監督 ヨルゴス・ランティモス
脚本 デボラ・ディヴィス、トニー・マクナマラ
撮影 ロビー・ライアン
編集 ヨルゴス・モウロブサリディス
出演 オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト
2018年度作品 製作国 アイルランドアメリカ/イギリス 上映時間 120分
絶対的な権力を持つ女王陛下に仕える二人の女が、権謀術数を駆使して女王の愛を
独占しようと張り合う姿を描いた本作は、「籠の中の乙女」「ロブスター」等奇抜な作風で
知られるヨルゴス・ランディモス監督が描いた不条理劇です。
本作の見どころは、女王陛下役オリヴィア・コールマン(アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞)、
女王を陰で操る側近役レイチェル・ワイズ、女王からの関心を引くために策略を駆使して、
女中から上級の地位へ這いあがっていく没落貴族の娘役エマ・ストーンが、
善と悪、理性と本性、強かさと弱さ(ジェラシー)等人間の持つ表裏一体の感情を複雑に
絡め合わせて表現するという難役に応える鬼気迫る演技で、ありきたりな勧善懲悪物とは
一線を画す人間ドラマへと昇華するのに貢献しています。
ストーリーはシンプルで分かりやすく、監督の過去の作品に比べて毒が薄められて、
エンターテインメント性の高い作品に仕上がっていますが、レビューの評価を見ると、
ドロドロ具合が物足りないという意見と不快だという意見が均衡していて、大衆芸術である
映画作りの難しさを考えさせられます。
アカデミー賞では最多の10部門にノミネートされて、ハリウッド資本の次回作オファーが
あると思いますが、映画作家としてのプライドを保ったまま、興行を意識した映画作りが
出来るのかが、彼の今後の課題であることは間違いありません。