p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

金融・経済・経営の幅広い分析をお届けします。身近な路地裏経済から陰謀渦巻く国際戦略まで、様々なハナシをお楽しみ下さい。

言葉の高い“壁”

2019-03-18 00:00:00 | 企業・産業
日経新聞が先日(3/14)、医療データのネットワーク化が進まない現状をとりあげました。
その記事の中で“あれ?”と思ったのが、電子カルテの普及率。
記事中で“3割台”とされるその数字、ワタシはもうちょっと↑だと認識していましたし、少なくとも大本営発表ではそうなっています。
まぁ、決定的なほど大きな差というワケではありませんけどネ。

2000年から2006年にかけてワタシが最初の会社で未上場企業調査を担当していた頃、主な担当分野はいわゆる“IT系”とされる中で何かを作る企業。
コンピュータシステムを作るSIerやソフトハウスもその範疇で、電子カルテもその中に含まれていました。
で、数社の電子カルテベンチャーを評価させて頂いたのですが、結局のところ、ワタシがそれら企業に高い評価を下すことはありませんでした。
というのも、その普及には、高い“壁”があると認識していたからです。

電子カルテは一種のデータベースシステムです。その“核”となるのは病名/症名データベース。
データベースは多数のデータを蓄積するもの。それを意味あるものにするためには、呼称の統一が重要な要素です。
ところが、その病名/症名の把握は、一意に定まらないのですネ。
“Karte”がそもそもドイツ語であるように、日本の医療はドイツからの影響を大きく受けてきました。
病名をカルテ(紙ベース)に記述するにあたって、ドイツ語で書き込む医師も少なからずいました。最近ではそれが少数派となったコトが指摘されていますが、その代わりとなったのが日本語と英語。
ただでさえ三言語でバラバラなのに、疾患の状況によって記述が異なってきます。それを統一するのは、ベンチャー企業にとっては高い“壁”だと思ったのですネ。
ベンチャーのみならず大手を含めてもソレを打破する企業が現在に至るまで現れていないコトが、電子カルテの普及率が高くはない状況に繋がっているのだと、ワタシは考えます。

この“名前”の問題は、実は我々金融セクターのニンゲンにとっても他人事ではなかったりします。
同一の金融商品でも、販売機関が異なると、それ毎に違う“名前”が付けられることがあります。
で、販売機関が合併したり、古い金融商品が手数料引き下げなどで“衣替え”したりで、“名前”が変わったり無くなったりするコトが、結構あったりするワケです。
金融商品名を扱う事務作業の際にソレに当たって、「えぇい面倒くさい」という思いをするコトも、少なくありません。

…という余談はさておき、ハナシを医療関連に戻しましょう。
日経新聞の記事では医療データのネットワーク化が遅れている要因を、医療機関の閉鎖性に求めていました。
ソレは大きな要因だと思いますが、今も打破されない言葉の“壁”も大きな要因ではないかと、ワタシは思います。
これを国が解決しようとするなら、長く続けられている“言葉”の統一に向けた努力を、国として強力に後押しする必要があろうかと思います。

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