190219 がんおはようございます。
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いつもブログを見ていただきありがとうございます。

今回の書籍の紹介はコレです。

NHKスペシャル取材班『がん治療革命の衝撃―プレシジョン・メディシンとは何か』(NHK出版,2017) 780円(税別)



この書籍をサクッというと


従来の抗がん剤ではなく、遺伝子解析によるがん治療(分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤)について取材した1冊です。


目次


はじめに―今後五年で劇的に変わる、がん治療新時代
第一章  肺がん患者に、甲状腺がんの特効薬?
第二章  プレシジョン・メディシンという革命
第三章  プレシジョン・メディシン、その光と影
第四章  独自路線を模索する医療機関
第五章  次世代がん治療と、その近未来
おわりに―充実した人生を送るための、医療の発展をみつめて


プレシジョン・メディシンとは?


今回紹介する書籍のテーマは「遺伝子解析によるがん治療」についてです。

従来型の抗がん剤治療では、「肺がんだったらこの薬」というように臓器ごとに治療法や薬が定められていました。
ところががん治療の最前線では、がんを起こしている遺伝子ごとにがんを分類、治療をするようになってきています。
例えば甲状腺がんの薬が、一部の肺がんに効くといったことです。

がん細胞の遺伝子を解析し、その結果をもとに行われる治療は「プレシジョン・メディシン(精密医療)」と呼ばれています。
当書籍はプレシジョン・メディシンの具体的事例として、従来型の抗がん剤ではなく、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤にフォーカスした内容です。


従来型の抗がん剤治療との違い


従来型の抗がん剤とは?


従来型の抗がん剤は、分裂の盛んな細胞のDNAの複製などを阻害し、がんの増殖に歯止めをかけるもの。

従来型の抗がん剤の多くは、「正常な細胞を傷つける物質」の研究成果をもとにして開発されているため、がん細胞と正常細胞を区別することが難しいのです。

そのため増殖の盛んな細胞すべてを攻撃する性質があり、がん細胞だけでなく、正常細胞まで攻撃してしまいます。
結果、吐き気やだるさ、食欲不振、脱毛、手足のしびれなどの副作用の原因となっているのです。

分子標的薬とは?


分子標的薬は、がん細胞が持つ「分子」を「標的」にしてがんを攻撃します。
「分子」とは、主にがん細胞の異常増殖を促している異常タンパク質です。
分子標的薬は分子と結合して、がん細胞の働きを抑え込み、増殖を止めます。

分子標的薬はがん細胞の持つ分子をピンポイントで狙い撃ちにするため、正常細胞への作用は限定的。
そのため従来型の抗がん剤に比べ、副作用は少ないと考えられています。

加えて、がん細胞を増殖させている分子に合う分子標的薬を使用するため、事前に効果が期待できるかの予想がつくメリットも。

現在、日本で健康保険適用になっている分子標的薬は約50種類。海外も含めると約80種類が承認。
現在は数百種類もの新たな分子標的薬について世界中で臨床研究が行われています。

免疫チェックポイント阻害剤とは?


免疫チェックポイント阻害剤は、2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞することとなったがん免疫治療薬「オプジーボ」が代表的なもの。

通常、免疫細胞はがん細胞を攻撃します。
ところが免疫細胞に攻撃され続けるがん細胞は、次第にその攻撃を逃れる仕組みを備えていきます。

免疫細胞には、免疫細胞が暴走したり、自分の身体を攻撃したりしないように攻撃を止める「ブレーキボタン」のような機能があるのです。
免疫細胞の攻撃から生き残ったがん細胞は、この免疫細胞のブレーキボタンを押すことができます。
結果、免疫細胞の攻撃を無力化し、がん細胞は増殖、進行していくのです。

免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞が持つブレーキボタンをがん細胞から守る働きがあります。
これを投与することで、がん細胞はブレーキボタンを押すことができません。
そのため、免疫細胞の攻撃力が復活し、がん細胞を攻撃します。

免疫チェックポイント阻害剤が優れているのは、副作用が少なく、効き目が長く持続することです。


プレシジョン・メディシンの課題点


従来型の抗がん剤に比べ、副作用が少なく、効果を見込めるプレシジョン・メディシンですが、課題点もあります。

自費や臨床試験に頼らざるを得ない


現在、医薬品として承認されている臓器以外では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤は使用ができません。

それも「標準治療」を受け、それが効かなかった患者さんに限定されるなど、誰もがその治療を受けられるわけではありません。

従来型の抗がん剤は臓器別に開発されていたため、プレシジョン・メディシンのように遺伝子で投与できるかどうかを判断するという考え方にはなっていないのです。

承認されていない他の臓器でこれらを使用するためには自費での治療か、臨床試験に参加するしかありません。

自費治療の場合、遺伝子検査の費用だけで数十万円から数百万円。
治療費もすべて自費です。
例えば、「アフィニトール」という乳がんや腎細胞がん対象の抗がん剤を、他の臓器で使用する場合、1カ月90万円くらい掛かり、ガンが小さくなったり、消えたりするまで続きます。

臨床試験の場合、国立がん研究センター東病院を中心に、全国約250の医療機関と17の製薬会社が共同で取り組む「SCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)」に参加することや、大学病院の研究に参加することなどが代表的です。

ただしここでも課題点が大きく2つあります。
1つは「SCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)」の場合、その参加条件に適合していなければ参加できません。
参加できたとしても臨床試験が終了すれば、その抗がん剤は投与終了となります。

加えて臨床試験は製薬会社主導の場合、薬や交通費、入院費も支給されるケースが多い。
一方、医師主導の場合、薬の費用は掛かりませんが、交通費、入院費が患者さんの健康保険で支払うことになるのです。

耐性ができてしまう


分子標的薬は従来型の抗がん剤に比べて、副作用が少ないというのが大きな特徴です。
しかし、従来型の抗がん剤同様に継続して使用することで、がん細胞が耐性を獲得してしまいます。
結果、従来型の抗がん剤よりも効果があるとされている分子標的薬も徐々に効果が減少していくのです。


このように分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤は、今後の抗がん治療に大きな変化をもたらす最先端医療ですが、一方で課題もあることが分かります。
ただ従来の治療法では、完治が難しかった患者さんにとっては、副作用が少なく、QOLも高い分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤は「希望」だと思いました。


まとめ


当書籍から分かったことは以下のようなことです。
 1.分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といったプレシジョン・メディシンは
  臓器別に治療を行う従来の治療法とは異なり、遺伝子に着目することで
  治療成果を上げています。
 2.健康保険適用外の場合、現段階では自費治療か、臨床試験に参加することで
  プレシジョン・メディシンの治療ができます。
 3.自費治療の場合、その金額は月額数十万円に達し、患者さんが全額負担します。
  また、分子標的薬は使い続けることで従来型の抗がん剤同様にがん細胞に
  耐性ができ効果が減少していく課題もあります。


プレシジョン・メディシンの希望の面だけでなく、課題点も浮き彫りにした内容は、偏りが少なくバランスが取れています。
臨床試験を受ければ、がんの縮小も一定の確率であるので、がん治療を行っている人は読んでみてはいかがでしょうか?


ランキング評価
読みやすさ  3
情報量    4
情報質    4
価格     3
と言うことで「★★★」です。


次回も見に来てくれると嬉しいです。


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