最近やにわにTwitterで流行り始めた本著。
表紙のインパクトのお陰か二次創作絵まで流行り始める始末。
流行りものには飛びつくので読んだ。
光文社 (2017-05-17)
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流行のきっかけはこのツイート?
読み始めて2ページでこの情報量で、しかも奇をてらった出オチ本じゃないんだからすごいですよね。 pic.twitter.com/lM78YToeqX
— 井上篤史 (@bezieer) January 15, 2020
ご本人のTwitter
皆さまからのあたたかい応援の賜物です! ありがとうございましたー!! https://t.co/0WXHZOjUh5
— 前野ウルド浩太郎 (@otokomaeno175) November 15, 2018
まず、この本は論文ではない。
Amazon低評価レビューを拝見するとアカデミックな内容を期待して読んだら何の研究成果もなかったとあるが良くも悪くもその通りの本。
時間と金を持って海外に行けば誰もが大成果を得られるわけではない。
「バッタを研究しにアフリカへ行ったのに60年に一度の大干ばつでバッタが居ない」
これが現実。
わたしがこの本を読んで驚いたのは我が国での”博士”や”学者”というものの立場の弱さ。
大学・大学院を出て研究室に通い博士号まで取った人間に対する扱いがこんなものなのかと唖然とした。
4年制大学を卒業して就職する人なら22歳で給料を貰い始め親に初任給でプレゼントしたり自立する。
日本の制度では博士号を取れるのは最短27歳。
世間から見たら「27歳職歴ナシ」!!!!
それでも博士号を取得した後年収1000万円以上の将来が約束されているなら問題ないが、勿論そんなに甘くはない。
博士号を取得した後は「ポスドク」という立場となり、この本はポスドクである著者の立場で書かれている。
ポスドク…1年契約の我々一般社会で例えると契約社員みたいなもん。
それも最長5年までしかこの立場では居られない。5年後には無職。
5年後に「職歴ナシ32歳無職」となるか、研究所に就職を決めて「学者」になれるのか。
就職を決めるにはとにかく論文を書いて発表するしかない。
論文を書くためにイチかバチかアフリカに行こう!そんな人生を賭けた1人のポスドクの物語。
わたしは東アフリカのケニアで育ったが西アフリカには行ったことがない。
「モーリタニアと言えばタコ」ぐらいの知識しか無いため、習慣や日常生活ネタも楽しく読めた。
前半2/3はモーリタニアでの研究生活のエッセイ、後半1/3は2年間の任期を終えいよいよ無収入となった著者がバッタ研究の大切さを日本で訴えるためにイベントに参加したり、京都大学に就職が決まり無事研究が続けられるようになったりといったこれまた”昆虫学者”となるための努力が綴られている。
読者は著者の並々ならぬバッタへの情熱を魅せつけられいつしか応援しながらページを進め合格シーンでは我がことのように泣いて喜んでしまうに違いない。
研究成果はきっと論文のほうにまとめられているのだろう。
バッタについて知りたい人はそちらを読めということだ。
本著は「将来の夢は偉い学者さんになることです」とか言っている孫悟飯に読ませたい。
是非、小学校の図書室に置いて「ファーブル昆虫記の次はバッタを倒しにアフリカへを読むべし」と強制抱き合わせで貸し出しして欲しい1冊。
タイムリーなニュースが入ってきたので、こういう事情を知ってから読むとより理解できる。
数億匹のバッタの群れ、ケニア荒らす 過去70年で最大:朝日新聞デジタル https://t.co/8cJSjVX2mc
— 尾園 暁 (@PhotomboOzono) January 29, 2020