、地味ながら社会に広く貢献する業績を着実におさめているロレン=プウェルという答が見つかったからでもあった。

 

 こうした就任の経緯もあって、ロレン=プウェル女史のラフランス社再生計画は、第一に、父ステファンの時代の、ユーザー本位のサービス提供の復活、第二に、キュイジーヌCEO時代の暗黒体制の払拭、第三に、自分がイメルソン財団で取り組んでいた慈善活動とラフランス社の事業の融合だった。

 

 ロレン=プウェルはしかし、キュイジニエ氏と同様に、さすがに父ステファンほどの才覚はないので、WeStickやWeSmartやWeTabのようなハード開発も、WeTonesやラフランスAppのようなソフトも供給できそうもなかった。

ロレン=プウェル・アンプロアはまた、キュイジニエ氏のような無能者が社長に居座った反省から、めざましい業績を上げなければ自分が解任されることはやぶさかではないが、ならば腹をくくっていつクビになるかなんかにビクビクせずに、いっそ大勝負に打って出て、私欲を満たすような姑息な業績ではなく、かつての父のように、できるだけ多くの人々を幸せにする究極のものをめざすべきだと考えた。

そこで従来のラフランス社と同じ路線から訣別して新規の市場を探り、21世紀のデジタル/ネット時代ならではの、民意が100%反映される人類史上最も公正な選挙システムを提案したというわけである。

 ロレン嬢は全世界対象の記者会見で、自社の停滞や凋落への反省と、市民革命で民主主義を勝ち取ったフランス人ならではの発想だからこそ開発できたWeVoteこそ、全世界の政治の矛盾を解決し、全地球市民によりよい未来を与えるもので、システム導入に反対する国は、独裁政治に直結する不正選挙を認めているに等しいとまで豪語した。

 

 だが各国はこの発表に困り果てた。なぜならラフランス社の前任者キュイジニエ氏の思考パターンと、権力の座を手に入れた政治家たちは似通っており、自己保身や自己の利益追求のためには必須の長期安定政権を維持するに限ると考えているし、それを可能にする不正選挙の横行も常態化しており、そもそも権力者がその座についたのは不正選挙があったからこそだったりもしたからだ。

 

 果たしてこの提案に早速飛びついた国は、従来と選挙結果が大方一致しており、それまでの選挙の公平性や正確さ、民意の選挙への反映度があらためて証明された。ラフランス社の生誕地のフランスを始め、ドイツ等何カ国かでの新システムのたちまちの導入と成功を機に、ロレン=プウェル氏は追加の公式声明を出し、WeVoteの全世界へのくまない普及を促した。

 ロレン=プウェル氏は、誤解と偏見を説くために改めて言及すれば、システム使用料は元来無料なのだと真っ先に宣言した。その理由は、有料だと予算不足を口実に導入を拒否されかねないし、またWeVoteが単独のシステムではなく、自社ラフランスのハードとソフト、インターネットと不可分なので開発料金の単独算定がむずかしく、また公平性が要求される選挙で私企業が稼いでしまえば、必ず社内に不正操作の不穏な動きが生じかねないからとのことだった。そもそもバートレットWeOS(ウイオーエス)もネットアプリのラフランスApp(アップ)も、基本的には無料だという大前提もあった。

 では私企業がなぜ、儲けにもならない選挙システムを売り込むのかという記者の問いかけには、ロレン=プウェル氏はこう答えた。

「多くの基本OSと同様、WeVoteは開発途上であって最終バージョンではありません。基本OSでも更新のたびに、セキュリティの脆弱性を指摘され、アップデートでパッチを充てて修復という手続を取ってきました。システム開発者とは異なる思考パターンの、悪意を抱いたハッカーの攻撃は予測出来ないから、このやり方はやむをえずそうするしかなく、最初から完全無欠なシステムはありえません」

 ロレン=プウェル氏のWeVoteにまつわる会見は今回で3度目と言うこともあり、論旨は明確で語り口もスムーズ、まさに立て板に水で、ネット中継動画の視聴者数はうなぎ登りだ。

 だがWeVoteが自国の選挙に不都合な、つまり不正選挙が横行している国々の政府は、国民には絶対に聴かれたくないロレン=プウェル氏の会見を、これまでの2回もやすやすと視聴されて煮え湯を飲まされてきただけに、今回ばかりは対策を講じてきた。中継の冒頭からアクセス不可になっていた国もあれば、途中から見られなくなった国もあり、同じIPアドレスから集中的なアクセスをラフランス社のサイトにDoS攻撃しておきながら、言い訳はアクセスの過度な集中で回線がパンクしたという、皮肉にも不正選挙と同じくいかにも時代遅れのものだった。そんな事態をつゆ知らず、ロレン=プウェル氏のスピーチにはますます脂が乗ってきた。

「一方で従来の選挙システムは、悪意のあるものに作り替えられていても、改善されずにそのまま使われ続けています。私はそういう不正の無いフランスに生まれ育って幸いでしたが、ラフランス社が世界企業になり、父ステファンの頃よりとっくに講演や会見は英語でスピーチしているグローバリズムの時代に、選挙制度だけが国際標準化せず、多くのユーザーが投票権や参政権を奪われ続けている現状を激しく憂います」

 ロレン=プウェルはここで大きく一息ついた。1回目の発表会でいいそびれ、2回目の記者会見でもふれられず、ここにようやく、WeVoteに託した理念を語ることができたのだ。

 だがあいにく、これを本当に聞いて欲しい国の人たちには届いていないわけだが、それを知らずにロレン=プウェルは続ける。

「近代化とはなんでしょう。それは理屈の通る世界、科学的整合性がきちんと取れていて、不合理なことが通用しない世界になることで、それを徹底するには理系の頭で物事を辻褄が合うように考えることです」

 ロレン=プウェルはここで大きく頷いた。これもまた、彼女が訴えたかったことなのだ。

「ところが政治の世界だけは、非合理的で文明以前のしきたりや慣習が依然とはびこる状態が、世界のあちこちで近代文明以前のままで続いています。

いつまで続けるのでしょうか。もう21世紀も5分の一が経過してしまいました。でもまさか、22世紀になっても政治の世界だけ旧世紀のままなんてわけないでしょう?」

 記者や聴衆の誰もがしきりにうなずき、自国への思いを馳せている。

「ではいつ変えるのか。インターネットが一般家庭にも普及し始めた1995年にはすでに環境は整っており、手段としては今ならWeVoteがあります」

 ロレン=プウェルはいよいよ、結びの言葉に入る構えだ。

「不正選挙とはまだ言葉が穏便ですが、つきつめれば普通選挙で票を投じた選挙民をだまし欺く、悪質きわまりない詐欺犯罪行為です。そのからくりが見抜けた私が、世界中の人たちに愛されているサービスを提供するかたわら、同じユーザーが苦しみ続けている現状を、自分の国ではないから知りませんと放置してしまうのは、ユーザーへの裏切り行為だと思います」

 会場はしばらく沈黙し、ロレン=プウェルの言葉に耳を傾けていたが、ここまで言い終えると自然に拍手と歓声が巻き起こり、会場全体が包まれた。

 そしてこの会見がとどめとなり、WeVoteの導入が更にいっそう進みはしたが、頑なに拒む国もいくつかあり、それはすなわち、不正選挙が横行している形だけの民主主義国家だと誰にも容易に見透かされてしまった。

 そうした国では市民デモや暴動も起きたが、それがWeVoteの導入につながった国はまれである。

 

 さて、これをお読みのあなたの国は、WeVoteを導入したでしょうか?

(この項終わり)