2020年からの学習指導要領改訂で重視されるのが、考える力とプレゼンテーションなどのアウトプットする力です。
小学生に映画を見せて、どこが面白かったかという感想文を書いてもらったところ、惨憺たる結果でした。
まずは、「書けない~」「何書いていいかわからない!」と言い出す子が20%くらい。
数行以内しか書けない子が40%くらい。
面白ポイントを列挙しただけで、理由やどんな風に面白かったかを書けた子は10人に1人いるかどうか。
高校や大学入試で小論文が書けない生徒が増えているという話をよく聞きます。
実は、このアウトプットする力の不足は、もう十年以上も前から言われていて、問題視されていました。
それによって、ゆとり教育の修正が意図されて、考える力・生きる力を養うとされたのです。
しかし、十年たってみたら、その成果が出ていなかったというわけです。
なんとも残念な結果です。
その間に、学校で学んだ子どもたちは、時間を取り戻すことができません。
この問題は、簡単に言ったら、子どもたちの経験不足によるものだと思います。
アウトプットする機会が少なかったから、できるようにならなかった。
ただ、それだけのことです。
子どもが意見を聞かれて来なかったから意見が述べられないし、作文の機会も少なかったから書けるようにならない。
羊自身の経験を少し披露します。
昔の典型的なインプット教育で小・中・高校を過ごしました。
大学生時代には、学会誌に論文を発表したり、卒業論文を書きましたが、これは工学の論文だったから、実験方法とデータのまとめを掲載すればよく、それほど大変ではなかったです。
ところが、社会人になると、例えば稟議書などというものがあるわけです。
購入したい測定器があって、それはどんな目的で、そのように役に立つのかを、決裁者に納得してもらえるように書かなくてはならないのですから。
当時は、手書きの時代でしたからコピペはできず、先輩の書いた決裁願いを参考にして、何度も書き直しをしたわけです。
出張報告書にしても同様です。
そこで、書くトレーニングを初めてしたようなものでした。
ある程度の量を書くと、お手本がなくても自分で書けるようになるものです。
子どもたちも同じです。
たくさん書けば早く楽に書けるようになるし、何度も発表すればプレゼンもうまくなります。
そうそう、少し前ですが、こういうご家庭がありました。
誕生日プレゼントに何を買ってもらいたいかを、親に説明(つまりプレゼン)して、認めてもらえたら買ってもらえるというのです。
なるほど、それも一つの家庭教育だなと感心したものです。
プレゼンするとなれば、本当に欲しいものはなにかをじっくり考えることになり、無駄なものは買わなくなります。
その上、毎年続けることで説明能力が向上するのですから。
お子さんが、なにか要求を述べて来たときに、理由を聞いてみることが、アウトプットの第一歩になるのではないでしょうか。
寺子屋でも、こんなやりとりをしています。
子「先生、倉庫」
私「倉庫がどうしたの?」
子「キックボード」
私「キックボードがどうしたの?」
子「出す」
私「何を?」
子「倉庫からキックボードを出す」
私「出してどうするの?」
子「倉庫からキックボードを出して遊んでいいですか?」
私「はい、いいです。鍵を開けるからちょっと待ってね。」
常連さんは、何度も同じやり取りをやっているので、最初からちゃんとお願いできるようになっています。
上のようなやりとりがなくても、自分の希望が言えないために、やりたいことをガマンしている子が少なからずいます。
アウトプットする力があれば、堂々とお願いすることができます。
今の子は、このお願いが苦手だと思います。
それは、お願いしなくても、やってもらえることが多いからではないでしょうか。
子どもの言いたいことを汲み取って、やってしまうことが子どもの能力が伸びる機会を奪っているのかもしれません。
子どもの先回りをしないで、最後まで言わせることが、自分で言える子を作るのだと思います。(羊)