目 次
ABU5600UCの修理依頼の受領
今回はここ北海道から遠く山形県のユーザー様から修理の依頼を受けましたので、ご紹介したいと思います。
親族からの譲り物として受け取ったらしいのですが、どうも状態が悪くこのまま使用することが出来なくてお困りの様子でした。
私はリールの修理やメンテナンスのプロではないので保証は出来ませんが、ABUのアンバサダー系はオールドも含めてメンテナンスの経験がありますので、ある程度の機能回復は出来ると思いますよ。と、依頼を引き受けた次第であります。
では早速品物が届きましたので、まずは外観と機能状態を確認したいと思います。
アンバサダー5600の外観と機能の点検
外観の汚れは多少ありますが、大きな損傷などは無く、問題ないように見えましたが、
おや?組み付けが怪しいですね。
ハンドルを回してみますと、数回転の後、一定の所で強い抵抗があります。
また、ゴロつき感もかなり大きく感じます。
これでは確かに実釣に大きく影響が出てしまう事はまちがいないでしょう。
他には多少の汚れはあるものの特に問題は無さそうです。
フットナンバーの刻印はありませんでした。
ウォームシャフトはかなり痛みが見えます。
問題となる箇所は?
外装からは特に大きな損傷は無さそうでしたが、気になる箇所がいくつかありました。
- ハンドル回転時のゴロつき感
- ハンドル回転時の抵抗感
- ウォームシャフトの痛み
とりあえず、分解前の外観からは以上の三点です。
おそらく海水使用の為か、全体的に油切れを起こしているように見受けられました。ベアリングのゴロつきもその為だと思われます。
分解・清掃作業開始
UCタイプはサイドカップにコグホイールが付いておらず、フレームに固定するタイプになるのですね。
おや?
これはちょっと組み付けが間違っているのかな?
ウォームシャフトのギヤがコグホイールに接触寸前ですね。
ちょっと修正を加えてみました。うまくフレームに組み込まれていなかったようです。
うん、これが正常な組み付け状態ですね。
とりあえず回転時の抵抗はこれで治りました。一安心。
UCタイプのアンバサダーは、現行モデルとは違いスプールとシャフトが一体となっています。
オールドタイプもシャフト固定ですが、オールドとも形状が異なるので、これはセミオールド?とも言うのでしょうか?
ハンドルのスプリングワッシャー。
ドラグ機構には重要な部品です。表面が酸化していてこれ以上の研磨は危険なので、これにて終了。
ハンドル側のスプール軸です。現行モデルはここにベアリングは入っていません。スプールとシャフト一体モデルなので、シャフト軸にベアリングが内蔵されているものと思われます。
つまりこのUCはスプールシャフトに3つのベアリングが使用されていると言う事です。
構造上ベアリングで三点支持されているスプールと言う事は、現行モデルの二点支持よりは強固になると言う事でよろしいのでしょうかね。
なかなか見ないモデルなので、興味津々です。
メインシャフトのネジ山も特に腐食は入っていないので、程度は比較的良好と言っても良いでしょう。
今回最大の問題部分でもあるスプールシャフトの固定ベアリング部です。
おそらく、ゴリゴリとハンドルに伝わる感触で一番影響の出やすい箇所となります。
スナップリングでスプールに固定されています。
細いマイナスの精密ドライバーで簡単に外す事が出来ます。
やはり錆がかなりひどいですね。
これはグリスではなく、油切れと抜けきらない水分による錆です。
指で回してもガリガリと音が鳴っていました。
さて、どうしたものでしょうか?
