ごきげんよう♪
映画のアクションシーンを食い入るように見ていたら、
「手に汗握って見てる……」と夫にニヤニヤされました。きりんです。
気付いたら、片手が親指を握り込むタイプのグーになってた。そして手のひらがちょびっと汗ばんでた。
まさに手に汗握っておりました。
(もう一方の手には缶ビールを握りしめていた)
さて。
先日お買い物に行ったときのお話。
それは風の強い、しかしジメジメとした昼下がりでした。
コンビニの角を曲がり、
塀の向こうの立派なお庭に並び立つ樹々の黒々とした木陰の下に差し掛かったときのこと。
前方から、可愛らしい少年が「すいませ〜ん」と声を上げながら小走りに駆け寄ってきたのです。
歳の頃なら5〜6歳くらいでしょうか。
淡いグレーと黄色のボーダー柄のTシャツに、カラシ色の半ズボン。
クリクリとした目、柔らかそうで綺麗な髪が印象的なお子さんです。
その見知らぬ少年は私の前で立ち止まると、無邪気に言ったのです。
「僕のお兄ちゃん見ませんでしたか?」
正直、戸惑いました。
え? 君、誰? 君が誰か知らないのに、君のお兄ちゃんを私が知ってるわけないよね?
それとももしや、私は君を知っていて然るべきであるけれども、ポンコツな私が忘れているだけなの?
もしくは君の知り合いの大人の人と見間違えているのか?
……そんなような事が一瞬にして脳裏を駆け巡りましたが、そこは大人なワタクシです。平静を装い問いました。
「えっと、お兄ちゃんは今日、どんな服…どんな恰好してた?」
お兄ちゃんは知らないけれど、もし見かけていたら服装でわかるかもと思ったのです。
少年は小首をかしげ、僅かに悩む様子を見せましたが、自分自身を指差して言いました。
「う〜ん、こんな恰好!」
その瞬間、何故か背中に嫌な汗が滲みました。
(これ、ホラーの始まりかなにか?)
強風が髪を乱し服をたなびかせますが、背中に滲んだ汗はじっとりと湿ったままです。
少し先の交差点、右手にはお寺が。そしてその先には小学校……
「大好きなお兄ちゃんのお下がりを着せて貰い、お兄ちゃんに見せようと大喜びで近所を探しまわっているうちに車に轢かれ亡くなった少年が今もお兄ちゃんを探して彷徨っている」
……みたいな妄想が一瞬で浮かんでしまい………
しかしそこは大人なワタクシ。
多少うわずった声ながらも、「うーん、見かけなかったかなぁ」と返しました。
少年は元気に「ありがとうございました!」と言い、私の脇をすり抜け走り去ったのでした。
うん。
普通に元気な、人なつっこくも礼儀正しい少年でした。
でもね、一瞬ホントにゾワってしたのよ。
生温い風とか、薄暗い路地の鬱蒼と茂った樹々の影とか、お寺とか………妄想が暴走しちゃってね。振り向く事も出来ず、足早にその場を離れてしまったわ。
変な妄想しちゃってほんとうにゴメンよ、可愛らしい少年。
(マジで失礼極まりないわよね)
あの後、無事にお兄ちゃんに会えたかしら。
帰りに同じ道を通り少年の姿を探しましたが、見当たりませんでした