サイドプレートとメインシャフト部です。
特に問題なく、思っていたよりも綺麗です。
ですが、全体的にグリスの塗布料が少ないように思いますね。
やはり、真鍮むき出し部分は腐食が進行していました。
これぐらいでは動作に影響は出ないのでしょうけど、せめてメッキ処理をしておいてほしいもですね。
ここのベアリングが外部との接触で、一番最初に錆びそうなところですが特に問題なさそうです。
リールの心臓部と言っても過言ではないIAR部分。
ハンドルの逆転防止、ワンウェイベアリングと言えばわかりやすいかもしれません。ここのメンテナンスが一番気を使いますね。
通常のボールベアリングとは違いますので、リールオイルのような低粘度の油分は禁物でしょう。中粘度から高粘度のグリス系で良いとは思いますが、感覚的に塗布しすぎは動きが悪くなりそうで怖いです。適度な調整が必要です。
また一番汚れてはならない部分でもありますので、水分や汚れの侵入を防ぐような策も必要とされます。
一通り分解完了。
さらにベアリングも分解・清掃します。
スプールシャフトのベアリングです。一番やばそうなやつ。
これ、画像で見るとわかりやすいのですが、現物のスナップリングは殆ど見えないです。
目を凝らして微かな指の感覚で外していきますが、ここまで小さく細いリングは精密ドライバーでも外す事は出来ませんので、小さな釣り針を利用して外していきます。
やはりひどい汚れです。
パーツクリーナーと極細のブラシとオイルを駆使して何度も洗浄して滑りを良くしていきます。
各部の磨き・清掃・組み付け作業
前述してあったサイドプレート部の支柱です。この程度では特に動作に支障が無いとは思いますが、状況を目の当たりにしてしまっては放置することはできませんね。
綺麗に磨き上げました。
私は特にアンバサダー系のメンテナンスにはグリスを多めに塗布いたします。それは何故かと申しますと、金属部表面の参加腐食の防止と、万が一砂や泥の流入があった場合の各部の損傷防止を兼ねて少し多めにグリスを使用いたします。
気休めかもしれませんが、その方が痛みが少なく長く使用できるからと思っています。
ドラグディスク部には他の特殊なグリスを使用いたしますので、やたらと多ければよいというわけではありません。使い方を間違えると、まったくドラグが効かなくなる恐れもありますので、注意が必要です。
ウォームシャフトは油切れにより汚れが付着していただけでした。清掃と軽く磨き込んで終了です。
これくらいの程度になれば問題ないでしょう。
リールフット部もメッキの腐食かと思いきや、単なる汚れの付着でした。軽く磨けばご覧のように綺麗に見違えるようになりました。
正しく組み付けグリスアップし残りの汚れを落としていきます。
修理及びメンテナンス完了
無事に完了できました。
- ハンドル回転時のゴロつき感→ベアリングの分解清掃
- ハンドル回転時の抵抗感→ウォームシャフトの組み付け不良
- ウォームシャフトの痛み→(たんなる汚れでした)
上記異常個所を100%ではありませんが、殆ど解消できたものとしてよろしいんではないでしょうか?
実釣には十分な機能回復を果たせたと思います。
早速持ち主のユーザー様に送らせてもらいました。
当初は状態不良をご心配されておりましたが、メンテナンス完了品をご覧になり、ご納得いただけたようでした。
私もこれで一安心です。
メンテナンスを終えて
今回のメンテナンスは特に大きな損傷もなかったので、清掃組み付けが主な作業となりました。
前オーナーさんがどのような環境で使用されていたかは定かではありませんが、淡水使用か海水使用かでも傷み具合に差が出てくると思います。スプールに巻きつけてあるラインから想像するに、この5600は海水使用だったのではないかと想像いたします。
やはり海水の場合は塩分が含まれていますので、酸化腐食は進みやすいと考えられます。よって淡水での使用より、はるかに気を付けなければならなく、メンテナンス回数も必然的に増えてくるのです。
釣行回数が多い方や時間の余裕が無く、注油などのメンテナンス不足はどうしても先にベアリングが痛んできしまいますね。
ベアリングは消耗費と捉えるか、面倒でもマメに注油をするかで意見が割れそうです。
費用を気にしないのであればメーカーにオーバーホールを依頼すれば済むことですが、毎度毎度コストをかけていてはキリがありません。最低でもベアリング注油までのスキルは身に着けておいて損はないでしょう。
特別変った事は何もしていませんが、このブログを見ていただいたユーザー様からの依頼でしたので、改めてご紹介させていただきました。何かの参考になりましたら幸いです。
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